はじめに 脂質異常症は、放置すると動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気につながるリスク因子です。しかし裏を…

はじめに

 脂質異常症は、放置すると動脈硬化を進め、心筋梗塞や脳梗塞といった重大な病気につながるリスク因子です。しかし裏を返せば、生活習慣を見直すことで改善・予防ができる病気でもあります。

今回は、脂質異常症を改善するために日常でできる方法を整理し、医療機関でのサポート体制についてもご紹介します。

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1. 食事改善:脂質異常症対策の第一歩

食事の内容を変えることは、血中コレステロールや中性脂肪を改善する最も効果的な方法のひとつです。

▼減らすべき食品

・飽和脂肪酸(バター・ラード・霜降り肉・揚げ物など)
・トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニングを含む菓子・パン)
・過剰な糖質(清涼飲料水、スイーツ、精製炭水化物)

▼増やしたい食品

・魚(特に青魚:EPA・DHAが中性脂肪を下げる)
・大豆・大豆製品(イソフラボン・植物性たんぱく質)
・野菜・海藻・きのこ類(食物繊維がコレステロール吸収を抑える)
・オリーブオイルやナッツ(不飽和脂肪酸)

⇒ 日本動脈硬化学会ガイドラインでは、総摂取カロリーの適正化+飽和脂肪酸の制限+食物繊維摂取増加を強く推奨しています。

2. 運動習慣をつける

運動はHDLコレステロール(善玉)を増やし、中性脂肪を下げる効果があります。

・有酸素運動:ウォーキングやサイクリングを1日30分、週5日以上
・筋力トレーニング:スクワットや腕立てを週2〜3回
・生活活動の工夫:階段利用、1駅歩く、家事を積極的に行う

⇒ 「特別な運動」よりも、「日常の中で体を動かす」ことを積み重ねる方が継続しやすいです。

3. 体重管理

肥満、とくに内臓脂肪型肥満は脂質異常症の大きな要因です。
体重を 5〜10%減らすだけでも血中脂質は改善します。

・BMIは25未満を目標に
・腹囲:男性85cm未満、女性90cm未満を目安に

4. 禁煙・節酒

・禁煙:喫煙はHDLを下げ、動脈硬化を加速させます。禁煙は最優先の改善策です。
・節酒:アルコールは中性脂肪を上げやすいため、1日エタノール換算20g未満を目安に。

5. ストレス・睡眠習慣の改善

・睡眠不足は交感神経を刺激し、中性脂肪や血糖値の上昇につながります。
・ストレス対策には運動やリラックス法(深呼吸・ストレッチ)が効果的です。

6. 医療機関でできること

生活習慣改善だけでは十分でない場合、薬物療法が必要です。
代表的なのはスタチンですが、その他にもエゼチミブ、フィブラート、PCSK9阻害薬など選択肢があります(詳細は次回「脂質異常症の薬」で解説します)。

まとめ

・脂質異常症の改善には、食事・運動・体重管理・禁煙・節酒・睡眠改善が基本。
・自覚症状がないからこそ、検査と継続的な生活習慣改善が重要。
・池尻大橋せらクリニックでは、検査と生活指導を組み合わせた包括的なサポートを提供。

参考文献

1.日本動脈硬化学会. 『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022』
2.Grundy SM, et al. 2018 AHA/ACC Guideline on the Management of Blood Cholesterol. J Am Coll Cardiol. 2019
3.Cornelissen VA, Smart NA. Exercise training for blood lipids: a systematic review. J Am Heart Assoc. 2013
4.Pedersen BK, Saltin B. Exercise as therapy in chronic disease. Scand J Med Sci Sports. 2015

[文:池尻大橋せらクリニック院長 世良 泰]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

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池尻大橋せらクリニック院長・世良 泰(せら やすし)

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人スポーツチームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。