J2リーグも残り5試合。第33節、首位の水戸ホーリーホックが3位のジェフ千葉に敗れ、首位を陥落した。『サッカー批評』で…
J2リーグも残り5試合。第33節、首位の水戸ホーリーホックが3位のジェフ千葉に敗れ、首位を陥落した。『サッカー批評』では、悲願のJ1昇格へと気合いを入れ直した水戸・森直樹監督を支える林雅人コーチを直撃。2025年に水戸へと加入した林コーチは、日本体育大学を卒業後、オランダで選手として、コーチとして活躍。その後、中国女子プロリーグ1部の監督、FC今治のアカデミーダイレクターなどを務めた後、現在、水戸で「攻撃担当コーチ」として活躍している。
J1リーグ昇格に向けて多忙を極める林コーチに、一般的には、そこまで知られていない「攻撃担当コーチの役割」も含めて、水戸ホーリーホックの「攻撃面」、そして「現在地」について語ってもらった!(全3回/第1回)
■「守備は森直樹監督が請け負っています」
――チームの中で林雅人コーチは、どんな役割を果たされているのでしょうか?
林 攻撃担当コーチです。
――では、守備担当コーチは別にいるんですね。
林 水戸は、そこが特徴的だと思います。攻撃担当と守備担当が分かれているんですね。守備は森直樹監督が請け負っています。
――-それって、珍しいですよね。どこのチームも基本、監督が攻撃と守備を担当して、コーチはアシストする感じですよね。
林 実は、水戸の強みがそこにあるように思うんです。
――なるほど。その部分は後ほど詳しく聞かせていただくとして、水戸はミーティングの数が多いチームだと聞いたことがあるんですが…。
林 はい、そうですね。分析担当コーチのミーティングは相手の守備と攻撃、2つが関わってきますから。僕と分析担当コーチが一緒にやるときもあれば、僕と分析担当コーチがそれぞれ1人で攻撃に関してやることもあります。それは、中3日で次の試合なのか、それとも中4日での試合なのかでも変わってくるんです。
チーム全体で共有しなければならないものがあれば、振り返りとして試合の後、すぐやるときもあります。守備の振り返り、攻撃の振り返り、相手チームの分析を通した攻撃と守備について、攻撃でのセットプレー、守備でのセットプレー。時間にして10分くらいですね。選手にはシンプルに明確に伝えることを心がけています。
――相手チームの分析に関してですが、7月12日の第23節のカターレ富山戦の後の監督会見で、FW久保征一郎がセンターライン前で相手からボールを奪ってロングシュートを決めたのは、「分析の結果だ」と話されていましたが、あれは林コーチのアドバイスだったのでしょうか?
■「センターラインのところから打つ練習も」
林 カターレ富山の試合を分析すると、いわきFCとの試合で同じような場面があったんです。だから、選手全員に「狙えよ」と話していた。個人練習のときにセンターラインのところからシュートを打つ練習もやっていました。遊び気分でリラックスさせながらね。試合になって、実際に久保が決めてくれました。
――ちなみに、試合中にインカムで担当コーチと話をされていますが、あれはどんな話をしているんでしょうか?
林 試合の流れを10分おきに分析しているんです。その際に、上からゲーム全体を見ているコーチの意見も聞いて、状況に対応しています。10分おきに考えていることは、4つの変更を、いつどうやって、どこで実行するのかということです。
4つの変更とは「システムを変える」「選手の配置転換をする」「戦術を変える」「選手を交代する」です。「システムを変える」は最終ラインでボールを3枚で回していたのを4枚で回すようにすることです。「選手の配置転換をする」は右サイドと左サイドの選手をチェンジすること。「戦術を変える」はセンターバック(以後、CB)からボランチを経由してビルドアップをおこなっていたものを、サイドバック(以降、SB)を起点にしてビルドアップをするとか、あるいはロングボールを多用するとかですね。「選手を交代する」は、どのポジションの選手をどのタイミングで交代するのかです。
――8月16日の第26節のジュビロ磐田戦ですが、前半終了して0-2で折り返したときに、選手交代を後半早々からするのかと思っていたんですが、あの試合は、どこを変更したんですか?
■「4つの攻撃パターンを持ってスタート」
林 前半試合開始は1-3-4-3 狙いがうまくいっているときもありましたが、より安定を優先にして1-4-2-3-1へのシステム変更をして、最終ラインを3枚でボール回していたのを4枚回しに変えました。
――磐田戦での攻撃に関しては、どんな指示を出していたんですか?
林 渡邊新太がPKを決めて1点を返しましたが、あのPKを得るまでのサイドでのやり方を指示しました。サイドの選手が高い位置をとって攻撃することで、相手が上がってこられなくなり、低い位置で守備に回ることになります。
いくつかの攻撃パターンがあって、それをゲームのどこでやるのかを10分おきに検証しています。
総合的にはAからDの4つのパターンを持ってスタートします。相手チームの出方によってパターンを変えていきます。10分おきに、その中身を検証していくんです。
――攻撃と守備の担当コーチが違った場合、いくつかの疑問点が出てくるんですが…。たとえば、監督が攻撃と守備を担当した場合、「1-4-4-2」のシステムだとすれば、システムに沿った攻撃であり、システムに沿った守備であると思うんです。でも水戸は、攻撃と守備のコーチが違っているので、森監督が3バックでスタートしたいと考えていたとしますよね。それに対して攻撃担当の林コーチは4バックを予定した攻撃の組み立てをしていたとします。そうしたときは、どうするんですか?
林 監督とすり合わせますよね。相手チームがあっての攻撃であり、守備なわけです。だから自分が立てた攻撃プランを持って、守備のプランを聞いて形を作って行きます。また、どんなメンバーを監督は選ぶのかにもよります。
最終ラインでボールを3人で回すよりも、4人で回したほうがいいと考えたら、ゲーム中にボランチを下ろしたり、サイドのどちらかを残したりして、おこないたい攻撃の形にもっていきます。
――では、今シーズンの水戸ホーリーホックは、昨年と何が変わったのでしょうか?