サッカー日本代表は10月10日に"堅守カウンターの伏兵"パラグアイと、14日に"ワールドカップ最多優勝の王国"ブラジル…
サッカー日本代表は10月10日に"堅守カウンターの伏兵"パラグアイと、14日に"ワールドカップ最多優勝の王国"ブラジルと、連戦を行なう。来年の北中米ワールドカップに向け、南米勢との連戦は試金石になるだろう。たとえばベスト16でパラグアイと当たり、ベスト8でブラジルと当たる、という想定も十分に成り立つのだ。
「三笘薫、守田英正の招集が見送られ、板倉滉、遠藤航も代表辞退ではテストにならないのではないか?」
そんな声もあるが、こうした状況は本大会でも十分に起こり得る。
北中米ワールドカップは出場枠が拡大し、ベスト16に辿り着くにはグループステージ3試合で2位まで、もしくは3位の上位8チームに入り、ラウンド32で勝利を収めなければならない。つまり、過去最高位のベスト16へは今までより1試合多く勝ち抜く必要がある。ケガ、出場停止だけでなく、疲労・消耗も想定され、同じメンバーでの戦いを継続するのは難しいのだ。
「ワールドカップ優勝」
森保一監督は高らかに目標を掲げているが、それはアドバルーンを揚げたに過ぎないだろう。しかしここで躓くようなら、とても「優勝」という大風呂敷を広げることなどできなくなる。
率直に言って、パラグアイ、ブラジルを相手に勝ち筋はあるのか?
パラグアイ戦、ブラジル戦のメンバーを発表した森保一監督 photo by Fujita Masato
16年ぶりのワールドカップ出場になるパラグアイは、前回の出場、2010年南アフリカワ-ルドカップのベスト16で日本を下したときと同様に、伝統の手堅さを継承している。タフで献身的な守備を軸にカウンターを狙う。チーム一丸となって戦う団結力は南米でも随一だ。
アルゼンチンでプレーする選手が多いのが特徴だろう(代表監督も歴代アルゼンチン人が多い)。攻守にアグレッシブで、球際では粘り強い。他にブラジル、MLSなどのリーグの選手で構成されている。そこにイタリア・セリエAのFWアントニオ・サナブリア(クレモネーゼ)、イングランド・プレミアリーグのMFディエゴ・ゴメス(ブライトン)らが脇を固める格好か。
【今回も3バックを続ける公算が高い】
戦力的に言えば、日本の勝機は十分にある。所属クラブを見ても、日本のほうが格上だろう。チャンピオンズリーグ(CL)やヨーロッパリーグ(EL)にも出場する有力クラブの所属選手がずらりと並ぶ陣容だ。
逆説すれば、パラグアイにホームで勝てないことは「失敗」に言い換えられる。
遠藤など主力が4人いない状況でも、日本は攻撃的な戦いを挑むべきだろう。本来、3-4-2-1のような小細工はするべきではない。そもそも、ほとんどの選手が所属クラブでまったくやっていない仕事を託されるのは道理から外れているのだ。
たとえば堂安律は、フランクフルトでやっているように右のアタッカーとして切り込ませるべきである。5バックの右ウイングバックとして自陣に下がらせるのは宝の持ち腐れ。左も、昨シーズン、リーグアンで二桁得点を記録した中村敬斗をウイングバックに使うのは的外れで、シンプルにアタッカーとして用いるべきだ。
中盤の遠藤の代わりは佐野海舟が適任だろう。攻守にハードで、技術レベルも高い。鎌田大地、南野拓実と組ませることで、得点の経路も見える。そして1トップはオランダでゴール量産体制に入っている上田綺世だろう。EL のアストン・ヴィラ戦で不当にも取り消されたヘディングゴールなど圧巻だった。パワーや高さでもパラグアイDFを凌駕できるはずで、ポストプレーでの存在感が増した。
9月の代表戦で足首を痛めた久保建英は、ジョーカーとして使う。直近のラージョ・バジェカーノ戦でも1対1では強さを見せ、拮抗した状況を崩せる。もし相手のタフな守りで0-0のまま試合が推移した場合、最後の15分でヒーローになれるだろう。もっとも、本調子ではない久保を選ぶこと自体、問題なのだが。
バックラインは、板倉だけでなく冨安健洋、伊藤洋輝、町田浩樹、高井幸大など主力が軒並みケガなどにより不在で、やりくりは厳しい。しかし、渡辺剛は確実にセンターバック(CB)として堅牢さを増し、パラグアイのFWとも堂々渡り合える。4バックに今回のメンバーで当てはめると、他はCBに谷口彰悟、左サイドバック(SB)に瀬古歩夢、右SBに橋岡大樹ということになるが......。
結局のところ、森保監督は4バックでなく、3バックをファーストオプションにしているのだろう。右SBの菅原由勢を選外にし、いわゆる左SBも選んでいない。選出したのはCBが多く、ウイングバックを用いながら、メキシコ戦、アメリカ戦で機能しなかった3バックを続ける公算が高い。4バックにして長友佑都を左センターバックで起用するような"奇策"は自滅の道か。
一方、ブラジル戦は劣勢が予想される。ブラジル陣営のモチベーションやコンディションが未知数だし、テストマッチでは番狂わせが起こり得る戦力差だが、ここは相手が格上だろう。単純にヴィニシウス・ジュニオールのドリブル突破を右サイドで誰が止めるのか。4バックでもSBが受け身になると厳しく、5バックにした場合、守りは分厚くなるが、そのぶん得点の可能性は低くなる。
ブラジル戦、森保監督は5-4-1にして守りを固めるだろう。"弱者の兵法"により相手の嫌がるプレーをすることでしのぎ、カウンターに活路を見出す。カタールワールドカップはそれが功を奏した。鎌田のような選手が流れをつくるのに賭けた戦いになったが、結局、そこから脱却できていないところに森保ジャパンの限界はあるのだ。
ワールドカップベスト8という現実的な目標をクリアできるか。その指標となる南米勢との連戦になる。本番でラウンド16の相手がパラグアイだったらむしろラッキーで、今回、ホームで引き分ければ負け同然だ。そしてブラジルを相手には、弱者の兵法で負けを回避できるか、もしくは、どこまで真っ向勝負ができるか。
主力不在はエクスキューズにならない。