背後から迫るベアマンを振り切り、ポイント圏内を確保した角田(C)Getty Images自信も飛び出た怒涛のポイント奪取…

背後から迫るベアマンを振り切り、ポイント圏内を確保した角田(C)Getty Images
自信も飛び出た怒涛のポイント奪取
会心のレースだ。現地時間10月19日、F1の今季第19戦となる米国GPの決勝が、テキサス州オースティンのサーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われ、レッドブルの角田裕毅は7位入賞を果たした。
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オープニングラップからギアを上げた。13番グリッドからスタートした角田はスタート直後に一気に3台をオーバーテイク。ポイント圏内となるトップ10入りを果たすと、レース終盤にかけても安定した走りで、堅実にポジションを上げてポイントを確保した。
確かな手ごたえは言葉からも滲み出た。F1公式によるセッション後のフラッシュインタビューで角田は「序盤は自信を持って攻めることができて、ペースもすごく良かった。数台をオーバーテイクできたからね」と回想。そして、「スティントは少し慎重にマネージメントしすぎたかもしれない」と改善点を口にしつつ、「今の僕らにはこういう走りを続けていくことが必要」と訴えた。
今季限りでレッドブルとの契約が満了となる角田は、去就問題で渦中の身となっている。陣営とはサマーブレイク中に協議し、現地時間10月26日に決勝を迎えるメキシコGPが“デッドライン”とされている。実際、チームアドバイザーを務めるヘルムート・マルコ氏も「将来? メキシコGPの後にドライバーラインナップは発表するよ」と明言している。
自らが望むレッドブル残留に向け、結果はもちろん、「チームに貢献できる」と証明できるだけの内容も求められる角田。それだけに今GPでのアピールは、迫りくる審判の時に向けて、貴重なサンプルになったと言えよう。
もっとも、角田の必死のドライビングは周囲から思わぬ反発も生んだ。決勝後のフラッシュインタビューで「ツノダの動きはレースで守られるべき精神に反するものだ」と声を荒げたのは、オリバー・ベアマン(ハース)だ。
ギリギリの攻防で生まれたアクシデントだった。34周目のターン15で、後方を走っていたベアマンがインに飛び込もうとした刹那、角田がブロックラインを取って対応。これを回避するも、行き場を失ったベアマンはそのままコースオフ。マシンをコントロールしきれずに、スピンしてしまったのだ。
元世界王者バトンはベアマンの“角田批判”に異論
ブロックで応戦した角田は「自分が何か大きなミスをしたとは思っていない」と説明。そして、「お互いに激しく、でも良い戦いをしていたから、最後の結果だけが不運だった」「それがレースってものだよね? 僕は彼とチームメイトじゃない。ただトップ10かそれ以上を目指して戦っているだけだ」とベアマンの怒りを意に介さなかった。
だが、角田のドライビングを「危険」と判断するベアマンの怒りは収まらない。25歳の日本人ドライバーがブレーキングゾーンでラインを変更したと主張する弱冠二十歳の英国人ドライバーは、「彼は一線を越えた」と強調した。
「とても危険だったよ。僕らはあんな風にレースをするように育てられていないし、F1のレベルでああいう走り方をすべきじゃないよ。レースを見ている子どもたちに対しても、あんな反応的なライン変更は“正しい”ものではないからね」
さらに「クラッシュは避けられたけど、あのスピンのせいで2つもポジションを失った。もっと上に行けるチャンスがあったのに」と唇をかみしめたベアマンは、英衛星放送『Sky Sports』で「彼は必死に走りすぎているんじゃない?」と去就問題に揺れ、結果を追い求める角田が周りを見れていないと釘を刺した。
「スプリントでも彼はアイザック・ハジャーに突っ込んでいた。あれも危ないダイブボムだった。思うにかなりリスクの高い走りをしているよ。正直、僕もそういうタイプのドライビングを考慮し、もう少し余裕を持つべきだったかもしれない。
昨日の予選で彼が不満を漏らしているのを見たけど、彼は一生懸命頑張っているのに、それが報われてない。だから無茶苦茶なリスクを冒すんじゃないか。まぁ僕の意見を、今の彼に理解させるのは無理だよ」
もっとも、ベアマンの主張に対しては“異論”も飛んでいる。『Sky Sports』の解説を務める元F1世界王者のジェイソン・バトン氏は「ユウキはブレーキングゾーンで後ろから迫るオリーの動きに100%、反応していた。彼があのコーナーで信じられないほど早くブレーキをかけたから問題を引き起こしたんだ」と指摘した上で、こう論じている。
「確かにターン15の走りはユウキが間違っていたと思う。だが、オリーがユウキの全体的な取り組みについて言ったことは違う。彼は正当な走りを見せていた。スタートから驚異的な仕事をして多くのポジションを上げたのだからね。ポジションを上げるためにできることは全てやらなければならないんだ。ただ、オリーとの競り合いで見せた動きは、少し行き過ぎだったと思うぐらいだ」
辛辣な批判を受ける角田だが、生き残りに向けてわずか1戦となった中では、己の走りに集中するのみだ。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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