サッカー観戦での熱中症ゼロを目指して、浦和レッズがホームの埼玉スタジアム2002で対策に力を注いでいる。スタジアム内に…
サッカー観戦での熱中症ゼロを目指して、浦和レッズがホームの埼玉スタジアム2002で対策に力を注いでいる。スタジアム内に無料のウォーターサーバー(給水機)を設置するなど、国内では珍しい取り組みだ。きっかけは日本から唯一出場した、ある国際大会だった。
今夏、レッズが給水機を設置しているのは、スタジアムの2階と5階のコンコース8カ所。アウェーの来場者側にも置いてあり、開場後から試合終了後30分まで持参したコップやボトルに無料で給水できる。
1試合につき、約1万人分(1人500ミリリットルと想定)を用意。7月27日から実施し、9月20日までのホームゲームなどで設置予定だ。
レッズによると、埼玉スタジアムで昨年7~10月上旬に開催した5試合で、計48人が熱中症と疑われる症状を訴えた。
近年、猛暑が深刻化してきており、レッズは今春から給水機の導入など対策を協議してきた。ただ、スポンサーやスタジアム内の飲食売店との調整、費用面などでの課題が多かったという。
そんな中、レッズは6月、アメリカであったクラブワールドカップ(W杯)に日本勢唯一のチームとして出場した。試合会場となったシアトルとロサンゼルスのスタジアムでは無料の給水機が設置され、来場者が列をつくっていた。視察した山本桂司・競技運営本部部長は「実際に使われているのを見て、(導入は)検討から覚悟に変わった」と話す。
その後、関係各所の理解を得て、導入が決まった。現在、レッズが費用を負担しているが、今後は水の無償提供など協賛してくれるスポンサーを探したいという。「まだ設置を知らない人も多い。徐々に認知度も高めていければ」(山本部長)
レッズはこのほか、これまでなかった飲食売店でのペットボトルの水販売や飲料の売り子の配置にも着手。コンコースにはミスト付き扇風機を置き、クラブ会員向けに熱中症保険の無料サービス(先着順)も始めた。来場者の治療に備え、医務室も拡充した。
レッズによると、サポーターからは「非常に助かる」などと好評という。SNS上では「うちのクラブでも導入してほしい」などと声が上がっている。
Jリーグのシーズンの移行に伴い、来年は8月上旬の開幕となる。山本部長は「熱中症を訴える人を限りなく0に近づけたい。スタッフやサポーター向けに救命救急講習を開くなど、1年後を見据えて様々なことを試していきたい」と話す。(黒田壮吉)