10月29日、バルセロナ。カンプ・ノウの向かいにあるミニ・スタディでは、リーガ・エスパニョーラ2部、バルセロナB対…

 10月29日、バルセロナ。カンプ・ノウの向かいにあるミニ・スタディでは、リーガ・エスパニョーラ2部、バルセロナB対セビージャBの試合が行なわれていた。「マシア」と呼ばれる育成組織に定評のあるバルサにとって、トップチームとの架け橋になっているのが、バルサBである。

 バルサBは予備軍として、戦術スタイルはトップチームと変わらない。ボールを握る力が強く、失わないため、味方を信じて周りも動き出せる。それによって、ポゼッション率が高まる。左利きが多いのも特徴で、この日は先発の5人が左利き。左センターバック、左サイドバックは「右足でボールを持つようでは、サイドをギリギリまで広く使うチームスタイルにはそぐわない」と言われる。

 必然的に、トップチームと同じ匂いのする選手も多い。たとえば、アンカーに入ったオリオル・ブスケッツは奇しくも苗字まで同じ(縁戚関係はない)。ケガ人続出で急遽右サイドバックに入ったキャプテンのセルジ・パレンシアは本来MFだが、トップのセルジ・ロベルトのように複数のポジションをこなせる。



バルサBで10番を背負うアレニャ

 開始早々、バルサBは数本のパスをつなぎ、相手ゴール前に運んでいる。もつれたボールにカレラス・アレニャが反応してそのまま持ち込み、左足で叩き込んだ。10番を背負ったアレニャはすでにトップデビュー済みで、将来が嘱望されている。

 バルサBは堅実に、その伝統を継承していた。

 しかし同時に、時代に合わせてマイナーチェンジも図っている。 

 繰り返すが、バルサの強さの秘密はマシアにある。育成によって、バルサは世界に君臨している。リオネル・メッシを筆頭に、アンドレアス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツ、ジェラール・ピケ、ジョルディ・アルバ、セルジ・ロベルトなど主力は、いずれもマシア出身者だ。

 この日、右インサイドハーフに入ったアレニャは、マシアの象徴的選手だろう。7歳からバルサの薫陶を受け、飛び抜けた技術を持っている。左サイドバックのマルク・ククレジャも14歳でエスパニョールから移籍し、マシア色に染まった選手といえる。「ジョルディ・アルバの後継者」と目され、傑出した攻撃力を見せる。また、右サイドバックのパレンシアも、10年以上マシアで過ごし、「セメドを大金で獲得する必要はなかった」とまで言われる。ユーティリティ性に長け、クレバーさが光る逸材だ。

 U―17W杯で活躍したFWアベル・ルイスのような新鋭も台頭しつつあり、その層は厚い。

 ただ、一方で今シーズンのバルサBは補強も図っている。20代半ばの”ベテラン”を次々に獲得。チョコ・ロサーノ、ヘスス・アルファロ、ルイス・ガラレタという選手たちだ。

 バルサBは当然ながら、ユースに近い年齢の選手が中心になる。エリート集団だが、リーガで歴戦の猛者を相手にした場合、若さからか勝負弱さを見せ、2部で生き残るのが難しい状況にあった。そこで2部B(3部リーグに相当)から2部に昇格した今シーズンは、経験のある選手を外から補強した。彼らにトップ昇格の道は閉ざされているわけではないが、実際には、主に2部残留への貢献が主な仕事になるだろう。

 さらにバルサBは、育成と補強を掛け合わせたような選手も揃えている。トップ昇格を見据え、20代前半のルーキーたちと契約。スペイン国王杯でデビューを飾って話題を呼んだホセ・アルナイスはその筆頭だろう。レアル・ソシエダからレンタルされているダビド・コンチャ、ブラジルのフルミネンセから買い取りオプション付きで来ているヴィチーニョのふたりも、バルサBでのプレー次第で、トップに引き上げられるはずだ。

 すなわち、バルサBには「育成要員」「残留要員」「補強予備軍」の3つの選手タイプがいることになる。

「バルサは育成を捨てた」

 そんな言い方でこの方針を批判する人々もいるが、しかるべきアップデートといえるだろう。

 なぜなら、バルサは手塩にかけて育てた選手を”青田刈り”されるケースも少なくないからだ。セスク・ファブレガス(2003年、16歳のときアーセナルへ)、エクトール・ベジェリン(2011年、16歳のときアーセナルへ)のスキャンダラスな移籍は記憶に新しく、今年の夏には気鋭のアタッカーだったジョルディ・モウラをモナコに奪われている。

 ククレジャも、マンチェスター・シティ、ドルトムント、ローマなど強豪クラブから高額オファーを受け、もし本人に強い残留の意思がなかったら、引き止めることはできなかっただろう。また、18歳のブスケッツも来季で契約が切れるが、まだ更新は宙に浮いたままだ。

 バルサとしては、マシアという土壌を守りつつ、それだけにこだわることなく「バルサでのプレーに意欲を持った選手をトップチームに送り出す」という方針に舵を取っている。そのためには、バルサBはレベルの高い2部にいる必要がある。2部Bでは、トップと差がありすぎるからだ。

 この日、試合はバルサBが優勢に攻め、攻撃に入った時の迫力はトップチームにも匹敵するものだった。しかしディフェンスの脆さを突かれ、追いつかれて同点に終わった。攻守ともに、バルサらしさを継承していることは間違いない。