この秋のドラフト候補に挙がる早稲田大・伊藤 樹投手(仙台育英出身)。2021年のセンバツではベスト8まで活躍するなど、当…
この秋のドラフト候補に挙がる早稲田大・伊藤 樹投手(仙台育英出身)。2021年のセンバツではベスト8まで活躍するなど、当時から話題だった。ほかにも秋山 俊外野手(現中京大)などタレント揃いの世代に対して「秋の東北大会でコールド負けしましたね」と苦笑いをしながら、当時を懐かしそうに振り返ったのは、東北学院大・佐藤永遠(柴田出身)だ。
仙台育英とともに、2021年にセンバツに出場。残念ながら初戦で京都国際に延長の末に敗れたが、背番号13をつけて春夏通じて初の甲子園出場を果たしたメンバーの1人。現在は東北学院大の準硬式野球をやりながら東北地区、そして全日本大学準硬式野球連盟の学生委員という形で野球に携わっている。
3日まで宮城県内で開催された清瀬杯 第57回 全日本大学選抜準硬式野球大会(以下、清瀬杯)では東北地区の学生委員長という責任ある立場をやり切った。苦労も当然あったが、「全日本の学生委員と一緒に大会運営が出来て楽しかった」と達成感に酔いしれていた。
それもそのはず。佐藤は今大会を成功させるため、そして聖地・甲子園で味わったことを伝えるため。最大限の準備を進めてきたからだ。
母からの勧めで準硬式の世界にやってきた佐藤。選手として入部し、1年生から清瀬杯に参加するなど、早くから全国大会を経験してきた。そのなかで2年生へ進級する直前、監督や周りから推薦される形で、東北地区の学生委員を任されたところから、すべては始まった。
「東北地区の場合は3年生から動き出すので、1年生の冬場の段階で決める必要がありました。それで周りからは『永遠じゃないか』と言うような形で推薦されたので、引き受けましたが、本当はやる気はなかったです。仕事を引き受けると時間が無くなってしまうので」
学生委員というのは、リーグ戦の日程調整。それに伴う会場、審判の確保といった大会等の運営をはじめ、選手登録など裏方としての仕事を任される。学生主体を大事にする大学準硬式だからこそ、本来であれば連盟の方々が担うような業務を学生が担当するのだ。
なので、佐藤は学生委員としての仕事が増えることで選手としてはもちろん、学業やアルバイトなどに使える時間が減ってしまうことを懸念したのだ。しかも自分が4年生の時は清瀬杯の大会運営を担当することが2年生の時に決まった。普段のリーグ戦とは違い、全国規模の大会となり、やるべきことは増える。
結果、前段階の準備は2月から動き出した。
「2月頃から東北地区に所属する12チームへ協力のお願いは始めました。というのも、選手として、また学生委員として全国大会に携わると、人手が必要だと感じていました。特に開会式は記念撮影したり、整列させたり。入場行進が始まるまでバタバタしていました。その結果、開始時刻が遅くなることがあったので、スムーズにやるために必要な人員を確保することを大事にしました」
各大学に対して頭を下げて、1人でも多く協力者を募った佐藤。また「アルバイトのシフトを出すタイミングを狙った」と7月頃にも念押しで連絡するなど、細心の注意を払った。
それでも授業の兼ね合いなど様々な理由で協力できないチームもあったが、結果的に宮城県はもちろん、山形、福島、岩手で活動するチームが参加。そのうえで前日は10時間、当日も8時間の万全の準備のおかげで円滑に開会式を進めることが出来た。
ただ開会式だけが佐藤の仕事ではない。大会中、試合は最大3会場で同時に進んだ。各会場の運営を手伝ってくれる学生たちの割り振りや球場での動き。また酷暑での開催に伴って熱中症対策として大量の氷を確保。さらに学生委員たちの宿泊予定と、業務内容は多岐にわたった。
時には23時にミーティングを行うなど、想像するだけも激動の日々だった。それでも乗り越えられたのは、甲子園を経験できたからだった。
「かけがえのない大会にしよう、ということを考えて他のメンバーと連携をとって進めてきました。やっぱり全国大会なので、思い出深いものにできるように支えたいと思っていましたし、自分自身が甲子園に出場したことが生きていると思います。
当時は通路から見えたグラウンドの景色が輝いて見えて興奮しましたし、一塁コーチャーでしたけど、その景色も綺麗でした。その経験があったから余計に甲子園を目指して頑張れたので、今度は運営側として、清瀬杯を目指して頑張ろうと思ってもらえる。かけがえのない大会と選手たちに感じてもらいたかったので、頑張ってやってきました」
幸い、一緒に大会運営に携わったメンバーは仲が良く、スムーズに連携が取れた。結果、1人ですべてを抱え込むことなく、佐藤は無事に全国大会の責任者を全うすることが出来た。
閉会式も無事に終えて、安堵の表情浮かべていた佐藤は、最後にこんなことを語った。
「準硬式に限った話ではないかもしれないですが、やっぱり夢中になって野球を楽しめる。勝っても負けても最後は楽しく終わることが出来る。そこが良いところだったと思います」
学生委員という少し違った角度から野球に携わったからこそ、佐藤はこれまで感じたことのない野球の魅力に気づくことが出来たのだろう。そういった機会があることも準硬式の魅力だと確信せずにはいられなかった。今回の経験を今後の人生に活かし、さらなる活躍をしてほしい。