プロ野球・阪神タイガースの原口文仁(33)が29日に自身のSNSで引退を表明した。近日中に会見を開く。 「ご報告」から…

 プロ野球・阪神タイガースの原口文仁(33)が29日に自身のSNSで引退を表明した。近日中に会見を開く。

 「ご報告」から始まる文章では、「今シーズンをもって現役を引退します。支えてくださったファンの皆様、球団、仲間、家族に心から感謝します。応援、ありがとうございました」などと記した。

 応援を力に変え、厳しいプロの世界で16年、ひたむきに戦ってきた。

 東京・帝京高から2009年秋のドラフト6位で捕手として阪神入団。腰痛に悩み、育成契約になったこともあったが、16年以降、勝負強い打撃で1軍に定着した。

 19年1月に健康診断で大腸がんが判明した。進行度は5段階で2番目に重いステージ3B。一瞬、死がよぎった。だが、持ち前の前向きな性格で「必ず復帰する」と思い直し、手術した。

 6月4日、ロッテ戦で1軍に復帰。九回に代打で登場した。敵地での試合だったが、球場全体の観客が総立ちで拍手を送った。

 そして、左翼フェンスを直撃する適時二塁打を放ち、二塁ベースの手前から勢いよくヘッドスライディング。ガッツポーズで声援に応えた。

 ファンの存在を力に変えてきた原口らしいエピソードがある。

 プロ野球の本拠での試合では、選手が打席に立つ際や登板する際に登場曲が流れる。甲子園での試合では原口にも当然登場曲があったが、2023年は曲が流れないまま、拍手を背に打席に入った。

 新型コロナウイルスによる感染症の拡大も収まり、声出し応援が解禁された年だった。「いいなと思う曲が見つかるまでは、声援を背に戦おう」と考えたからだ。

 近年は代打での登場が大半で、先発出場の機会は少なかった。それでも早めに球場に来て準備し、ベンチに控えていても大きな声で仲間を励ました。結果は伴わなくとも、ファンは拍手を送り続けた。

 「5番・一塁手」で、今季初の先発出場となった9月11日。3打数無安打に終わったが、二つの内野ゴロでは一塁へ全力疾走した。試合後、「悔しい思いがあるけど、また試合に出られるチャンスがあればそこへしっかり準備したい」と話した。

 2日後、東京ドームでの巨人戦で五回に代打で登場。投手を強襲する打球を放つと、一塁ベースに頭から突っ込み、適時内野安打にした。

 大病をわずらいながらも、社会的な影響力のあるプロ野球選手として、自分にしか伝えられないことがあると信じ、そして何よりも大好きな野球に、必死に向き合ってきた16年間。その姿は最後まで変わらなかった。(大坂尚子)