岡山県高梁市教育委員会で「スポーツコーディネーター」として活動する斎藤愛美(あみ)さん(26)。2021年の東京五輪・…

 岡山県高梁市教育委員会で「スポーツコーディネーター」として活動する斎藤愛美(あみ)さん(26)。2021年の東京五輪・陸上女子400メートルリレーに日本代表として出場したオリンピアンだ。

 同市出身。陸上選手だった両親の影響で小学生のころから陸上を始めた。倉敷中央高2年の時、地元岡山で開催された2016年夏のインターハイで100メートル、200メートル、400メートルリレーで3冠を達成。全国的に注目された。この年の秋の大会で出した200メートル23秒45のU20日本記録はいまだに破られていない。

 スカウトされて大阪成蹊大へ。高校時代の練習量は比べものにならず、5時間連続してトレーニングすることもあった。大学の講義より試合を優先することがあり、講義に出られないときには課題を提出して何とか両立させた。

 21歳、大学4年で出場した東京五輪。バトンの受け渡しは互いのタイミングが重要で、ミリ単位で調整しながら練習を繰り返した。日の丸を背負って3走で新しい国立競技場を駆け抜けたが、予選を突破できなかった。

 大学卒業後も教員をしながら選手生活を送っていたが「小学校の頃からオリンピックに出るのが夢で、かなえられた。無理してまで次を目指す必要はないと考えました」。痛めていた腰のこともあり、2023年秋、高校時代に3冠を達成した県総合グラウンドでの大会でスパイクを脱いだ。

 翌年春に高梁市職員に採用。新設されたスポーツコーディネーターとして、今年度から市内の小・中・義務教育学校全校の子どもたちに自身の経験を伝える「夢への扉(ユメトビ)」の授業を行っている。

 自らも小中時代に通っていた市の「ジュニア陸上教室」でコーチとして指導。教員ら約20人のコーチとともに毎回2~3時間、基礎トレーニングなどを教えている。昨年まで年10回程度だったが今年からは年22回に拡充。受講者も昨年の3倍近い約60人に増えた。「素質のある選手もいて『自分に自信を持ちなさい』と促しています。子どもたちの夢は無限大で、これからも全力でサポートしていきたいです」。(上山崎雅泰)

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 〈夢への扉(ユメトビ)カリキュラム〉 前半の「ゲームの時間」(35分)と後半の「トークの時間」(45分)で構成。前半は子どもたちが協力してゲームに挑戦。最後は子どもたちの代表者と斎藤さんが30~50メートルを全力ダッシュして勝負する。後半は教室で自身の夢曲線(競技人生の浮き沈み)を描きながら、様々な困難を乗り越えた経験を伝えている。斎藤さんは「助け合うことの大切さや、諦めずに粘り強く続ける姿勢を重点的に教えています」。(上山﨑雅泰)