蹴球放浪家・後藤健生は世界中のスタジアムを訪れる。その際に、欠かせないものがある。スタジアムの守備を突破するために「魔…

 蹴球放浪家・後藤健生は世界中のスタジアムを訪れる。その際に、欠かせないものがある。スタジアムの守備を突破するために「魔法の言葉」と「カード」が必要なのだ!

■韓国の「圧迫」と日本の「報道」

 Jリーグの試合を観戦に行くとき、僕たちジャーナリストやカメラマンはスタジアム外のフェンスの入り口にいる警備員のおじさんに「プレスで~す」と声をかけて中に入ります。

「プレス」というのは英語で「押す」という意味。サッカーで「プレッシング」「ハイプレス」というように使う「プレス(PRESS)」と同じ単語です(韓国語ではサッカーの「プレッシング」のことを「圧迫」と言います。発音も日本語とほとんど同じ「アッパク」です)。

「プレス」には「印刷」という意味もあります。もともとはインクをつけた版を紙に押しつけてインクを転写する工程のことだったのですが、それが「印刷」という意味になり、さらに転じて「印刷する仕事」つまり「報道機関」のことを「プレス」というようになりました。

 ラジオやテレビは印刷はしませんし、今では紙に印刷するメディアのほうがむしろ少数派になっています。

 たとえば、僕が書いている原稿も、今では紙に印刷されるものはごくわずか。『サッカー批評』のようにWebで公開されるものがほとんどですが、それでもやはり報道機関のことを「プレス」と呼んでいるのです。

■スタジアムに入る際の「証明書」

 話はだいぶ飛んでしまいましたが、こうして「プレスで~す」と言って、僕たちは入り口を通過してスタジアムに入り、報道受付に行って取材許可証(つまり、首からぶら下げるADカード)をもらって記者席に向かいます。カメラマンだったらビブスももらうわけです。

 ADカードをもらうときには、Jリーグから送られてきたQRコードを見せて、身分を証明します。しかし、最初にフェンスを通過するときには「プレスで~す」と言うだけで、何の証明書も見せるわけではありません。

 それでは、誰でも「プレスで~す」と言えば入れてしまうことになります。実際、これはかなり昔の話ですが、僕の知人は報道関係でもなんでもないのに、いつもこの手でスタジアムに入っていたというのです(もう時効の話です。良い子は絶対にマネしないでね)。

 これは、どう考えてもおかしいでしょう。本当は、フェンスの中に入るときに証明書が必要なはずです。それが「ADカード」の本来の役割です。

「ADカード」は「アクレディテーション・カード」のこと。その人物が、保安のために入場が制限されている区域に入場できる認定資格を持っていることを証明するための大事なカードです。

 本来は(ワールドカップやオリンピックでは)、たとえ警察官であってもADカードがなければ制限区域には入れません。場内でのビールやヒマワリの種などの売り子も、スタジアムの清掃員も、入場するためにはすべて「ADカード」が必要です。スタジアム周囲のフェンス内は制限区域なのですから、そこを通過するためにはADカードは必要なはずなのです。

 ですから、「プレスで~す」と言って入り口を通過しては本当はいけないのです。

 つまり、ADカードはフェンスの外でもらうべきなのです。

■探すのに苦労する「ADセンター」

 ワールドカップやオリンピックでは、当然そういうシステムになっていますし、各国の国内リーグでも同じです。

 ワールドカップやオリンピックのような大会では、スタジアム近く(の制限区域の外側)に「アクレディテーション・センター」(以下ADセンター)という施設があって、まずそこでADカードをもらわないと、スタジアムにもメディア・センターにも入ることはできません。『蹴球放浪記』第279回では、U-20ワールドカップの取材に韓国に行ったときに、水原(スウォン)のスタジアムでADセンターが見つからずに苦労した話を書きましたが、ADセンター探しに手間取ることはよくあることです。

 2018年のロシア・ワールドカップ開幕戦が行われたルジニキ・スタジアムのように、地下鉄駅を降りたらすぐにADセンターの案内標識が見つかったりすると、逆にびっくりしてしまうほどです。

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