連載 水沼貴史平畠啓史『水平感覚』 国内外のサッカー中継の解説者として活躍する水沼貴史さんと、日本屈指のサッカーマニアで…
連載 水沼貴史×平畠啓史『水平感覚』
国内外のサッカー中継の解説者として活躍する水沼貴史さんと、日本屈指のサッカーマニアで知られる平畠啓史さんが、サッカー界のホットな話題をしゃべり倒す連載。今回はJ1優勝へひた走る鹿島アントラーズの中心選手、鈴木優磨について語った。

水沼貴史&平畠啓史が鹿島アントラーズの鈴木優磨について語った
photo by Getty Images
【動画で全部見る】水沼貴史&平畠啓史「こう見えて実は...」鈴木優磨を語り尽くす!↓↓↓
【キャラを作っているのかもしれない】
平畠 鈴木優磨選手とはお話したことがあります。昔『スカパー!』の番組でご飯を食べに行くシーンを撮ることがあって、一緒に食べてゆっくり話しました。それからミックスゾーンで会うとしゃべりますね。すごく律儀な男ですよ。
水沼 そうだよね。
平畠 僕のなかではすごく悩みがありまして。サッカーをやっている時の表の顔があるじゃないですか。ちょっと激しくて、ワイルドな感じで。じゃあ、裏はどうかと言ったらワイルドじゃないですよね。
水沼 ワイルドじゃない?
平畠 僕と話している時は静かで、声も小さいぐらいの感じですよ。ただ、これを言うことによって、この人の営業妨害にならへんかなと。だから、僕は「鈴木優磨とはこういう男だよ」と見聞きしたものをあんまり言ったことないんです。
たとえば、すごい悪役レスラーが裏でめっちゃ優しいっていうのが、その人のためになるのか。営業妨害になっていないか。
水沼 でも、たぶんファン・サポーターの人はそういうのを知ってるんだよね。キャラを作っているかもしれないし。
平畠 話によると、プロレスがすごい好きらしいんですよ(笑)。だからある程度キャラ作りもあると思うんですよね。
水沼 アントラーズは夏に『男祭り』ってやってますけど、あのポスターを見てると「どっち?」って思います(笑)。めっちゃ怖い顔をしている。
4人くらい並んでいるんですよ。知念慶とか植田直通とか。今年はレオ・セアラも入ってきて。あの並びがコーナーキックのゴール前でトレイン(※電車のように前後にくっついて並ぶ)を組んだ時は相当面白いですよ。
平畠 相手からしたら相当嫌ですもんね。
【めちゃくちゃ賢い選手】
水沼 でも、あそこの並びには最近彼はちょっといないですよね。大体ファーサイドで残っているような感じの時のほうが多かったりする。だからサッカー選手としてめちゃくちゃ賢いですよね。
平畠 今、鈴木優磨選手のポジションはなんて言ったらいいんですか?
水沼 『鈴木優磨』。
平畠 ああ、同じこと思ってました。
水沼 4-4-2の2トップのひとりと言っても、彼は別にどこに行ってもいいみたいな感じになっている。だけど、どこに行ってもいいわけじゃない。チャンスになりそうな場所に行く。攻撃の起点になりそうな場所を見つけるのが早いんです。周りを見ながら、ポジションをいろいろと変える。
平畠 だから今の鹿島は、「4-4-1-鈴木優磨」でしょう。そんな感じでも許してもらえるというか、あのプレーができるのは、鈴木優磨選手の実力と、僕は鬼木達監督がすごいなと。
水沼 どう生かしたらいいのかを鬼木監督は考えていて、左に置いたり、トップ下とか2トップの一角に置いたりする。それで彼にある程度裁量を与えている感じがします。
それとピンチでここがヤバいとなった時に戻れるのもいいです。ただ、90分フルに走り続けると足つるんですよね(笑)。それでもそういうちょっとした弱点みたいなのがあるのもなんかいいなと。
平畠 すべてが完璧じゃなくて、ちょっと弱いところがあるのがいいんですよね。
水沼 周りのいろんな人に評価を聞くと、みんな「あいつは絶対(ボールを)失わない。収まる」と。シント=トロイデンに行っていなくなった時に「トップが収まらないんだよね」ってアントラーズの関係者はずっと言っていた。それだけのキープ力とかがあるわけで、シント=トロイデンから帰ってきてもそれはやっぱり明らかですよね。
うまいんだよね。体の使い方とか。点を取る場所とか。
平畠 パスもうまいですよ。すごいいパス出しますよね。ただ、いわゆるテクニシャンみたいなきれいな身のこなしじゃなくて、ちょっとカクカクしている感じがあるじゃないですか。あれが好きです。
水沼 わかる。全体的にこう、オラオラ感があるもんね。
平畠 スマートすぎないところが僕は魅力かなと思っています。
【キャラクターが際立つ大切さ】
平畠 今シーズンここまで33試合で9ゴール5アシスト。全試合に出場していますし、もう欠かせない選手ですよね。それとこれぐらいタイトルに対しての思いが強い選手って、なかなかいないんじゃないかなと思いますよ。
水沼 海外から帰ってきて、自分が何をチームにもたらすかといったらタイトルだと思っていて、でも監督がいろいろ変わるなかでなかなか結果が出なかった。自分がやらなきゃという責任感をすごく感じている。三竿健斗みたいなリーダーもいるけど、またちょっと違うタイプ。
それで、あまりいい内容じゃなかった試合の後に、「このままじゃダメだ」って言って空気を変える力があるのは彼です。それは大事なんですよ。いい時ほど空気を変える。慢心は絶対ダメだし、現状の内容に満足しても当然ダメだし、向上して強くなっていくと。そうして全体を引き締める空気にする力を持っていますね。
平畠 まあ、ユースチーム育ちというのはあるけど、これだけタイトルを獲りたいって前面に出す選手はなかなかいないですよね。自分のことはあんまり言わないじゃないですか。「いや、俺点取りたいです」というよりも、「このチームを優勝させたいんです」「タイトル獲りたいんです」って言う。そういうところ、僕はすごい好きですね。
水沼 キャラクターもそうだし、チームからも愛されている選手だし。「やんちゃだけど、いいやつだよね」とか、そういうなんか裏表がないみたいな感じがするじゃないですか。やっぱり何をもたらさなきゃいけないかというのは、一番感じているよね。
平畠 あの髪型もそうですし、色もそうですし、パンツのまくり方、あの動き方。やっぱり3万も4万も入るスタジアムでぱっと見た瞬間に、「ああ、鈴木優磨おる!」ってわかるじゃないですか。それがすごく大事だと思うんですよ。スタジアムに行った子どもはうれしいと思いますよ。
水沼 目立つということは、プレーでしっかりしないと逆に目立ってしまうこともある。目立つ格好をして自分を見てほしいっていうのは、相当自信があるのと自分に責任を負っているということ。全部自分にベクトルを向けているのが、またすごいですよ。
平畠 Jリーグにこれぐらいキャラクターの強い選手、どんだけいますか? っていう話なんです。やっぱりキャラクターが際立つ選手が、もっと増えていったほうがいいかなと僕は思っています。
でも、この鈴木優磨選手がタイトルを獲った時に、どんな顔をするのかとか、何をしゃべるのかみたいなのは、すごく楽しみですね。泣くのか? とか。
水沼 泣く? あ、でも泣くな。
平畠 でも、それがわからないじゃないですか。雄叫びをあげまくるかもしれないし。
水沼 たぶん全部やりますね。