プロ野球は終盤を迎えました。 個人タイトル争いでは広島の小園 海斗選手(報徳学園)がセ・リーグトップの打率.309、15…

プロ野球は終盤を迎えました。

 個人タイトル争いでは広島の小園 海斗選手(報徳学園)がセ・リーグトップの打率.309、159安打。初のタイトルが狙える状況です。

 今年高卒7年目の小園選手は報徳学園時代からずっと追いかけてきた選手。ようやく球界トップの成績を残し、感慨深いものがあります。

1年春〜3年夏の甲子園まで順調すぎる活躍

 小園選手の存在を知ったのは、高校1年生だった2016年5月です。

“スーパー1年生”として華々しいスタートを切ったのが小園選手でした。1年春からレギュラーを獲得し、春季県大会5試合すべてで安打を放ち、25打数10安打の活躍を見せました。

 2年春にはセンバツベスト4入り。順調に活躍を続け、小園選手は2年生ながら、U−18代表に選出されます。ここで初めて小園選手を生で見ることができたのですが、遊撃守備のスピード感は段違いでした。

 17年のU-18代表は千葉を拠点に国内合宿を行っていました。千葉工業大の茜浜グラウンドで大学生とのオープン戦を行いましたが、ゲッツー処理に入った小園選手の鮮やかな動きに目を奪われました。別日、城西国際大グラウンドではさらに近くでシートノックを見ることができましたが、グラブさばきが巧みで、バウンドに合わせるのがうまい。打撃でも木製バットをうまく扱い、鋭いライナーを飛ばしていました。世界大会では、アメリカなど強豪国の選手たちに刺激を受け、より練習の取り組みが変わったといいます。

 最終学年、小園選手は体作りに力を入れ、73キロから8キロ増量に成功し、最終学年のパフォーマンスはさらにレベルアップしていました。夏の東兵庫大会の滝川二戦で、バックスクリーンへ本塁打を放ちました。ドラフト前のインタビューで小園選手はこの一打をベストホームランだったと振り返ります。

「完璧です。あんな打球は練習でも打ったことがないくらい。打った瞬間はセンターを少し越えるくらいと思っていたのが本塁打になったので、自分でもビックリしました」

 さらに守備面でも成長を感じられました。守備位置がさらに深くなり、ヒットを許すことが減りました。このポジションが取れるのは自分のスピードと肩の強さに自信を持っている証拠です。小園選手は自分の守備力の高さに自信を持っていました。

「プロの世界ではなかなか深い位置を守ることはできませんが、打球に入るまでの速さと守備範囲と肩には自信があったので、高校生相手ではあの守備位置でも守れると思ってあの守備位置で守っていました。ヒットの確率は減りました」

 順調に成長を遂げた小園選手は3年夏に二度目の甲子園出場。3試合で12打数4安打、3二塁打を記録し、守備でも強肩、走塁でも俊足ぶりをアピールしました。

 夏も走攻守で躍動した小園選手はこの年も代表入りを果たします。

 アジア大会前に行われた大学日本代表との壮行試合では、西武ドラフト1位となった松本航投手(明石商-日本体育大)からライトスタンドへ本塁打。多くのスカウトが見ている試合で、大きくアピールを見せ、ドラフト1位はほぼ固まったと思わせるパフォーマンスでした。

U-18アジア大会ではまさかの4失策…腐らずに練習を重ね、3位決定戦で猛打賞

高校時代の小園海斗

大会前までの内容は小園選手が代表選手の中でNO.1。宮崎開催となったアジア大会でも活躍が期待されました。

 しかしこの大会で小園選手は痛恨のミスをしてしまいます。オープニングラウンドとスーパーラウンドをあわせて計4失策してしまったのです。

 特に韓国戦では3失策。チームも1対3で敗れ、小園選手の表情は暗いものでした。さらにスーパーラウンドの台湾戦でも1失策を喫し、チームも敗れ、決勝進出を逃すことになりました。いつもであれば、しっかりと打球に合わせて処理していますが、アジア大会での小園選手はバウンドが合わず、苦労している様子が見られました。

 台湾戦の翌日、翌々日は大雨で試合自体が中止になり、日本の選手たちはサンマリンスタジアムの近くにある室内練習場で練習することになりました。全体練習が終わると、素手で壁当てを繰り返す小園選手の姿がありました。狂った守備の感覚を取り戻そうと、指導者にアドバイスを求め、なんとかチームに貢献しようとする姿勢が見えました。

 3位決定戦の中国戦では5打数3安打2打点の活躍。守備機会は一度だけでしたが、攻守ともに吹っ切れた感じがありました。そして最後の公式戦となった国体の浦和学院戦では好守備を披露し、二塁打も放ち有終の美を飾りました。試合後の取材で小園選手は「U-18では思い切りプレーができなかったので、最後に思い切りプレーができてよかったです」と笑顔で振り返りました。

 そして18年のドラフトでは4球団の競合の末、広島が交渉権を手にしました。

 小園選手の高校3年間を見てきて、類稀な野球センスの高さを持ちながら、苦しい時でも逃げずに努力を続ける姿勢の良さが見えました。特にU-18ワールドカップの大会期間の素手での壁当て姿は忘れられません。その姿勢を貫けば、プロで活躍できる選手だと感じました。

 プロ入り後、1年目から58試合で4本塁打、3年目で初の規定打席到達し、昨年まで3回到達。今年は2年連続で150安打を達成し、現在159安打はキャリアハイの成績です。

 セ・リーグ唯一の3割打者(打率.309)で、このまま行けば自身初の首位打者は狙える数字です。さらに近年はサードでの出場が多かったのですが、今年の終盤にかけてショートでの出場が多くなりました。高打率を残せて、高い守備力を持つショートはなかなかいません。

 中学時代からU-15代表に選出され、世代のトップランナーとして走り続けているのはまさに称賛に値します。

 このまま日本球界でプレーしつづければ、2000年生まれの選手としては、世代最速となる通算1000安打、1500安打到達も可能だと思います。

 今年だけではなく、来年以降もタイトルをずっと狙える活躍を見せることを期待しています。