3年目・三塚琉生の成長、矢野2軍打撃チーフコーチが解説 無限の伸びしろを感じさせる逸材だ。巨人・三塚琉生(みつか・るい)…

3年目・三塚琉生の成長、矢野2軍打撃チーフコーチが解説

 無限の伸びしろを感じさせる逸材だ。巨人・三塚琉生(みつか・るい)外野手は3年目の今季、2軍で78試合に出場して打率.318、チームトップの9本塁打をマーク。6月には支配下契約を勝ち取るなど、大きな成長を遂げた。飛躍の転機は昨秋の打撃改造。成長を見守ってきた矢野謙次2軍打撃チーフコーチが「今までと真逆のことに取り組んで、結果を出している」と振り返った。

 巨人2軍は今季、80勝44敗2分けで2年ぶりにイースタン・リーグ優勝。チーム打率.264、542打点、576得点はリーグ1位となるなど多くの若手野手が躍動した。昨秋、1軍打撃コーチから現職となった矢野コーチは「思い描いたように選手が成長してくれた」と目を細める。特に目についた選手の問いかけに「みんな頑張っていて目につく」とした上で「数字で言えば三塚」と真っ先に名前を挙げたのが高卒3年目の21歳だった。

 桐生第一高から2022年育成ドラフト6位で巨人に入団。1年目に左膝を負傷し、長いリハビリを経て昨年6月に実戦復帰した。以降は3軍戦を主戦場としていたが、今年5月に2軍へ初昇格。19試合で打率.357、4本塁打、OPS1.053を残し、6月13日に支配下登録された。1軍では12打席立って無安打と壁にぶち当たったものの、2軍では最後まで好調をキープ。昨年まで3軍だった選手とは思えない躍進ぶりを支えたのが新打法だ。

 昨秋まではアッパー気味のスイングで、バットが下から出ていたという。2軍打撃チーフとなった矢野コーチが打撃フォームの見直しを提案。「振る力はあったんですけど、下から振り上げるようなスイングだったんです。それを感覚的には上から少し抑えるようなスイングに変えたんです」。アッパーからダウンに近いレベルスイングへの変更である。

「今までやってきたことと全く真逆のことをやったから相当戸惑いがあったと思う。最初は物凄く違和感があったはずです。でも、それをずっと継続してやってきた。僕のできる限りの説明、解説をしたんですけど、それに納得してくれたのか理解してくれたのかは本人の世界なんですけど、取り組んでくれて結果につながっています。彼のいいところは愚直にやり続ける力があるところ。練習を続ける粘り強さがあります」

182センチ、93キロ…課題は「パワー」と「柔軟性」

 打撃のセールスポイントについては「ライナーで速くて強い打球を飛ばせるところ」と説明。加えて「初球から振っていける。積極性も持ち合わせています」と左投げ左打ちの外野手を評価する。

 魅力がたっぷり詰まった182センチ、93キロ。今後、さらにステップアップして1軍で活躍するための課題は「パワー」と「柔軟性」だという。「体が結構デカくて、パワフルな感じに見える。でもトレーニングすると力が弱いことに気づきます。それに、まだ体が硬い。動きが悪いので柔軟性、しなやかさを獲得することで動きが良くなってバッティングがもっと上がっていくと思います」。

 まだまだ成長の余地を残す21歳。「いい体じゃないと、いいプレーは生まれません。でもそこに現時点で弱さ、弱点があるということは、逆に言えば伸びしろしかないということです」。その言葉に期待の高さがにじむ。

 もう1つある。メンタル面の充実は2軍での活躍を1軍に生かすために欠かせない。「割り切りや開き直り、腹をくくる覚悟が重要。技術がついてきたら、それを発揮できるかできないかは、もうメンタルや考え方になる。周りから何を言われようと『俺はこれで生きていくんだ』という意思の強さが鍵だと思います」。持っている力を発揮できるようにするため、自身の経験などを日々のコミュニケーションの中で伝えている。

 怪我を乗り越え、一気に台頭してきた背番号96のホープ。2軍で結果を残し、あとはいかに1軍につなげていけるか。そのために磨きをかける秋。さらなる飛躍が楽しみである。(尾辻剛 / Go Otsuji)