8月最後の日曜日に行われた、川崎フロンターレとFC町田ゼルビアの一戦。ナイトゲームにもかかわらず、30度を超える暑さの…

 8月最後の日曜日に行われた、川崎フロンターレとFC町田ゼルビアの一戦。ナイトゲームにもかかわらず、30度を超える暑さの中で行われた激闘は、両チーム計8ゴールの殴り合いに。現地で観戦したサッカージャーナリスト後藤健生が受け取った、猛暑の熱戦からのメッセージ!

■足りなかった「反撃のエネルギー」

 GKの谷晃生の欠場と並んで、FC町田ゼルビアにとって大きな負担となったのは、やはり8月16日のJ1リーグ第26節以降の公式戦4連戦による疲労の蓄積だ。8月20日には町田のACLエリート出場に伴う第30節の前倒し分(対ガンバ大阪)があり、27日は天皇杯準々決勝(対鹿島アントラーズ)があって、ミッドウィークも試合が続いたのだ。

 一方の川崎フロンターレは、天皇杯はすでに敗退しているので、週1試合の通常のスケジュールで戦ってきた。

 もちろん、町田の川崎戦の敗戦と連戦による疲労の蓄積の間にどれだけの因果関係があるのかは分からないが、78分にエリソンの得点で川崎がリードした後、1点を追う立場になった町田には反撃のエネルギーが足りなかったように見えたのも事実だ。

 もちろん、強豪チームの試合数が増えて日程が厳しくなるのはふつうのことだし、今の町田には、そうした連戦を乗り越えられるだけの戦力も整ってきている。ビッグクラブになるためには、乗り越えなければならない道だ。

 だが、現在の日本の気象条件の下では、連戦の負担は平常時以上に重くのしかかってくる。

 第28節が終了して、カレンダーは9月に入ったが、9月1日も日本中が猛暑に襲われた。

 僕が住んでいる東京の天気予報を見ていたら、9月4日から5日にかけては最高気温が30度程度になるとのことで「ようやく秋が到来か」と思ったが、この日は雨が降るために気温が下がるだけで、西日本では猛暑が続き、次の週末には関東地方も最高気温が34度ほどの猛暑に戻るようだ(今や、34度では「猛暑」とは思えなくなっているが)。

 そんな中で、これからAFCチャンピオンズリーグ(ACL)エリートやACL2が始まれば、出場チームにとって変則スケジュールの負担が増すはずだ。

■ACL出場チームは「涼しい時期」に消化

 先日の天皇杯準々決勝が終わって、なんとACLEに出場するヴィッセル神戸サンフレッチェ広島、FC町田ゼルビアの3チームがそろって準決勝進出を決めた。まあ、天皇杯は一発勝負の大会で、残るは準決勝と決勝の2試合だけで、11月下旬の代表ウィークによるJ1リーグ中断期間を利用して行われるので、大きな負担にはならないかもしれない。だが、天皇杯決勝(11月22日土曜日)の翌週には、ACLの試合があり、日本から出場する4チームはすべてアウェイゲームとなっている。

 それに加えて、神戸と広島はJリーグYBCルヴァンカップでも準々決勝に勝ち残っており、9月上旬の準々決勝を勝ち抜くと、こちらの準決勝はホーム&アウェイ制なので10月8日と12日に2試合が組まれている。こちらも代表ウィークのリーグ戦中断期間中に行われるが、9月30日と10月1日にはACLEの試合があるので、神戸や広島が勝ち残れば、5連戦を強いられることになる。

 こうして日程上の不均衡は、やはりJ1リーグの優勝争いに大きな影響を与えることになるだろう。

 ACL出場チームについては、最近は日程的にもさまざまな配慮がなされるようになってはいる。前倒しで行われる試合もあるのは仕方のないことだ。

 だが、ACL出場チームは、Jリーグ開幕前から決まっているのだから、たとえば第30節の前倒し分は何も8月下旬の最も暑さの厳しい時期に行わなくてもよかったのではないか? まだ、春の気温が上がり切らない時期に行っておくことはできなかったのだろうか? ACL出場チームの日程は、ACLの詳しいスケジュールが確定した後で発表されるが、具体的な日程が決まる前でも(いずれは試合の消化が必要になるのだから)、あらかじめ涼しいうちに1試合でも2試合でも消化しておけば、いいのではないかと思う。

■来年からの「秋春制」移行で8月開幕に

 Jリーグは2026年から秋春制に移行することになっている。8月開幕となるらしいが、8月の猛暑の中の試合は極力避けるべきではないか。今年の高温は異常気象ではなく、気候変動を考えれば、高温傾向はこれからも続くはずだ。現在は最高気温30度以上を「真夏日」、35度以上を「猛暑日」というが、これからは35度以上が「真夏日」と呼ばれるようになるだろう。

 今年は、豪雨や雷雨による試合の中心がほとんどなかった(それだけ、「晴れ」状態が続き、気温がさらに上がった)。だが、昨年は多くの試合が雷雨によって中止や中断となって、影響が大きかった。その意味でも、8月開幕は混乱を生じさせかねないのだ。

 今年の夏には、従来8月に行われていたSBSカップ大会がなくなっていた(12月開催に変更)し、高校総体の中止あるいは開催時期変更も論じられている。日本では8月に屋外スポーツを行う環境ではなくなってきているのだ。秋春制移行も良いきっかけになる。8月に試合を行うのは止めるべきではないのだろうか。

 9月に入ると、J1リーグでも19時キックオフの夜間試合だけではなくなり、16時、17時開始のいわゆる“薄暮試合”も出てくるが、長期予報では猛暑は9月いっぱい続きそうだ。まだ日のある16時、17時開始の試合は相当な暑さとなる可能性がある(試合開始時刻を変えることは難しいのだろうか?)。

 8月31日も、等々力でのナイトゲームの前に、横浜市内で日本フットボールリーグ(JFL)の15時開始の試合を観戦したのだが、ピッチ上には日陰の部分がまったくない状態で、公式記録によれば気温が34.3度になっており、試合中には熱中症で観客が救護される場面もあった。

 落雷によって死者が出る事故が起こったことで、最近は雷が鳴ると試合がすぐに中断されることが多くなっている。熱中症による死亡事故などが起こる前に、高温下での試合開催の是非を論じておくべきだろう。

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