背後に迫るライバルたちを抑え続け、役割を全うした角田(C)Getty Images 現地時間9月21日、F1第17戦アゼ…

背後に迫るライバルたちを抑え続け、役割を全うした角田(C)Getty Images

 現地時間9月21日、F1第17戦アゼルバイジャンGPの決勝がバクーの市街地コースで行われ、レッドブルの角田裕毅は6位に入賞。レッドブル昇格後で最高位だった9位を更新する快走を見せた。

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 前日に「今は希望が自信に変わっている」と語った予選で得た手応えが結果に結びついた。チェッカーフラッグを受けたのはスターティンググリッドと同じ6番手だったが、サマーブレイク後は2度目のポイント獲得。チームから「結果」と求められる身としては最低限の役割を果たしたと言える。

 もっとも、より上位を狙うチャンスはあった。というのも、一時3位にまで浮上していた角田は、38周を終えた段階で初めてピットインしてほどなくして、リアム・ローソン(レーシングブルズ)にDRSでかわされると、激しい攻防を展開。本人曰く「リアムにアタックしてインサイドから追い抜くチャンスは何回かあった」が、かつての同僚を追い抜きはしなかった。

 角田の脳裏にはより重要な任務がよぎっていた。残り7戦でドライバーズランキングトップのオスカー・ピアストリ(マクラーレン)に69ポイント差、ランド・ノリス(マクラーレン)に44ポイント差と急接近するエースであるマックス・フェルスタッペンのために、ライバルたちを下位に抑えるという役目だった。

 実際、前日の予選で、ピアストリは9番手、そしてノリスは7番手とスターティンググリットは決して上位ではなかった。ゆえにセカンドドライバーとして角田は彼らをけん制する“任務”こそが最重要と考えていた。決勝後にF1公式のインタビューに応じた25歳は、こう語っている。

「正直に言えば、リアムを追い抜くチャンスは何回かあった。でも、今日はマクラーレン(のノリス)が、僕ら2人(ローソンと角田)をオーバーテイクしていくリスクの方がとても大きかった。チームとしてはそういう状況(ノリスのポイント増加)は避けなきゃいけないし、個人的には正しい判断をしたと思ってる。おそらく普通に走れば、彼(ノリス)には勝てるわけではないだろうけど、同時に彼にも余裕を持ってオーバーテイクできるほどのペースがなかったと思う」

 ライバルにオーバーテイクの余地を与えない角田の“けん制”は厄介なものとなっていた。英衛星放送『Sky Sports』でノリスは、「自分(の走り)が悪かったとは思ってない」と強調。その上で「今日はツノダをオーバーテイクできるチャンスが最後の最後まで訪れなかったんだ。ある局面では彼が信じられないほどの速さを見せたからね。僕としてはついていくのに必死な部分もあった」と正直に打ち明けている。

 無論、相棒のタイトル獲得の可能性を高めた角田の献身性はチーム内で高く評価されている。担当エンジニアのリチャード・ウッド氏は無線を通じて「素晴らしいよ、ユウキ! 本当に最高の努力をしてくれた。君の努力が報われたんだ。これは大きな違いになるぞ」と絶賛。

 また、ローラン・メキース代表もF1公式のフラッシュインタビューで「非常に力強いレース運びだったし、マクラーレンとフェラーリを後ろに抑え込んでくれた。ユウキはクリーンな週末を必要としていたが、それを見事にやり遂げ、チームにとって重要なポイントを持ち帰ってくれた」と褒めちぎった。

 果たして、バクーで見せた角田の“逆襲”は何かと喧騒が尽きない去就問題にいかなる影響を生むのか。チームとはサマーブレイク後の10戦で判断する方針で合意している中で、「噂を楽しませてやればいい」と集中力を高める25歳のパフォーマンスに興味は尽きない。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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