ジャパンラグビー リーグワン ライジング20252025年9月27日(土) ヤ…
ジャパンラグビー リーグワン ライジング2025
2025年9月27日(土) ヤクルト戸田総合グラウンド
ヤクルトレビンズ戸田 17-35 狭山セコムラガッツ
リーグワンライジング プレーヤーエピソード[狭山RG]
狭山セコムラガッツの、清水良太郎選手
応援してくれる人のために。つらいことに向き合うことが次につながる
スコット・ピアス ヘッドコーチから任されたのは前半の40分間。狭山セコムラガッツ(以下、狭山RG)のスクラムハーフ、清水良太郎はその40分で「応援してくれる人たちに最高のプレーを届けたい」という強い思いで芝の上に立った。
「昨シーズン出場できなかったこともあり、『しっかり自分を表現する』と強い決意で臨んだ試合。気持ちはとても高ぶっていましたが、最初のパスをした時点から落ち着いてゲームに入り込めました」
ファーストプレーから持ち味である視野の広さとスピードを示し、高い運動量で縦横無尽にグラウンドを駆け回った。
「キックを使いながら速いテンポでボールをさばいて相手の陣形を揺さぶるのが自分の強み。スピードとキックをうまく使ったプレーを心掛けた」と清水は序盤から攻撃のリズムを生み出し、前半を14-7のリードで折り返すことに大いに貢献した。
狭山RGに加入した昨季の出場機会はなし。「試合に出られないことは本当に苦しかった。なぜ出られないのかを自問自答した」。試行錯誤の中で思い出したのが、東洋大学ラグビー部の恩師、福永昇三監督の言葉だった。
「『自分自身でやれることをやらないと何も結果も出ないし、つらいことに向き合わないとその先につながらないよ』、と言われたことがあって。社会人となってからも、自分を律することで前に進む意識を強く持てる、という意味でとても大切にしている言葉です」
その思いを胸に、妥協を許さず自らを磨いた。練習を終えるたびにその日に組んだユニットの選手で集まりプレーを検証。ビデオ映像も何度も何度も見直した。「先輩たちのプレーとはどう違うのか? 何が足りないのか? 自分の強みも弱みもすべて分析すべく、チームメートととことん話し合った」ことが、着実な成長につながっている。
狭山RGへの加入を決めたのは、高校日本代表に選ばれたこともあるラガーマンの父・邦彦さんの大きな背中を見ていたからだ。「仕事もラグビーも全力で取り組む姿を見て、自分も父のようにしっかりと仕事をし、ラグビーでもより高いレベルを目指し両立させたい。それができると思ったのが狭山RGだった」。現在はさいたま市の支店に所属しており勤務は午後3時まで。その後グラウンドに移動し、夜8時過ぎまで練習を行う。
「仕事は現場の警備を担当しており、例えば機械から異常が発信された場合はわれわれ隊員が駆け付けてお客様と一緒に安全確認を行うといった業務です。職場では上司も同僚もとてもラグビーを応援してくれていて、退社時刻になったらしっかり僕らのことを練習に送り出してくれる。そういう部分でも会社からのバックアップがすごくて、とても充実しています。それに応えるためにも、グラウンドに到着したらしっかり気持ちを切り替え臨んでいます」
この日は支店の同僚や両親も清水を応援するために駆け付けていたが、それに気づいたのは勝利したあとのこと。それはこの試合に集中していた証だ。
「全体的に振り返ると70点。(出場した)40分間を得点で上回れたのは良かったですが、まだまだディフェンス面で個人としても課題が残っています。もっと味方の選手をうまく使って攻めの形を作っていきたい」と反省を口にしつつも、多くの観客を前にプレーできたことについては「とても楽しかった。久しぶりの感覚だった」と笑顔が弾けた。
社会人となり1年間徹底的に自分と向き合うことで見えてきた心境があるという。「いまはモチベーションを自分だけに向けるのではなく、応援していただいているみなさんが僕のプレーで喜んでくれるように考えています。そしてそれが自分の喜びになる、そんな気持ちで戦っています」。12月に開幕を迎えるリーグワンでの初キャップへ。清水良太郎がしっかりとその一歩を踏み出した試合だった。
(関谷智紀)
