井上とクロフォード。互いに極上の技術勝負でタイトルを手にしただけに、PFPを巡る論争は話題となっている(C)Getty …

井上とクロフォード。互いに極上の技術勝負でタイトルを手にしただけに、PFPを巡る論争は話題となっている(C)Getty Images

 井上尚弥(大橋)が見せつけた極上の12ラウンドは、世界を驚かせた。

 9月14日、名古屋のIGアリーナで行われたスーパーバンタム級4団体統一タイトルマッチ12回戦で、統一王者である井上は、WBA世界同級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)に3-0で判定勝ち。「今日は今日の判定で勝つというボクシングをチョイスしてよかった」と初回からアウトボクシングを徹底。相手に付け入る隙を与えずに支配し、見事な防衛を果たした。

【動画】アフマダリエフの顔面をヒット! 井上尚弥の渾身フックをチェック

 ド派手なKO劇ではなかった。それでも試合後に「100点」と自己評価を下した井上は、「倒しに行かないことがこれほど難しいんだなっていう発見はありました」と漏らしながら「(倒しに行く感情に)堪えて判定に持っていけたっていうのは、一つ自分の中で良かった」と己の成長に充実感を口にした。

 また一つスキルを向上させた。そんなモンスターが見せた戦いは、アメリカの専門メディアでも確かな評価を得た。老舗誌『The Ring Magazine』は「賢かった」と絶賛。そして、「美しいボクシングパフォーマンスを披露した」と、まるでAIのように陣営と練り上げた作戦を徹底した戦いを褒めちぎった。

 このアフマダリエフ戦の数時間前には、アメリカ国内ではボクシング史に残るであろうメガマッチが行われていた。ラスベガスのアレジアント・スタジアムで開催されたテレンス・クロフォード(アメリカ)とサウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)によるボクシングの世界スーパーミドル級4団体タイトルマッチである。

 メガスター同士による至高の一戦は、クロフォードが多彩な技術でカネロを凌駕。12ラウンドを戦い抜いた末に見事に判定勝ちを収め、前人未到の3階級での4団体統一という偉業をやってのけていた。

 それだけのインパクトがあった試合が行われていただけに、パウンド・フォー・パウンドを巡る議論も白熱している。その中で井上の進化に強い関心を寄せたのは、アメリカの名物トレーナーであるスティーブン・エドワーズ氏だ。

 専門メディア『Boxing Scene』で論客を務めるエドワーズ氏は自身のXで「バド(クロフォードの愛称)、イノウエ、ウシクが互いに戦えないのは答えを難しくさせる。私は今回はバドを1位に選ぶ」と指摘。その上で「だが、イノウエは若い。より多くのタイトルを獲得できるし、誰よりも破壊力がある。挑戦すべき階級も多い。さらにジュントを倒してフェザー級も統一すれば、彼はもっと多くのことを成し遂げることになる」と期待した。

 SNSでも議論百出の事態となっているパウンド・フォー・パウンドを巡る論争。その中に当たり前のように食い込むところも、井上の偉才ぶりを物語る事実と言えよう。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

【関連記事】井上尚弥はなぜアフマダリエフを“支配”できたのか? 不気味な自信が漂う敵陣営の「狙い」を凌駕した異常なる進化

【関連記事】最強の敵を圧倒した技術の「差」 井上尚弥の進化に英メディアも愕然「アフマダリエフは失望するだろう。完全に圧倒されていた」

【関連記事】“最強の敵”に貫禄の完封勝ち! アフマダリエフを技術で圧倒した井上尚弥の防衛劇に米衝撃「王者の美技。MJには手に負えない状況だった」