これまで13回のワールドカップを現地で観戦した蹴球放浪家・後藤健生。その中で最も面白かったのは、2度のメキシコ大会だと…

 これまで13回のワールドカップを現地で観戦した蹴球放浪家・後藤健生。その中で最も面白かったのは、2度のメキシコ大会だという。そしてマラドーナ、プラティニ、ジーコら各国を代表するスター選手たちの活躍とともに忘れられないのは、メキシコという国そのもの。どういうことか。来年のワールドカップの開催国である不思議の国メキシコを、蹴球放浪家が語る!

■中南米の「野菜」が世界を救う

 その他にも新大陸原産の食材は数限りなくあります。

 イタリア料理といえばトマトを思い浮かべますが、これもメキシコ原産(南米という説もあります)。コロンブス(イタリア人のクリストフォロ・コロンボ)が新大陸に到達して、航海者たちが現地の植物を持ち帰ってくるまで、イタリアにはトマトは存在しなかったわけです。

 同じようにドイツ料理といえばジャガイモですし、19世紀の飢饉のときにアイルランド人はジャガイモを食べてしのいだそうですが、ジャガイモも南米アンデス地方原産ですから、15世紀のドイツ人はジャガイモを見たこともなかったのです。

■キムチが「真っ赤」になったのは

 韓国のキムチは唐辛子で真っ赤になっていますが、唐辛子はメキシコ原産です。16世紀にスペイン、ポルトガル人によってその唐辛子が日本に伝わり、豊臣秀吉の軍勢が朝鮮に攻め入ったときに朝鮮の人々は初めて唐辛子と出合ったといわれています。

 それ以前のキムチは、トウガラシは使わないで発酵させた漬物でした(今の韓国でも、水キムチはトウガラシを使っていませんよね)。

 メキシコはそうした食材の原産地=本場ですから、カカオや唐辛子が自在に使われていて、他の国にはない味を醸し出しているというわけです。

 実際に、メキシコでマーケットを見物に行ったときに、唐辛子屋で10数種類の唐辛子を試食させてもらいました。見た目も味も、辛さも千差万別。それぞれにいちいち名前がついていて、唐辛子屋の親父が教えてくれたのですが、その場を離れたらすぐに頭から飛んでいってしまいました。

■物価の高い「アメリカ」を避けて

 まあ、しかし、僕がメキシコを訪れたのはもう39年も昔のことで、「いつかまた」と思いながら、それ以来、一度も行っていません。まだ、放浪を始めてすぐの頃でした。

 それから、もっと多くの国を尋ねました。ですから、今もう一度メキシコに行ったら、きっとメキシコの混沌ぶりをちゃんと整理して理解できることでしょう。いや、多くの国を経験したからこそ、メキシコでさらなる不思議を発見することになるのかもしれません。

 現在、来年のワールドカップ行きの計画をぼんやりと立てているところですが、インフレが進んでホテル代や物価の高いアメリカ(トランプ関税の影響で、物価はこれからさらに上がることでしょう)は避けて、なるべくメキシコに滞在することにしたいと思っています。

 40年ぶりのメキシコで何を発見できるか。今から楽しみに思っています。

 えっ、「今回の原稿は何かまとまらない内容だ」って? 申し訳ない。なにしろ混沌の国メキシコの思い出なので、頭の中も混沌化してしまったのでしょう。

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