「自分が終わらせないように、気持ちを込めていきました」 日本シリーズ第4戦の試合後、チーム初勝利を挙げた濱口遥大はル…

「自分が終わらせないように、気持ちを込めていきました」

 日本シリーズ第4戦の試合後、チーム初勝利を挙げた濱口遥大はルーキーらしからぬ落ち着いた表情で、力強く言い切った。

 ここまで0勝3敗とソフトバンクに日本一へ王手をかけられていたDeNAだったが、濱口の好投により、ようやく一矢報いることに成功した。濱口は緩急を織り交ぜた絶妙のピッチングで8回一死まで強力なソフトバンク打線を相手にノーヒットの快投を続けた。



ソフトバンク打線を完璧に封じ込めた濱口(右)と高城のDeNAバッテリー

 試合後、ラミレス監督は濱口をこう称えた。

「よく投げてくれたし、素晴らしいのひと言に尽きる。ルーキーがこのような舞台でこれほどのピッチングをしたことは現役時代から見たことないが、決して驚いてはいない。濱口は、スタミナはもちろん、ハートが強い選手だからね」

 その濱口は、冷静な口調でこう語った。

「集中しすぎて、調子がいいのか悪いのかさえわからないほどでした。とにかく、いろんな配球をしなければいけないと、すべての球でしっかりと腕を振るという意識でした」

 この試合、DeNAバッテリーが細心の注意を払ったのが、1番の柳田悠岐だ。ここまでの3戦。第1打席で柳田に出塁を許し、先制点を奪われ、ゲームのペースを握られていた。

 今年、シーズンを通して濱口とバッテリーを組んでいたキャッチャーの高城俊人としても、柳田の出塁だけは避けなければならないと心に決めていた。

 濱口の最大の持ち味は、140キロ中盤のストレートと落差あるチェンジアップ。立ち上がり、柳田をバッターボックスに迎えた高城は、こう考えたという。

「最初は(濱口の)真っすぐがきている印象がなかったので、柳田さんをはじめ左打者にはチェンジアップをどんどん使っていこうと思っていたんです」

 だが、初球のチェンジアップがワンバウンドのボールになる。そこで高城は攻め方を変えた。

「ストライクが入りそうになかったので、左打者にはストレートとフォークを中心に組み立てました」

 濱口と高城のバッテリーは、柳田を相手に内角中心にストレートとフォークで攻め、最後は外角のストレートでセカンドゴロに打ち取った。その後の柳田の打席でも、徹底してストレートとフォークで攻め込み、強打を封じてみせた。

 一方、右打者にはストレートとチェンジアップを軸に組み立て、凡打の山を築いていく。また普段は使わない左打者へのスライダーなど、とにかく的を絞らせない多彩な配球を高城は心掛けたという。

「入り球で外からのスライダーとカーブでカウントが取れたというのは、濱口自身、楽に投球ができた要素だと思います。どうしてもパ・リーグはストレートに強い選手が多い。そういった意味で緩急が使えたのはよかったですね」

 特にソフトバンクの打者はクライマックスシリーズの楽天戦において、塩見貴洋や辛島航といった緩急を使う左腕に苦戦しているだけに、濱口が適応できたのも理解できる。

 緩急織り交ぜて多彩な球種を使っていく──これが若いDeNAバッテリーがソフトバンク打線を相手に導き出した対応策だったわけだが、特に高城がリードにおいて重要視したのは、その場の皮膚感覚ともいえる機に発し、感に敏なる洞察力である。

「苦手なコースや球種で攻めたり、裏をかこうとするのではなく、打者のバットの反応をそのまま受け入れ、目の前で起こっていることを一番に配球するのがベストだと思いました。たとえば、何を打って凡打しているのか、そのつながりを大事にしようって。実はこっち(横浜)に戻ってきてから、光山(英和)コーチと意見交換する時間があったのも大きかったんです。僕ひとりだったら(対応するのは)絶対に無理でした」

 出番が限られている高城ではあるが、その分ベンチからじっくりとゲームを観察することができた。誰よりもゲームの流れ、相手の読みを俯瞰して見ていた。その成果がこの大舞台で発揮されたというわけだ。

 また高城は、好リードに加え、本塁打を含む3安打3打点とバットでもチームの勝利に貢献した。

「今日は緊張というよりも、絶対にやってやろうという気持ちが強かった。もう後がないですし、ここまで見ていて悔しかった。絶対に勝ちたい。やり返すぞって気持ちが前面に出ていました」

 7回に五十嵐亮太から放った本塁打は、そんな気持ちからか無我夢中でどんなボールを打ったのかさえ覚えていないという。

 そして高城は、一学年下の濱口とのコンビネーションについて次のように語った。。

「バッティングカウントのとき、どの球を投げればストライクが入るか、意思の疎通ができるようになりました。これも1年間、バッテリーを組ませてくれたラミレス監督のおかげですね。今シーズンはアイツが頑張って勝ってくれたから自分もゲームに出場することができた。だから今日のゲームは何とか助けてあげたいという気持ちがありました」

 若いバッテリーの献身と打線の奮起で、ついにDeNAは反撃の狼煙(のろし)を上げた。

「シーズン中も3連敗の後に4連勝という経験もある。それを再現するだけです」とラミレス監督は語るが、非常に厳しい状況であることは変わらない。それでも濱口と高城のバッテリーが重苦しい空気を破ったことは間違いない。若いチームゆえ、スイッチが入れば予想以上の力を発揮することもある。果たして、DeNAは奇跡を起こすことはできるのか。