サッカーU-20日本代表が、南米チリで開催中のU-20ワールドカップで決勝トーナメントへ進んだ。3戦全勝、しかも無失点…

 サッカーU-20日本代表が、南米チリで開催中のU-20ワールドカップで決勝トーナメントへ進んだ。3戦全勝、しかも無失点でのベスト16進出には、今年2月のU-20アジアカップのときよりも格段の成長がうかがえるというのは、サッカージャーナリストの後藤健生。約半年で、チームを劇的に進化させたものは何か? 強豪フランスとベスト8入りをかけて戦う若きサムライブルーの「快進撃」の理由、そして、今後の「伸びしろ」も含めて徹底解析する!

■鬼門は決勝トーナメントの「初戦」

 南米チリで開催されているU-20ワールドカップで、U-20日本代表が3戦全勝、しかも無失点でグループリーグを突破した。まさに“快進撃”である。

 もっとも、最近ではFIFA主催の世界大会で日本チームがグループリーグを突破するのは、けっして珍しいことではない。ただ、残念ながら、どのカテゴリーでも決勝トーナメントの初戦が鬼門となっている。

 3年前のカタール・ワールドカップでも、森保一監督率いる日本代表はラウンド16でクロアチアと対戦して引き分けに終わり、PK戦で涙をのんだ。

 U-20ワールドカップでも、前々回のポーランド大会(2019年)で日本は、ラウンド16まで進んだが、ここで韓国を相手に攻めあぐね、現在FC町田ゼルビアでプレーしている呉世勲(オ・セフン)の一発のヘディングで敗退に追いやられた。

 今回は、そんな“壁”を突破してほしい。

 また、南米大陸という“壁”の突破も期待したい。

 U-20ワールドカップではグループリーグ突破が続いていたが、前回(2023年)のアルゼンチン大会では、最終戦でイスラエルに決勝トーナメント進出を阻まれた。

 U-20の大会でグループリーグ敗退に終わったのは、2001年に同じアルゼンチンで開催された大会以来だった。

 南米大陸での大会といえば、2014年のワールドカップ・ブラジル大会も日本にとっては厳しい結果となった。本田圭佑や香川真司らを擁して期待を集めた年代で、アルベルト・ザッケローニ監督のもとで強化も進んでいると思われたが、結局、1分2敗でのグループリーグ敗退となってしまった。

 日本から地球の反対側まで2万キロの移動距離があるので、やはり良いコンディションで戦えないのだろう。AFC加盟国であるカタール大会ではアジア勢が躍進したが、2014年ブラジル大会ではアジア勢は“全滅”だったのは偶然ではなかろう(今回のU-20ワールドカップでも、日本以外では韓国が3位通過に滑り込んだ以外は、オーストラリアとサウジアラビアはグループリーグ敗退)。

 そんな難しさのある南米大陸での大会で結果を残すことができれば、日本サッカーの歴史の上で画期的なことになる。

■技術力では参加国中「最高レベル」も…

 ところで、僕は今年2月に中国の広東省深センで行われたU-20アジアカップ(兼ワールドカップ予選)を観戦に行ったのだが、このとき、日本は準決勝敗退に終わってしまった。

 内容的には悪くはなかった。技術力では間違いなく参加国中最高のレベルだった。正確なボール扱いと組織的な守備によって、どの試合でもゲームを支配していた。しかし、それを生かし切れなかったのだ。

 きれいにパスを回しているだけで、「攻めきろう」という強い意志が見られなかった。

 だが、それからわずか半年。チリの大会で戦っているチームは見違えるように成長していた。

 組織的な守備でボールを回収して、テクニックと個の戦術で上回ってパスを回すのは当然として、さらに選手たちは試合の流れを読んで戦うことができている。時には強引に前線に長いボールを付けたり、あるいはブロックをつくって守ったり、多彩なセットプレーも用意している。そして、それらを使い分ける判断力も確かだ。

■2月との違いは「前を向いての積極性」

 とくに、2月との違いは、攻守ともに前を向いて仕掛ける積極性だ。

 初戦のエジプト戦でも、2戦目のチリ戦でも、日本は市川吏音のPKで先制して優位に立って戦えた。

 早めに相手ペナルティーエリア内にボールを入れ、積極的にドリブルで仕掛ける彼らの姿勢があったからこそ、相手のファウルを誘ってPKを獲得できたのだ。

 チリ戦では前半にもう1本のPKがあったのだが、これは高岡伶颯が蹴ってチリのGKセバスティアン・メッラに止められた。

 高岡はPKのときに、いったん動きを止めてGKの動きを誘おうとしたが、メッラはそこでまったく動かず高岡のキックを見てから動いた。そういうスタイルのGKに対しては、高岡のようなフェイントは通用しない。高岡のようなキッカーは、ヤマを張って飛ぶタイプのGKに対して起用すべきだろう。

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