FC町田ゼルビアが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に初挑戦している。J1初挑戦の昨シーズンは、「戦い方」について…
FC町田ゼルビアが、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に初挑戦している。J1初挑戦の昨シーズンは、「戦い方」について幾多の議論を呼んだ。その「異質さ」は、ACL初戦のFCソウル戦でさらに鮮明になったと、サッカージャーナリスト後藤健生は指摘する!
■無駄遣いをしない「効率的な補強」
かつてはローカルクラブの一つだった町田だが、2023年にサイバーエージェントがメインスポンサーとなり、今ではJリーグの中でも資金力のあるクラブとなっている。
しかも、その資金力の使い方も効率的で、無駄使いせずに効率的な補強を繰り返し、今では戦力的にもJリーグ屈指の陣容をそろえている。
昌子源や相馬勇紀、中山雄太といった日本代表経験を持つベテランから、GKの谷晃生や先日のA代表のアメリカ遠征にも選出された望月ヘンリー海輝、藤尾翔太といった若手選手。さらに、韓国の羅相浩(ナ・サンホ)と呉世勲(オ・セフン)、そしてオーストラリアのミッチェル・デュークと各国の現役代表選手もそろえている。
従って、横浜FC戦やFCソウル戦のように、チームとして機能していなくても個人能力によって押しこむことも可能なのだ。
■日本サッカー界の中で「異質な存在」
横浜FC戦は後半になってから望月、羅相浩、デュークと各国代表級を次々と投入してロングボールを蹴り込む「力攻め」を試み、同点ゴールをもぎ取った。
実に迫力ある攻めだった。
もちろん、ロングボールに頼ることはどんなチームにもあるが、日本では“ロングボール頼り”に否定的な感覚が強く、監督たちは「ロングボール一辺倒にならないように……」といったことをよく口にする。だが、町田の場合は強力な「個の力」を生かすロングボール攻撃を確信を持って実行しているように見える。
強力な守備と個人能力を生かしたサッカー……。つまり、町田は現代の日本サッカー界の中ではかなり異質な存在なのだ。
そして、これまで日本のクラブはACLという舞台において、そういう(町田のような)サッカーに散々苦しめられてきた。
■「大きな負担となる」ACLでの消耗戦
日本チームがボールを握ってパスをつないで攻撃を組み立てるのだが、しっかり守られてなかなか得点できず、そうこうしている間に相手チームの強力な助っ人の力で失点してしまう……。アジアを舞台に、そんな試合を僕たちは何度も見せられてきた。
ところが、FC町田ゼルビアというチームは、そうした“アジア的な”サッカーを引っ提げてACLEに参戦してきたのだ。
ソウル戦でも、パスのつなぎなどではソウルのほうが上だったかもしれない(そこには、ジェシー・リンガードの存在も大きかった)。そして、町田は個人能力を前面に出して対抗したのだ。
これからも、ACLEにおける町田の戦いでは、そうした“逆転現象”が見られることだろう。
開幕節のソウル戦を見る限り、町田はACLでかなりの消耗戦を強いられそうだ。J1リーグの優勝争いも佳境に入っているが、やはりACLEは町田にとって大きな負担となるのかもしれない。