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 富士通レッドウェーブの藤本愛妃にとって、今夏は充実した期間となっただろう。というのも、8月30日〜9月7日の期間で韓国にて行われた『2025 BNK金融 パクシンジャカップ』では優勝に大きく貢献し、大会MVPを受賞。続く中国開催の『FIBA Women’s Basketball League Asia 2025』(9月23日〜28日/以下WBLA)でも準優勝となり、個人ではオールスターファイブに選出されたからだ。

「パクシンジャカップとWBLAにはテミトペ選手が不出場だったので、多分ファンの皆さんも(チームとして)『大丈夫かな』と思ったと思うんです。だけど、私はそう思わせたくないと強く思っていて、ずっとテミトペ選手の控えで出ていたので、チャンスでもあったし、ここで何としても結果を出したい、パクジャカップも絶対優勝したいという思いで臨みました。そこでのMVPやオールスターファイブは素直にうれしかったです」(藤本)

 この言葉通り、パクシンジャカップとWBLAでは、インサイドの大黒柱として2シーズン連続のWリーグ制覇や昨シーズンの皇后杯優勝に貢献してきたジョシュア ンフォンノボン テミトペがコンディション不良により不在。そのことがまた藤本の奮起にもつながったようで、「5番ポジション(の選手)が私しかいないとなったときに、絶対にやるぞと思いましたし、チームがそういう状況だったからこそ、頑張りたかったです」と、言う。

 藤本は179センチのセンターで、今シーズンで6シーズン目。入団からシーズンを経るごとに力を付けてきたものの、Wリーグを制した過去2シーズンのプレーオフでは決して出番は多くなく、「優勝は本当にうれしかったのですが、多分ベンチメンバーは個々で思ってることは違っていて、私は悔しかったです」と、語る。

 選手であればそういった感情を持つのは当然のことだろう。「そうした思いを2年連続で私は持っていて、その中で(今年の)パクシンジャカップとWBLAではチャンスが目の前にあったから、結果を出したいと思って臨みましたし、この結果になったのでうれしかった。全部がつながっているんです」

 今シーズン、チームはBTテーブス氏(現アイシンウィングス・ディレクター)から日下光ヘッドコーチへと指揮官が代わり、新たなスタートを切った。Wリーグ自体も外国籍選手登録の規定を改定し、世界各国の外国籍選手のプレーが可能になった。すでに各チームが新加入選手として発表しているが、その顔ぶれを見るとほとんどがセンターポジションで、190センチはおろか、195センチを超える選手もいる。同じポジションの藤本にとっては「大変になる」シーズンになることは間違いないだろう。

 だが藤本本人は、パクシンジャカップ、WBLAを通じて「より自分自身の強みに自信を持った」と胸を張る。「だから、そこをもっと磨いていこうと思っているし、あとは当たり負けしないような体を作らないといけないと感じています」と今後に向けても意欲を見せる。

 藤本が考える自らの強みとは。「スピードのところ。ドライブを強みとして持っているし、トランジションでバッと走ったり、ピック&ロールでのクイックダイブだったりとか、アジリティの部分でほかの外国籍のセンターより戦えているのかなと思います。スピード、走る、クイックネスのところで勝負していきたいです」

 目覚ましい夏の活躍は藤本をステップアップさせた。しかし、「自信にもなったし、自分の強みが通用したと思うところも多々あったけれど、味方に生かされていいパスしてもらっていたところもたくさんあったので、周りの人のおかげです」と藤本は謙虚にコメントする。そこには「今回結果は出ましたが、常に私は崖っぷちにいると思ってます」という思いがあるから。

 それを踏まえた上で成長を続けるセンターは、しっかりと次を見据えた。

「テミトペ選手も戻ってくるし、そこで私は勝たないといけない。ここからまたアピールして、結果残さないと。もうそこしか私は見ていないです。他の外国籍選手相手にも負けていたら試合に出られない。だからもう(パクシンジャカップとWBLAのことは)忘れました」

文=田島早苗

【動画】WBLA Al Ula Club戦ハイライト