今年8月にも国際試合に出場していたプラウド。五輪戦士である彼の「エンハンスト・ゲームズ」への参加表明は小さくない驚きを生…

今年8月にも国際試合に出場していたプラウド。五輪戦士である彼の「エンハンスト・ゲームズ」への参加表明は小さくない驚きを生んだ(C)Getty Images
スポーツの根幹を揺るがすイベントの実施が波紋を呼んでいる。
物議を醸し続けているのは、来年5月に米ネバダ州ラスベガスで開催予定となっているドーピングの使用を容認する国際イベント「エンハンスト・ゲームズ」だ。
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ステロイドやヒト成長ホルモンなど国際的なスポーツ大会で禁止されている薬物の使用を容認するという同イベントは、「人間の新たなカテゴリーを創造する」という目的の下で開催。専門医が禁止薬物の種類と摂取量を徹底管理する条件で、陸上(100メートル、女子100メートルハードルと男子110メートルハードル)、水泳(50メートルと100メートルの自由形およびバタフライ)、重量挙げ(スナッチおよびクリーン&ジャーク)の3競技における世界記録の更新を目指すという。
当然ながら開催決定当初から多くのハレーションを生んだ「エンハンスト・ゲームズ」だが、それ同時に大会の意義に同調するアスリートたちも登場。すでに競泳ではパリ五輪の50メートル自由形で銀メダルを手にしたベン・プラウド(英国)が参加を表明し、「経済的に言えば、全く別次元の話だった」と強調。危険視する世間の風潮にも「薬の中には、身体に効果があり、副作用も非常に少ないものがある」と反発している。
ただ、一般的に流通していない薬も使用する人体へのリスクは計り知れず、何よりも危険なのは言うまでもない。それだけに各協会は警鐘を鳴らし続けている。英アンチ・ドーピング機構の委員会は公共放送『BBC』において「この大会は、スポーツの本質、そして基本的な価値観である公正さと誠実さから無謀に逸脱している」と断言。娯楽性を重視し、スポーツの在り方を軽んじたイベントの開催に猛反発した。
「世界のスポーツの品位に取り返しのつかないダメージを与えるものだと言える。ドーピングによって達成されたパフォーマンスを称賛することは、スポーツ界が目指すべきすべてに反するものである。そして国際舞台でのパフォーマンスは次世代に刺激を与えるものでなければならない。我々が懸念しているのは、この大会が、将来の有望なアスリートたちに不正行為だけが成功する唯一の方法だと威圧し、意欲をそがせ、事実上彼らを追い払ってしまうことだ」
もっとも、“品位”を問われた主催者側は、批判を全く意に介していない。ドナルド・トランプ米大統領の長男であるジュニア氏らの支援を受けている創始者の起業家アロン・デスーザ氏は、「自由で十分な情報に基づく中で同意を得た成人は、自分の身体を望むように扱うべきだ」と主張。あくまで禁止薬物の使用が「個人の自由であるべき」という考えを崩していない。
もはや国際問題にも発展している同大会は、本当に開催に至るのか。正式決定以来、有力アスリートの参加数も増えているが、果たして――。
[文/構成:ココカラネクスト編集部]
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