ベンチ前でガクッと肩を落としたアンチェロッティ監督(C)Getty Images「2-0で折り返したスコアは、試合内容か…

ベンチ前でガクッと肩を落としたアンチェロッティ監督(C)Getty Images
「2-0で折り返したスコアは、試合内容からすれば過大評価がすぎた」
日本にとっての歴史的な勝利は、“王国”にダメージを負わせるものとなった。
10月14日、東京スタジアムで行われたブラジル代表との国際親善試合で、日本代表は3-2で日本が逆転勝ち。A代表でのブラジル戦で史上初の勝利を飾った。
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決して楽な立ち上がりではなかった。パウロ・エンリケとガブリエル・マルティネリに立て続けにゴールを決められた日本は、ブラジルに2点をリードされて前半を折り返すが、後半に怒涛の反撃を展開。52分に南野拓実のゴールで1点を返すと、約10分後に中村敬斗のゴールで同点とし、71分には伊東純也のコーナーキックから上田綺世がヘディングで押し込んで逆転した。
親善試合とはいえ、相手は言わずと知れた強豪国。そんな強敵からの一勝に森保ジャパンの面々は快哉を叫んだ。
一方で意気消沈ムードとなったのは、よもやの逆転負けを喫したセレソンだ。南野のゴールを招いたファブリシオ・ブルーノの稚拙なボール処理など後半は開始早々からミスを連発。チームの底上げを念頭に置いた采配を振るったカルロ・アンチェロッティ監督の采配もあって、全体的に精彩を欠いた内容となった。
当然ながら国内では代表戦士たちへの厳しい追及が飛んでいる。ブラジルで最大級のネットワークを誇る全国紙『Globo』は「セレソンは組織力のある日本チームに苦戦し、前半を2-0で折り返したスコアは、試合内容からすれば過大評価がすぎたものだった」と指摘。細かなミスが続いた内容を糾弾した上で「今の代表チームには議論の余地のない、完全に定着した先発メンバーがほとんどいない。だから、代替案を検討する必要がある」とタレント不足を嘆いた。
一方で、この敗北を世界制覇に向けた糧とするべきという声もある。同紙のコラムニストであるアレクサンドル・アリアッティ氏は「今のブラジルにとって、日本に負けることは韓国に大勝することよりも価値がある」と指摘。日本戦を前に行われた韓国戦で5-0と大勝した内容をふまえ、「今は緊迫した時期であり、成功を糧にし、ミスを正すことが重要だ。そういう意味で東京での逆転負けは、韓国戦での勝利よりも価値があったと言える」と断言した。

試合途中で交代を命じられたヴィニシウス。エースの不調は間違いなく攻撃力の低下に影響を与えた(C)Getty Images
日本に喫した屈辱の敗北 それでも「壊滅な打撃ではない」
無論、アリアッティ氏も不満がないわけではない。2-0からのショッキングな逆転劇に「厳しい敗北だった。代表チームに残る弱点、つまり波乱の連鎖がもたらした負の遺産になることを露呈した」と苦言は呈している。しかし、「この日本戦が全てを消し去るような壊滅的な打撃となる理由にはならない」と強調。今年5月から代表監督となった“百戦錬磨”のイタリア人指揮官に、次のように問いかけている。
「セレソンは、試合終盤、同点ゴールを目指して攻勢に出たが、日本の前に力及ばずに敗北。無防備な状態のままピッチを去った。アンチェロッティ監督はこの試合から多くのことを学ぶ必要がある。そして、いくつかの重要な疑問について深く考える必要があるだろう。
なぜ攻撃陣は機動力を欠いたのか? なぜ守備陣はミスを多く犯したのか? なぜ前半と後半でパフォーマンスに差が生じたのか? どのように積極果敢な攻撃と守備の安定性を両立させるのか? ワールドカップまであと8か月。時計の針が耳元でカチカチと音を立てる中、その“答え”が求められる」
日本に喫した敗北は、ブラジルをいかに変えるのか。いずれにしても、サッカー王国にとってショッキングな一戦となったのは間違いない。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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