5日から沖縄・那覇で「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」が開幕する。2大会連…
5日から沖縄・那覇で「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」が開幕する。
2大会連続で世界一を狙うU−18代表は8月29日から2日にかけて那覇で実戦3試合を行った。スコアは以下の通り。
沖縄電力 5ー1 U−18代表
大学日本代表 8−1 U−18代表
U−18代表 4-3 沖縄県選抜
沖縄電力、大学日本代表に敗れたが、同世代の沖縄県選抜には辛勝を収め、1勝2敗だった。投手起用法、野手のキーマン、本大会へ向けての修正点を振り返っていきたい。
絶対的なエースがいない投手陣は小刻みな継投か?
世界一となった23年は前田 悠伍(大阪桐蔭-ソフトバンク)という絶対的なエースがいた。今回の壮行試合を振り返ると、どの投手も能力はある程度高いが、前田のように韓国、アメリカ、台湾の3カ国の強打者たちを完璧に封じられる投球術がある投手はいない。
相手に流れを作られる前に、小刻みに継投する作戦になるのではないか。小倉全由監督含め、試合の流れを読む首脳陣の力が試される。
下重 賢慎(健大高崎)、奥村 頼人(横浜)、末吉 良丞(沖縄尚学)、西村 一毅(京都国際)、森下 翔太(創成館)、中野 大虎(大阪桐蔭)の6投手は先発、中継ぎのどちらも投げそう。
下重は大学日本代表戦で先発し、2回1失点の力投。130キロ台後半の速球、チェンジアップを駆使し、粘り強く投げている。これまでレベルの高い相手との対戦が続いたが、先発としてうまく投げてくれるのではないか。
奥村は甲子園よりも状態は良い。140キロ中盤の速球、チェンジアップをうまく投げ分けていた。予選ラウンドの山は6日の韓国戦。強打者が揃う韓国相手には、彼がキーマンになる。
末吉は2日の沖縄県選抜戦で先発し、2回4奪三振、無失点の快投。秋季大会を控えている2年生の投手を選ぶことに疑問の声があったが、小倉監督が沖縄尚学・比嘉公也監督に許可をもらって選出したのも頷ける。ストレートの強さが他の投手に比べて明らかに違う。120キロ台後半のスライダーの切れ味も鋭く、低め、コーナーへ投げ分けているので、ロングヒットになりにくい。韓国、アメリカ、台湾の強豪3カ国との対戦では末吉が投げることになるだろう。
西村は2日の沖縄県選抜戦で、久しぶりの実戦となった。伸びのある140キロ台の速球、チェンジアップのコンビネーションで三者連続三振を奪った。チェンジアップは初見でも打てないボールで、西村は強豪国相手のキーマンになるだろう。
森下は先発した29日の沖縄電力戦1回4失点と悔しい投球になったが、大学日本代表戦、沖縄県選抜戦で2試合連続でリリーフに登場し無失点に抑えた投球を見ると、首脳陣も自信を取り戻してほしい思いがあったと考えられる。森下は140キロ台前半のストレートと切れのあるスライダーの投げ分けができている。先発、リリーフで奮闘することが期待される。
中野は大学日本代表戦で2回2失点を喫したが、沖縄電力戦で三者凡退に抑えた。140キロ台中盤の速球は非常に威力がある。中野はイニングによってフォームのブレが見られるのが課題。失点した大学日本代表戦は突っ込み気味の投球フォームとなっていた。このあたりを修正できれば、安定した投球を見せるのではないか。
野手兼任の辻 琉沙(履正社)、坂本 慎太郎(関東第一)の2人は粘り強い投球を見せている。辻はリリーフで実戦3試合で登板し、力投を見せた。右アンダーから120キロ台後半の速球、シンカーを投げ分け抑えている。坂本は大学日本代表戦で1回4失点と悔しい内容に終わった。持ち味のカーブ、スクリュー気味に変化するチェンジアップを活かし、抑える投球を見せてほしい。
早瀬 朔(神村学園)、石垣 元気(健大高崎)の剛腕コンビはまだ持てる力を発揮できていない。早瀬は大学日本代表戦で1回無失点、沖縄県選抜戦は0.2回を1失点。常時145キロの速球は威力があるが、ウイニングショットがないので、粘られて球数が増える。結果として、2試合とも20球以上を投じている。3球以内に追い込み、決め球を見つけて抑えていきたい。本戦まで時間はないが、早瀬の成長のためには必要なスキルだ。
守護神を任されている石垣は、大学日本代表戦で1回1失点、沖縄県選抜戦では1回2失点。150キロを超える速球、140キロ台の高速フォーク、カットボールを持ちながらボールを制御できておらず、苦しい投球となっている。硬いマウンドの問題なのか、捕手の力量なのか。守護神を任されているからには、ハードルを乗り越えて、その称号に相応しい投球を見せてほしい。

上位打線は強力!課題は5番打者と終盤の選手起用
野手については沖縄電力戦で6安打、大学日本代表戦で7安打、沖縄県選抜戦で9安打を放っているように、それなりに安打は打てている。
スタメンの中で良い内容を残しているのは2番藤森 海斗(明徳義塾)、4番阿部 葉太(横浜)の2名だ。
藤森は大学日本代表、沖縄県選抜の壮行試合の2試合で8打数5安打の大当たり。大学生投手との対決になってもファウルで粘って、甘い球をヒットゾーンへ弾き返した。その打撃技術の高さは一級品だ。ヘッドが遠回りせず、的確に捉えられるミートセンスの高さが魅力。プロ志望を掲げているが、この大会で評価を大きく高める可能性を持った選手だ。
阿部は大学日本代表、沖縄県選抜の2試合で8打数5安打を記録した。代表野手の中で阿部が最も強い打球を打つことができている。投手の球を見やすくするためにオープンスタンス気味に構え、小さいステップをすることで、軸のブレが小さい。スイングスピードも非常に速く、木製バットに順応している。阿部の前に得点圏に走者を置きたい。
1番岡部 飛雄馬(敦賀気比)、3番為永 皓(横浜)の内容も悪くない。岡部は壮行試合2試合無安打に終わったが、沖縄電力戦では3安打を打った。打撃フォームもみても内回りのスイングでボールを捉える事ができており、今後の試合でも安打を重ねることができるだろう。何よりスピーディな守備は秀逸で、攻守ともに貢献度の高いパフォーマンスを見せてくれそうだ。為永は壮行試合2試合で7打数2安打を記録した。バットコントロールもよく、何より三塁守備は安心できる。守備が計算できる選手がいるのは心強い。
1番〜4番は出塁が期待できる選手が多い。ただ5番横山 悠(山梨学院)が苦しんでいる。壮行試合2試合で5打数0安打1打点と結果を残せていない。8打数8安打を記録した夏の甲子園と比べると、まだ木製バットの扱いに慣れていないのか、ヘッドが遠回りし、スイングスピードが速くない。そのため遠くへ飛ばすことはできない。5番打者が機能すれば打線は一気に変わるはずだ。
ただ横山の守備の貢献度は絶大で、視野の広さ、キャッチング、スローイングを見ると、一番安定している。打撃面で苦しんでいるが、守備面では外せない選手だ。
ここまで3試合、試合後半になると、横山はベンチに下がっていたが、投手の操縦を考えると、横山は後半も守ったほうが頼もしい。守備面の負担を考えて打順の変更はありえるだろう。
キーマンとなるのは、試合後半から捕手として登場する大栄利哉(学法石川)だ。ここまで目立った成績は残していないが、凡フライになった時の打球の上がり方、滞空時間の長さを見ると、インパクトが非常に強い。的確にミートできれば、長打を量産できる素質の高さがある。
U−18代表野手陣のヒットを見るとシングルヒットは多いが、長打がない。長打がないとわかれば、前進守備になり、得点圏でワンヒットで還るのが難しい。
長打を期待できる大栄は一塁で出場していた。最初からスタメンで起用すれば、もっと怖さが増す。打順は阿部の次である5番が適任か。大栄の打撃爆発が世界一の鍵になると考える。
今年のU−18代表で良いのは守備面に不安がないこと。本大会までにスピード感のある沖縄電力、大学日本代表と試合ができたのも好材料だ。
ここまで3試合を見ると、突出した実力を持ったエースはいないが、どの投手もある程度、投げられ、失点を計算できる。ライバルとなるのは、韓国、アメリカ、台湾の近年の上位3カ国。この3カ国は140キロ台後半〜150キロ台前半の速球を投げるパワーピッチャーを揃えるため、簡単には点が取れない。ロースコアで競り勝つ試合をすることが世界一の条件ではないか。
想像を上回るパフォーマンスで2大会連続の世界一を獲得することを期待したい。