オリックスにドラフト5位で入団して、1年目は開幕1軍スタート。2年目も1軍で白星を掴んでいる高島泰都投手(滝川西出身)が…

オリックスにドラフト5位で入団して、1年目は開幕1軍スタート。2年目も1軍で白星を掴んでいる高島泰都投手(滝川西出身)が大学時代にプレーしていた準硬式。年々、人気に火が付き、2022年からは甲子園を使った全国大会が行われるようになった。

 2025年も11月21日に開催することが決まっており、今回で4回目を迎えるが、企画から5年の年月をかけて第1回大会の開催に至っている。決して簡単ではなかった道のりを一歩ずつ慎重に、かつ力強く進み続けたことで第4回大会まで繋いできた。

 甲子園大会の開催によって、大学準硬式にとってこの4年間は転換期だった。そんな時代に準硬式へ情熱を注ぎ、現在は全日本大学準硬式野球連盟の学生委員、そして今大会はプロジェクトチームとして運営する大阪教育大・鈴置結希奈、そして福岡教育大・川原巧太郎の2人はこれまで何を感じて、そして今回の大会で後輩たちに何を託そうとしているのか。

挑戦と情熱を持って準硬式を最大限発揮したい

 第3回大会ではプロジェクトチームのリーダーを担当。今回は今回はサブの立ち位置から前回大会の経験を生かすという鈴置。「今年もずっと連絡を取り合っており、とにかく動き続けている」と多忙な毎日を送っているようだ。

 前回の反省を踏まえて2月から少しずつ動き出したそうだが、1つ1つ真剣に向き合いながら準備しているという。

 「代替わりもしていますので、すべて引き継ぐことは難しい部分もあります。でも大事なところを守りながら、前回よりも良い大会にしたい。今年ならではのことをやりたい、と挑戦することも忘れないようにしています」

 早く動き出したおかげでチャレンジできる余裕があるようだが、その結果「前回同様に忙しくなりました」と苦笑いを浮かべる。しかしその挑戦が今後の準硬式にとって必要だと、鈴置は考えている。

 「これからも甲子園で全国大会は続いてほしいです。でも当たり前にはしたくないです。企業の方々をはじめ、外部の方が多く関わる大規模な大会なので、他の全国大会とは違います。なので、いまの大学準硬式が出来ることを最大限表現できる。準硬式はこれだけ出来る世界だと発信する舞台だと思うので、常に新しく、更新し続けないといけないと思うので、今年もそこを大切にやっているところです」

 現時点ではユニフォームを変更するなど、細かな部分まで含めてあらゆるところを変更しようと議論を重ねているという。果たして本番までにいくつのアイディアが採用されるか、当日までのお楽しみといったところだろう。

 ただ鈴置も語ったように、大事なところは守る。第1回大会から繋いできた思いは、後輩たちにも託せるように、鈴置も日々意識しながら過ごしているという。

 「1年生から甲子園大会は開催されていましたが、当時は詳しいことまでわかっておらず、『甲子園で大会があるのか』というくらい認識が甘かったです。ただ3年生になって甲子園大会に関わるようになって、『他の大会とは違う』と危機感を感じながらやったのは覚えています。
 前回支えてくださった池田(有矢)さんや今井(瑠菜)さんはもちろん選手、そして運営する学生全員がそれぞれで高校時代の背景をもとに『甲子園でどうしたい。甲子園で何をやりたい』と奥底にあった熱い思いを持った人たちが揃っていました。そのときは熱量に圧倒されましたけど、その思いの強さを一番大事にしたい。
 もちろん前回がどうだったのかは大事です。でも自分たちがどうしたいか。どんな大会にしたいか。その気持ちを今回も、これからもぶつけて良い大会を作り続けたいです」

 後輩も数名プロジェクトチームに参加していることで、「前回はなんでこうしたのか。これまでにはこんなことがあった」と歴史を伝えながら、先輩たち以上に素晴らしい大会にしようと、鈴置は仲間たちと協力しながら試行錯誤を繰り返している。

 果たして今年はどんな大会になるのか。経験者として奮闘する鈴置の多忙な日々は続く。

福岡教育大・川原巧太郎

第1回大会から続く思いを伝える、広げる

 本格的に甲子園に携わるのは初めてとなる川原は、普段全日本大学準硬式野球連盟の学生委員長の肩書を持つ。今年の大学準硬式を支える功労者である。

 甲子園ではあくまでもサポート役に徹するが、決して軽い気持ちで参加していない。むしろ大きな責任を感じながら過ごしている。

 「甲子園での大会に限らず、何か新しいことを始めるのは凄く大変だと思っていますが、それを改良していくことも難しいと感じています。
 この大会は来年で5回目。節目になりますが、同じことを続けていたら、ただ開催するだけの大会になって、規模は大きくなりません。せっかく甲子園でプレー出来るのに、普段のリーグ戦と変わらないと思われたくない。そしてこれからも続けていく大会にするためにも、同じことを続けずに、フレッシュな大会であるべきだと思います。
 だからといって今回だけ良かったでもダメだと感じています。関わっている自分たちだけが頑張るのは簡単だけど、それでは今後良い大会が続かない。だから自分の役目は、後輩たちが置いて行かれないように引き上げる。後ろについてあげて、何とか足並みを揃えていく。これが役目だと思っています」

△福岡教育大・川原巧太郎

 新たに出来つつある伝統を喪失させることなく、後輩たちに繋いでいくため。学生委員長である川原は、あえて後方から支えるわけだが、そこは第1回大会から大切にした思いを継承していくためでもあった。

 「甲子園大会のディレクターである杉山(智広)さんがずっと伝え続けている、『甲子園の土を踏む。準硬式でも踏むことが出来る』という目標があるうえで、大会の規模を大きくしてきました。それは絶対に絶やしてはいけないことだと思っているので、自分はそれをいろんな形で発信し続ける。これも大事なことだと思っています」

 そう語る川原の眼差しは強く、そして熱がこもっていた。その理由は自身の経験があったからだ。

「1年生の時は甲子園はおろか、全国大会のことも何も知りませんでした。自分のチームや所属しているリーグのことだけで、2年生から学生委員として大会運営に回ったことで色んなことがわかって、これまで見ていた準硬式の世界が一気に広がりました。
 そのなかで人とのつながりも広がって、甲子園大会の立ち上げに尽力した渡辺(力)さんや西(椋生)さんに出会って、甲子園大会を知ることが出来ました。だから知らない、分からないで終わることが一番もったいないので、情報を広げていくことを大切にしています」

 1年生の時は何もわからず、2年生で気づくことが出来たから、学生委員長となった3年生の時にいろんなことに挑戦したという川原。そこで成功も失敗も経験したことで、「甲子園でこんなことをしたい」と明確なビジョンを持って取り組んでいるという。4年生の集大成として作り上げる甲子園大会。果たしてどんなものに仕上げるのか。

 鈴置、そして川原だけではなく、全員が先輩たちからの教えを繋ぎながら、野球の聖地で準硬式の魅力を最大限伝えようと、今この瞬間も奔走しているだろう。大会は11月21日に試合が行われる。どんな結末が待っているのか。そして後輩たちに何を託すのか。