近本の存在抜きに阪神の躍進は語れない(C)TakamotoTOKUHARA/CoCoKARAnext ついにマジック3。…

近本の存在抜きに阪神の躍進は語れない(C)TakamotoTOKUHARA/CoCoKARAnext

 ついにマジック3。藤川阪神が2年ぶりのリーグ優勝へ独走しています。2位・巨人とは大きくゲーム差が離れ、ぶっちぎりのセ界制覇です。

 その好調タイガースを牽引するのが、不動のリードオフマン・近本光司です。2018年のドラフト1位で阪神入団後、最多安打1度、盗塁王5度、2021年からは4年連続でベストナイン&ゴールデン・グラブ賞に輝くなど、球界を代表する外野手と言っても過言ではないでしょう。

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 その近本ですが、ドラフト当日のスポーツメディアによる「採点」は、決して高くなかった…いや、低評価だったことで知られています。

 アマチュア野球の詳しいライターは言います。

「あの年、阪神はまず1位で大阪桐蔭の藤原恭大外野手を指名したのですが、ロッテ、楽天と3球団競合の末、ロッテが交渉権を確定させました。外れ1位には立命館大学の大学ナンバーワン外野手・辰己涼介を指名して、こちらも楽天、巨人、ソフトバンクと4球団競合の末、楽天が当たりくじを引いたんです。阪神が『外れ外れ1位』で大阪ガスの近本を指名すると、『大卒社会人か…』『小ぶりな選手だな…』という雰囲気に包まれたことを今でも覚えています」

 その理由について、こう分析するのです。

「あの年の近本は大阪ガスの都市対抗野球大会制覇の原動力となり、打率.524と首位打者に輝いてMVPにあたる橋戸賞を獲得するなど、社会人野球を代表する外野手だったんです。でも当時の都市対抗決勝は7月下旬で、スポーツメディアにとっては1年で最も忙しい、夏の高校野球地方大会が佳境を迎える時期。正直、そこまで注目されていませんでした。サイズ的にも身長171センチと小柄なことから、『わざわざ1位で獲得する選手なのか』『中位でも獲れた選手じゃないか』との声が聞かれたのは事実です」

 しかし、その後の活躍についてはここに記すまでもありません。

 ドラフトの正しい評価は会議当日でなく、5年後、10年後に分かる――というのも頷ける話です。

「メディアもドラフトマニアも、甲子園や東京六大学のスターを過大評価する傾向があります。有名選手を獲得した球団の評価は高いし、年齢を重ねた大卒社会人選手を上位で獲得すると『育てる気があるのか!』といった声が出てきてしまう。でも大切なのは、チームの戦力になれるかどうか。名より実を取った阪神のスカウトの眼力は、再評価されてしかるべきでしょう」(前述のライター)

 現在、開催中の都市対抗野球大会でも「負けたら終わり」の一発勝負で、必死のアピールを続ける男達が奮闘しています。

 その中から、確かな逸材を発掘できるか。

 東京ドームに陣取るスカウトたちの「眼」に、期待したいところです。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

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