エディージャパンは決勝でフィジーとの対戦を迎える(C)Getty Images 2025年パシフィックネーションズカップ…

エディージャパンは決勝でフィジーとの対戦を迎える(C)Getty Images
2025年パシフィックネーションズカップ準決勝がラグビー日本代表(世界ランク13位、以下ジャパン)とトンガ代表(同16位)との間で、アメリカコロラド州で現地時間の9月14日に行われ、ジャパンが62-24のスコアで勝利した。ジャパンは同国との対戦成績を11勝9敗とし、2017年から続く連勝を4に伸ばした。
結果だけ見れば62得点、38点の得失点差はいずれも同国との対戦史上最多で、大勝といって良い一戦だった。ただし、手放しで喜ぶわけにはいかない課題が散見された。
まず、簡単に先制を許してしまったこと。試合開始のマイボールキックオフから守勢の流れを断ち切ることができずに、トライライン前の敵ボールラインアウトからあっさりと先制トライを奪われてしまった。
トンガというチームはプレーの精度に問題がある反面、一度調子づかせてしまうととてつもないパワーを発揮することがある。そうした危険を回避するためにもジャパンの方が先制点をもぎ取りに行くべきだった。
またランキング上位国はしょっぱなからエンジンを全開にして大量点を取り、点差を詰めようと焦るチームのミスにつけ込んでさらに得点を重ねるという狡猾さを持っている。今後のことを考えても、先制点を与えたことは大いに反省すべき点だろう。
前半に取られた3つのトライがいずれもトンガ選手の強力なフィジカルに屈してのものだったことも気になる。トライライン前の肉弾戦になると、ダブルタックルでも防ぎきれなかった。10月下旬から11月にかけて対戦する強豪国は、いざとなったら、トンガ以上に徹底したフィジカル勝負に持ち込むパワーと技術を持ち合わせている。ラインアウトモールへの対応も含め、早急に対策を講じるべきだろう。
進歩が感じられたのは、最後まで運動量が落ちなかったフィットネス面だろうか。特に5トライを奪った後半は、スタミナ切れを起こしていたトンガを尻目にジャパンの選手たちの動きは軽やかそのもので、無理やりフィジカル勝負にこようとするトンガのプレッシャーを見事にいなしてチャンスを作りトライに結びつけていた。
ただし、「決めムーブ」が見られなかったことに少々不満を覚えた。トンガの動きが鈍く、「決めムーブ」を使うまでもなく得点できていたということもあるが、こうした精神的に余裕のある場面でこそ何か一つ「予行演習」を行ってみても良かったのではないか。
セットプレーに目を転じると、スクラムは125kgと151kgのプロップを擁し、総体重で30kg近く上回るトンガ相手に一歩も引かず、むしろ押し込む場面が多く見られるなど健闘した一方で、ラインアウトは被スチール1本とキャッチミス1本があり、まだまだ発展途上という感があった。昨季正HOだった原田衛が怪我で離脱している今、江良颯と佐藤健次にはさらなる精進を望みたい。
その他では李承信の好調さが目立つ。特にキックの精度が高く、今大会のキック成功率は88.4%のスーパーブーツぶりを見せている。特に初戦のカナダ戦は難しい角度からのキックをことごとく決め、貴重な得点源となった。パスやパントなど、チーム全体を効果的に動かすプレーの精度も上がっており、ジャパンの司令塔にふさわしい選手へと成長しつつある。フィジカルに勝る選手へのディフェンスや、自らが突破を図る際のボディコントロールにはまだまだ課題があるものの、現在まではそうしたマイナス点を補って余りある活躍を見せているといって良いだろう。
決勝戦は引き続きアメリカの地で、現地時間9月20日に世界ランク9位のフィジーとの間で行われる。ジャパンにとっては昨年の決勝戦の雪辱戦である上に、2027年W杯を有利に戦うための世界ランクアップを賭けた試合でもあり、10月以降の強豪国との対戦に向けてはずみをつけるためにも是非とも勝っておきたい試合だ。昨季より進化した「超速ASONE」でフィジーに勝利する試合を期待したい。
[文:江良与一]
【関連記事】【エディージャパン検証】“生命線”が機能したアメリカ戦 トンガ戦への修正ポイントは?
【関連記事】【ラグビー】ウエールズ戦の逆転劇で上昇気流に乗れるか 不用意なミスを減らすことが「超速AS ONE」への道筋に