アフマダリエフを翻弄し、反撃の余地すら与えなかった井上(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext…

アフマダリエフを翻弄し、反撃の余地すら与えなかった井上(C)Takamoto TOKUHARA/CoCoKARAnext
自らも「最強の敵」と見据えた相手を井上尚弥(大橋)は“圧倒”した。
国内外で大きな反響を生んだのは、9月14日に名古屋のIGアリーナで行われたボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一戦だ。ムロジョン・“MJ”・アフマダリエフ(ウズベキスタン)を迎え撃った井上は、試合序盤から軽妙なヒット&アウェイを継続して華麗に“完封”。豪快なダウンシーンもなかったが、試合前に「俺は誰にとっても厄介な存在になる」と豪語していた元オリンピアンに反撃の余地を与えず、ほとんど子ども扱いをして勝負を終わらせた。
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「判定決着でもいい」
そう勝ちに徹した試合で、宣言通りに封じ切った井上。普段とは毛色の異なるパフォーマンスは、本場の名伯楽も刺激した。自身がホストを務めるYouTubeチャンネル『THE FIGHT with Teddy Atlas』で「圧倒的すぎた」と“モンスター”を称えたのは、かつて元世界ヘビー級王者のマイク・タイソン(米国)を指導したテディ・アトラス氏だ。
戦前に「MJの経験はアマチュア時代を含めて豊富だ。メンタルや技術も優れている。だが、スコアで優位に立つタイプじゃない。だから手数の多いイノウエに判定で勝てるとは思えない。イノウエは致命的なパンチを受ける隙は見せない」と断じていたアトラス氏は、ほぼ自身の予想通りの展開となったアフマダリエフ戦を再分析。「身体的に強くて、タフなMJならイノウエに考えさせる場面も作ると思っていたが、結局はイノウエが圧倒的すぎたんだ。それで自分の流れに持って行った」と“差”を生んだ絶対王者の地力を称えた。
「何よりもイノウエは速すぎた。パンチも、足も、速すぎたんだ。MJのやろうとしたことは全てにおいてイノウエの方が上のレベルにあった。しかも、まるで次元が違うぐらいの差だ。言うなれば、一人は普通のガソリンで、もう一人はニトロを積んで走っているようなものだった。そのぐらいの差があった」
さらに「イノウエは自信に溢れていた。あれじゃ誰も勝てない。雰囲気から『絶対に負けない』とオーラを発していた」と殺気だった王者の風格を指摘した名伯楽は、「何よりも興味深かったのは、彼自身が『ガンガン攻めるだけじゃダメだ』と理解していたことだ」と強調。今年5月のラモン・カルデナス(米国)でダウンを喫した一戦から「学びを得ていた」と称えた。
「カルデナス戦では無茶をして、攻めに行って、ダウンをもらっていた。それは私が判定までもつれるといった理由の一つでもある。なぜならイノウエは本当に頭が良くて、コンピューターのような選手だからだ。だから『もう無謀に前に出ない』という教訓は、ちゃんとプログラムされていたと思うんだ。イノウエはその頭の良さと技術力の高さで、MJに“攻めさせる展開”を作り出した。そうやって引き出して、カウンターを狙った相手に、逆にカウンターを当てていた」
井上を「見事だった」とも言い切ったアトラス氏は、「やっぱりイノウエが完成されたファイターであることを証明した試合だった」と絶賛。最後の最後まで“モンスター”を褒めっぱなしだった。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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