サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニア…
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、9月3日、7日に行われたルヴァンカップ準々決勝でも採用されている試合方式「2レグ制」について。
■第1戦「サブチーム」が奮闘も…
この酷暑の中、浦和レッズも川崎フロンターレも8月31日の日曜日にホームゲームを戦い、浦和はアルビレックス新潟に1-0で、川崎はFC町田ゼルビアに5-3で勝った。互いに中2日で臨んだルヴァンカップ準々決勝の第1戦、浦和は大幅なターンオーバーを敢行し、DF石原広教、MF安居海渡、金子拓郎、マテウス・サヴィオ、松尾佑介、FW小森飛絢らを温存した。一方の川崎もMF山本悠樹とFW伊藤達哉を先発から外したが、攻撃の核になるMF脇坂泰斗やマルシーニョを送り出した。
マチェイ・スコルジャ監督も長谷部茂利監督も「2戦制」を考えて、初戦ではダメージを少なく済ませ、第2戦が勝負と考えていたに違いない。浦和の「サブチーム」が奮闘し、MF中島翔哉が見事なシュートを決めて浦和が優位に立ったが、川崎は終盤押し込み、アディショナルタイムの5分に交代出場の伊藤が決めた同点ゴールが大きな意味を持つことになった。
■浦和を襲った「アクシデント」
等々力での第2戦は、予想どおりともに現在のベストメンバー。だが、前半に思いがけないことが起こる。浦和のGK西川周作からペナルティーエリア右でパスを受けたDFダニーロ・ボザがコントロールミス、脇坂に奪われ、追ってタックルしたところでPKの宣告。これをFWエリソンが決め、前半18分という早い時間で川崎が一歩前に出たのだ。
浦和はハーフタイムにMF柴戸海とMF中島を投入して立て直しを図り、後半27分には加入したばかりの大型スウェーデン代表FWイサーク・キーセ・テリンを小森と並べで2トップに起用した。そしてわずか2分後にこのテリンが同点ゴールを決める。しかし、後半32分に柴戸が川崎の交代出場のMF大関友翔と激突して頭を強打。柴戸はプレーを続けたが、延長戦開始前に座り込み、「脳振とうの可能性による交代」となった。
試合は終盤まで一進一退で、1-1のまま延長戦かと思われたが、後半43分、川崎は中盤からボールを持ってペナルティーエリアに近づいた伊藤が思いきって右足を振り抜くと、ブロックに入った柴戸の左足に当たったボールは浦和ゴールの右上隅に吸い込まれた。伊藤に対する詰めがやや遅いように見えたが、柴戸はもうプレーできる限界を超えていたのかもしれない。
■毎週は「できない…」試合
しかし浦和はあきらめず、DFのダニーロ・ボザを最前線に上げて「パワープレー」を展開、90分間が終わる寸前、そのダニーロ・ボザへのファウルによりゴール前26メートルでFK。これを中島がバーの下側に当てる正確無比なシュートで決め、同点にしたのだ。
そして延長戦。ここで再び浦和の守備陣に思いがけないミスが起こる。ボールを受けたGK西川に川崎FWラザル・ロマニッチが詰めて川崎MF宮城天がカット、宮城から大関に渡ってシュート。これは西川が防いだが、リバウンドを拾った大関のパスを受けた伊藤が突破しようとしたところを浦和MF関根貴大がひっかけてこの試合2本目のPKとなる。そして宮城が決め、ようやく決着がついたのである。
「2レグ制」、「180分間の戦い」には、両監督の考え抜いた戦略があり、臨機応変の対応があり、選手たちもそれに応えて死力を尽くした。両クラブのサポーターもピッチ上の熱さに負けないパワーを発揮した。ミスもあり、誤算もあっただだろう。そして川崎が準決勝に進み、浦和は奮闘むなしく敗退という明暗も生じた。しかし文句なしの激戦、熱戦であったことは間違いない。
リーグ戦とは違う「2レグ制の面白さ」が凝縮された試合。ただ、やはり、毎週こんなことはできないだろうなとは思った。