松島の台頭は頼もしい限りだ(C)Getty Images インド・ブバネーシュワルで10月16日まで開催されたアジア卓球…

松島の台頭は頼もしい限りだ(C)Getty Images
インド・ブバネーシュワルで10月16日まで開催されたアジア卓球選手権大会の男子団体準決勝で、日本は王者・中国と対戦し、フルマッチカウントかつ5試合すべてがフルゲームという、世界卓球史上希に見る大接戦の末に敗れた。
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日本 2-3 中国 ※WRは世界ランキング
〇張本智和(WR4) 3-2 梁靖崑(WR7)×
〇松島輝空(WR16) 3-2 王楚欽(WR1)×
×篠塚大登(WR31) 2-3 林詩棟(WR2)〇
×張本智和(WR4) 2-3 王楚欽(WR1)〇
×松島輝空(WR16) 2-3 梁靖崑(WR7)〇
2022年の世界選手権でも日本男子は中国を2-3と追い詰めているが、落とした3試合はフルゲームにならずに敗れており、勝機はなかった。それが今回は、ベストメンバーの中国に対して全員が2ゲーム以上を取り、まさに崖っぷちまで追い詰めた。
2010年から昨年までの15年間に行われた4回の五輪、7回の世界選手権、4回のアジア競技大会、そして8回のアジア選手権の計23大会において、日本男子は中国に12大会で敗れているが、そのうち奪ったのは3試合しかない。2016年リオ五輪で水谷隼が許昕に勝ったのと、上記2022年世界選手権で張本が王楚欽と樊振東に勝った2試合のみで、他はすべて0-3の完敗である。そして、23大会のうちの約半数の11大会では、中国に対戦する前に敗れている。それほど中国とは大きな差があった。
そうした中、若手が徐々に力をつけ、台頭してきたのが18歳の松島である。松島は、今年1月の全日本選手権で、奇しくも今回のチームメイトの張本と篠塚をそれぞれ準決勝と決勝で破り、17歳で王座に就いた。国際大会でも次々と大物選手を破り、今月2日のWTTチャイナスマッシュでは梁靖崑をフルゲームの大激戦で沈めて中国メディアを驚愕させた。
今大会、中国が世界ランキング2位の林詩棟を本来は2回出られる1番または2番におくべきところを、1回しか出ない3番に持ってきたのは、篠塚から確実に1点を取るためだろう。裏を返すと、林詩棟は松島に不安があったということだ。それほど中国は今大会、日本を警戒していた。
中国の不安は的中し、松島はあろうことか世界ランキング1位の王楚欽を倒してしまい、“確実に取れる”と踏んでいた篠塚が林詩棟をフルゲームまで追い詰めた。中国はさぞかし肝を潰しただろう。5番の松島はつい2週間前に梁靖崑を倒しているのだからなおさらである。
しかしここからが中国だった。恐ろしいまでの粘り腰で大逆転して常勝軍団の底力を示した。勝利を決めた瞬間の中国チームの歓喜が日本の手ごわさを示してたが、それを茫然と見つめた日本チームは雪辱を誓ったはずである。その日は近い。
[文:卓球コラムニスト・伊藤条太]
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