母が牝馬二冠を制したベガなら、全兄は日本ダービー馬のアドマイヤベガ。世代屈指の良血馬として注目を集めたアドマイヤボス…

 母が牝馬二冠を制したベガなら、全兄は日本ダービー馬のアドマイヤベガ。世代屈指の良血馬として注目を集めたアドマイヤボスが、生涯唯一の重賞タイトルを獲得した00年のセントライト記念を振り返る。

 アドマイヤボスは父サンデーサイレンス、母ベガ、母の父トニービンの血統。父が歴史的トップサイアーなら、母は93年の桜花賞とオークスの覇者。さらに1つ上の全兄となるアドマイヤベガが日本ダービーを制したことで、育成段階から注目を集めることとなる。ただ、体質の弱さが影響してデビューは遅れた。初陣は3歳夏。日本ダービーから2カ月が経とうとしている7月23日の函館ダ1700mだった。ここを既走馬相手に圧勝すると、続く知床特別は後に神戸新聞杯を制するフサイチソニックの2着。そして次走に選ばれたのは自己条件ではなく、菊花賞トライアルのセントライト記念だった。

 重馬場で争われた一戦、下馬評は3強だった。1番人気は2.3倍で日本ダービー4着のトーホウシデン。続く2番人気が3.5倍でアドマイヤボス。そして3番人気が5.4倍で前年の東京スポーツ杯覇者のジョウテンブレーヴだった。実績では明らかに劣勢だったが、アドマイヤボスは良血の底力を発揮する。道中は人気2頭を前に見る形で中団を追走。そして3角から捲り気味に進出した。直線はトーホウシデン、ジョウテンブレーヴとの激しい競り合い。後藤浩輝騎手の叱咤に応えて抜け出すと、最後はトーホウシデンを半馬身抑えてフィニッシュ。母と兄に続く重賞制覇を果たしたのだった。

 この後は7戦して未勝利に終わったアドマイヤボスだが、この勝利と血統が評価されて種牡馬となった。決して繁殖牝馬に恵まれたわけではなかったが、アドマイヤスバルやアイアンルック、アスカトップレディなどの活躍馬を輩出。ここでも良血の意地を見せるのであった。