蹴球放浪家・後藤健生は、これまで多くの試合を観戦してきた。その中でも「忘れられない」最高の試合が、1つある。その甘美な…

 蹴球放浪家・後藤健生は、これまで多くの試合を観戦してきた。その中でも「忘れられない」最高の試合が、1つある。その甘美な思い出は来年、北中米ワールドカップが開催されるメキシコの、ある州都のスタジアムとつながっている。

ブラジル代表の「ホーム」

 メキシコ大会のメイン・スタジアムは、どちらの大会もアステカでした。

 1970年ワールドカップのために建設された11万人以上を収容する巨大スタジアムで、1968年のメキシコ・オリンピックでも使用され、日本代表が銅メダルを獲得したのもアステカでのことでした。

 一方、ハリスコは当時の収容力は6万6000人ほどで、アステカに次ぐ2番目の大きさのスタジアムでした。そして、ハリスコは2度のメキシコ大会ではブラジルのホームとなり、1970年大会決勝(アステカ)以外ブラジルは全試合をハリスコで戦い、グアダラハラの人たちもブラジルを自分たちのチームとして応戦し続けました。

■「東西南北」が分からない!

 ハリスコ・スタジアムは大きなスタジアムでしたが、とてもシンプルな構造でした。2層式のスタンドはメインもバックも両ゴール裏もすべて同じ高さで、屋根も全面同じような構造。

 そのため、スタジアム内では東西南北の方向性が分からず、メインスタンドとバックスタンドの区別がつかないこともありました。ヨーロッパでのテレビ中継のために正午キックオフの試合が多く、しかも緯度の低い(赤道に近い)メキシコでは、太陽は真上に来るので太陽を見ても方向が分かりづらいのです。

 ただ、2層式の記者席からはピッチ全体を見下ろすことができるので、非常に試合が見やすかったのです。アステカ・スタジアムはあまりにも巨大でしたが、ハリスコはコンパクトで雰囲気が良かったように思います。

 また、標高2300メートルほどのメキシコ市は空気(酸素濃度)が薄く、そのせいで自動車のエンジンが不完全燃焼するために大気汚染が激しかったのですが、グアダラハラは標高が1600メートルほどで、空気もずっときれいで過ごしやすい気候でした。

■39年前以上に「面白い試合」

 僕はメキシコ大会のときはメキシコ市内のホテルに泊まって、巨大なバス・ターミナルからバスで各会場を往復。グアダラハラには何度もバスで往復しました(国内線の飛行機を使ったときもあります)。

 来年の北中米ワールドカップでもグアダラハラは会場のひとつとなっています。メキシコでは、あるいはグアダラハラでは、また面白い試合が見られるのではないかという予感もします。

 そこで、先日、ワールドカップの日程を調べていて初めて知ったんですが、グアダラハラではハリスコ・スタジアムではなく、2010年に完成した新しいエスタディオ・グアダラハラ(通常は命名権で「エスタディオ・アクロン」)が使用されるようです。

 でも、もしグアダラハラに行ったら、やっぱりエスタディオ・ハリスコにも行ってみたいと思います。

 それにしても、これからの人生で、39年前のあのブラジル対フランス戦以上に面白い試合に出会うことはできるのでしょうか……?

いま一番読まれている記事を読む