サッカー日本代表が、10月シリーズを戦っている。10日には南米の古豪パラグアイと引き分け、14日には「王国」ブラジル代…
サッカー日本代表が、10月シリーズを戦っている。10日には南米の古豪パラグアイと引き分け、14日には「王国」ブラジル代表と対戦する。初戦から見えた課題、さらに、それを活かして、いかにブラジル代表と戦うべきか、ベテランサッカージャーナリストの大住良之と後藤健生が激論をかわす!【第1回/全8回】
■繰り返された「ビルドアップ」のミス
――アメリカ遠征ではなかったゴールが生まれたものの、勝ち切ることはできなかったパラグアイ戦の評価は、ポジティブとネガティブのどちらに傾きますか。
大住「半々くらいかな。前半は良かったと思う。すごく意欲的にプレスをかけていて、攻撃にもスピードがあった。後半にちょっと試合の流れが変わったよね。パラグアイの監督が説明していたけど、中盤の底にアンカーのように1人配置したことで、日本はビルドアップにプレスをかけられなくなってしまった。前半のうちに2点目を取れていれば、また違う展開になったとも思うけど」
後藤「僕の評価はネガティブですね。良かったのは、9月の2試合では取れなかった点を取れたこと。しかも2人のCFが点を取ったことは良かったけど、あとはあまり良いところはなかったように感じる。失点の場面は、ある程度しょうがないとも思うんだけどね。3バックには新しく入った選手が並んでいたんだから、やられるのもしょうがない。とはいえ、守備のミスでやられたんだからネガティブな印象だよね」
大住「3バックで失点場面よりも気になった点は、自陣でのパスミスだな。自陣では1度だけだったけど、瀬古歩夢は前半、ビルドアップでのミスを繰り返していた。あれには、ちょっと驚いたな。失点自体も、先制された場面は完全にDFのミスだった。相手のシュートへの持ち込み方もうまかったけど、あそこに走られてはいけなかった。2失点目はちょっと不運もあったかな、という気もしたけど」
■後半に増えた「フリー」での抜け出し
後藤「試合後の会見でパラグアイの監督が長く説明していたけど、相手の先制点は日本のCBをピン止めしておいて、その裏に斜めに走らせたというんでしょ。2点目は日本のDFが食いつきにいったところで、1タッチのフリックでのうまいつなぎから決めた。あの場面だけじゃなく、食いつきにいって1タッチでフリックされるというのは、それまでにも何度もやられていた。ふだん出ていないDFだから張り切り過ぎちゃったとか、感覚をつかめなかったのかもしれないけど、ミスはミス。しかも同じことを何度もやられちゃいけない」
大住「奪いにいってボールを取り切れず、逆にフリーで抜け出されるという場面が、後半に入って増えたよね」
後藤「あれはもう、試合をするうちに相手が日本の特徴を分かって、やってきていたんだよね。日本のDFはここで食いついてくるから裏を狙おう、って。その辺は、相手のほうが明らかに上手だったよね。さすがは南米のチーム」
大住「南米でワールドカップなどの予選を戦っているチームは、やはりシビアだという感じはしたよね」
後藤「今回のワールドカップ南米予選で、パラグアイは18試合して14得点10失点。1試合で1点取れない計算だったけど本大会行きを決めている。エクアドルなんて14得点5失点で2位通過。それくらいシビアなガチガチの戦いを18試合もやっていたら、強くなるよね」
■最終ライン入りで「一番良い出来」?
大住「3バックを個々で見ると、鈴木淳之介はすごく良かったと思うけど、後藤さんはどう思った?」
後藤「攻撃面ではよく上がってサポートにいっていたけど、守備面でちょっと不安が見えた」
大住「それは後半、しかも終盤の話でしょ? 前半は安定していて、ほとんどやられなかったと思うけど。後半は全体的に守備がバラバラになる瞬間がいくつかあったよね。そのせいで、ボールを取ったと思ったところで取り返されて置いていかれる形が何度かあった。鈴木淳之介のキャリアや年齢を考えれば、すごくよくやっていると思う」
後藤「経験がないことを考えれば、そう言えると思うよ。だけど、今回の出来そのものとしては、どうかなあと思う」
大住「そうすると最終ラインは全体的にきつかったという感じかな」
後藤「本来のメンバーというか、板倉滉や町田浩樹、冨安健洋といった選手がいたら、点を取られずに済んだんじゃないかなと思う」
大住「ひとまず、冨安のことは忘れないといけないかな」
後藤「ケガでブランクが長い伊藤洋輝のことも、いったん忘れたほうがいいかもしれないね。それよりも、ブラジル戦では市原吏音を緊急招集したいね」
大住「そうだね、U-20ワールドカップから帰ってきたからね。今回のパラグアイ戦の最終ラインに入っていたとしたら、一番良い出来を披露していてもおかしくないだけの力がある選手だよね」