陸上の世界選手権(世界陸上)東京大会の男子20キロ競歩で、19年ドーハ大会、22年オレゴン大会に続く3度目の優勝を狙っ…

 陸上の世界選手権(世界陸上)東京大会の男子20キロ競歩で、19年ドーハ大会、22年オレゴン大会に続く3度目の優勝を狙った世界記録保持者の山西利和(愛知製鋼)が1時間22分39秒で28位に終わった。

 残酷な結末が待っていた。15キロ過ぎ、山西は8人の先頭集団から一気に抜け出した。金メダルが近づいたかに見えた瞬間、審判員から提示されたのは「レッドカード」だ。

 競歩では、両足が地面から離れたと審判に判断されると「レッドカード」が提示される。山西はこれで3枚目となり、ペナルティーゾーンで2分間、待機。優勝争いから脱落した。

 カイオ・ボンフィム(ブラジル)が1時間18分35秒で優勝。吉川絢斗(サンベルクス)が1時間19分46秒で7位、丸尾知司(愛知製鋼)が1時間20分09秒で9位だった。

■競歩のルールを解説

 陸上競技の「競歩」はその名の通り、歩く速さを競うスポーツだ。そもそも、「歩く」と「走る」の違いは、どこにあるのか。

 競歩には、大きく分けて二つのルールがある。

 一つは、両足が地面から同時に離れないようにすること。走るときのように、一瞬でも両足が空中に浮いてしまうとダメだ。これを「ロス・オブ・コンタクト」と呼ぶ。

 もう一つは、前に出した足が地面に着いてから垂直になるまで、ひざがまっすぐに伸びていないといけない。このルールは、「ベント・ニー」という。

 レース中は、複数の審判が自分の目で選手たちの動きを見ている。反則が疑われる場合は、どの違反かを図で示した円形の札がついた棒を、選手に出して注意する。この棒を「イエローパドル」という。

 反則と判断したときは「レッドカード」を出す。3回以上出された選手は、決められた場所に一定の時間とどまるペナルティーが与えられたり、失格になったりする。

 競歩は、日本の選手が得意とする「お家芸」ともいわれている。2016年のリオデジャネイロ・オリンピックから23年の世界選手権まで、6大会連続で世界大会のメダルを獲得した。

 競歩には、距離の変更が繰り返された歴史もある。

 20キロと50キロが実施される時代が長かったが、22年からは20キロと35キロに。来年以降は、ハーフマラソンと同じ21.0975キロと、マラソンと同じ42.195キロに変わる予定だ。

 世界陸連は、一般の人たちにより親しみがある距離にするためだと説明している。(加藤秀彬)