主砲の筒香嘉智が圧倒的な存在感で本塁打を放ち、守護神の山﨑康晃がピンチを切り抜けゲームを締める──。 日本シリーズ…
主砲の筒香嘉智が圧倒的な存在感で本塁打を放ち、守護神の山﨑康晃がピンチを切り抜けゲームを締める──。
日本シリーズ5戦目にして、レギュラーシーズン同様の戦いをすることでDeNAはソフトバンクとの対戦成績を2勝3敗とした。

日本シリーズ第5戦のヒーロー、山﨑康晃(左)と筒香嘉智
ラミレス監督は試合を振り返る。
「全体的に選手がよくなってきている。特に筒香は重要な場面で打ち、山﨑は最後、難しい状況で投げ切ってくれた。本当、レギュラーシーズン通りやってくれて、こういう活躍ができれば必ず勝てるし、残り2戦もきっとやってくれると思います」
筒香は4回、それまでタイミングが合っていなかったバンデンハークの153キロのストレートをとらえ、逆転のツーランを放った。日本シリーズでようやく出た一発。筒香は「ホームランを打てたのはたまたま。チームが勝てたので、それが一番よかった」と語るが、キャプテンの一発は、スタジアムに足を運んだ観衆はもちろん、チームの雰囲気を一変させた。
その後、中村晃の本塁打によりソフトバンクに逆転されるが、6回に筒香はモイネロからタイムリー二塁打を放ち、再逆転への流れを作った。
「全員でつないで点が取れたので、そこが大きかったと思います」
今シーズンもキャプテンとしてチームをまとめてきた筒香。日本シリーズでは3連敗を喫し窮地に立たされたが、筒香いわく「逆に3試合負けてから、いつも通りできるようになった」という。今まで率先してチームの雰囲気づくりをしてきた筒香は、ここにきてチームメイトのある変化に気づいた。
「どの選手も個人が気づいて、いつも通りというか、いい雰囲気のなかでやれています」
つまりペナント終盤のAクラス争いやCSといった厳しい戦いを経て選手たちは成長し、ワンランクアップしたチームになりつつあるということなのだろう。ただ、そのムードも筒香が築き上げたものであることは間違いない。5番打者として筒香の後ろを打ち、この試合でも適時打を放った宮﨑敏郎は次のように証言する。
「ゴウ(筒香)は若いのに凄いですよ。頭がいいし、引っ張る力がある。よく周りを見ているというか、みんなを引き立てつつリードしてくれる。みんなが同じ方向を向くように、空気を変える力があるんです」
こんな誰からも信頼されているリーダーが打てば、当然チームは波に乗る。
そして守護神の山﨑もまた、筒香からのアドバイスにより能力を向上させた選手のひとりである。今シーズンは春先にクローザーを外されるなど悔しい思いをしたが「しっかりと意図を持ったピッチングをすればいいんだよ」と筒香に諭され、再びクローザーに返り咲くことができた。
ラミレス監督からは「最後までクローザーからは外さない」と言われ、あらためて強い信頼を勝ち取ったわけだが、この第5戦ではそれが顕著な形で現れる。
山﨑は、レギュラーシーズンでは経験したことのない8回からの登板を言い渡された。当然、最終回へかけてのイニングまたぎは必至である。二死一、二塁の場面でパットンに代わり、マウンドに上がった。打者は柳田悠岐だ。
ラミレス監督は「試合前から投手の使い方は準備し、プランを立てていた。スペシャルなゲームだし、負けたら明日はない。そういうことも踏まえ、イニングまたぎを準備していた」と言うが、山﨑本人には試合前に伝えていなかった。
「プレッシャーを受ける人もいるので、8回になってから伝えました」
山﨑は8回にパットンがマウンドに上がる前、ブルペンで肩をつくっているときに、コーチから柳田まで回ったらいくぞと言われた。
そのときの気持ちを山﨑は次のように語る。
「今シーズンは一度もなかった場面での登板だったので自分自身わからないところはありましたが、いくぞと言われても気後れしない準備はしていました。3連敗したときは投げられず悔しい思いをしていたので、どこであってもいける、チームが本当に困ったとき投げるチャンスはあると考えていました」
山﨑はフルカウントからツーシームで柳田を切って取りピンチを脱した。ただ問題はここからだった。イニング間の気持ちの整理──イニングをまたぐにあたり、リズムや気持ちを保つことがうまくいかず打ち込まれてしまう投手は少なくない。
「今までやったことがない分、そこが一番難しかったですね。僕は、野球はメンタルスポーツだと思っているのですが、とにかく自分のパフォーマンスを発揮するために1秒1秒を大切にしていました。ネガティヴなことを考えることなく、残り3つのアウトをいかに取るのか。ピンチになっても自分のボールを信じて投げることが大事だって」
しかしながら9回は今宮健太、内川聖一、松田宣浩にヒットを許し、二死満塁のピンチを迎えてしまう。1点リードの状況、一打出れば逆転を許してしまう。打者はくせ者の明石健志。だが、山﨑の心の中は凪(なぎ)のように落ち着いていた。
「前日に得点差はありましたが、クリーンナップと対戦できたことが糧になっています。またレギュラーシーズンでは悔しい思いをしたし、眠れない夜もありました。その悔しさを忘れることなくポストシーズンを戦うことができている」
緊迫の場面。山﨑は初球、外角のツーシームを投げ込むと、明石はそれを引っ掛けファーストゴロでアウト。非常に難しい状況を乗り越え、山﨑はチームを勝利に導いた。
「チームとして勝ち切れたのは勢いにつながるだろうし、ここからまた気を引き締めて福岡に向かいたい。日本一は、誰も見たことのない場所だけど、ひとつずつ勝っていきたい」
お立ち台でファンの前で宣言したが、山﨑は胴上げ投手として有終の美を飾るつもりだ。
「毎晩寝る前に『胴上げ投手になるんだ』と強くイメージしながら過ごしていきたいですね」
戦力を鑑(かんが)みれば、依然ソフトバンク有利は揺るがない。果たして、ラミレス監督のもと筒香を中心にポストシーズンにおいて成長し続けているDeNAは、その堅牢(けんろう)な牙城を切り崩すことができるのか。雌雄を決する福岡ラウンドがいよいよ始まる。