◇国内男子◇Sansan KBCオーガスタ 最終日(31日)◇芥屋GC(福岡)◇7293(パー72)初優勝の瞬間は、脳…
◇国内男子◇Sansan KBCオーガスタ 最終日(31日)◇芥屋GC(福岡)◇7293(パー72)
初優勝の瞬間は、脳内で何度も何度もイメージしてきた。優勝後のスピーチまで考えた。それなのに、肝心のウィニングパットを入れた瞬間は「感触とか、全然覚えていない…」。小斉平優和は、とにかくリベンジすることに必死だった。
昨年大会は香妻陣一朗とのプレーオフで惨敗した。18番(パー5)で行われたPO2ホール目、ティショットで右OBを3発打って敗退。「リベンジしたくてたまらない」と今年は絶対に勝つつもりでやってきた。首位と1打差で迎えた最終日は、優勝を狙うのに絶好の位置。「去年よりは緊張していなかった」と、因縁の18番に入るまでは思ったより冷静に戦えた。
スタート1番からティショットをフェアウェイに置き、2打目をピン左2mにつけてバーディ発進。2番も2mにつけて連続バーディでトップに追いついた。通算16アンダー単独首位で後半に入ると、13番からまたひとつギアを上げる。13番(パー5)では、残り230ydの第2打でグリーンをとらえて、イーグル逃しのバーディ。14番は手前4mを流し込み、15番は2mを決め切って3連続バーディを奪った。
18番に入った時点で2打のリードを持っていたが、最後にボードを見た16番グリーンでは後続が1打差に迫っていた。「バーディが欲しい」と攻めたい反面、ティイングエリアに立った瞬間昨年の“悪夢”が頭をよぎる。
去年は右バンカーを避けてドローで攻めたが、「今年は左から、フェードで狙った」とティショットはしっかりフェアウェイ左サイドをとらえた。2オンを狙った第2打は残り270yd。「5Wで良い当たりをすれば乗る距離だった」と攻めた1打は、ミスショット気味になって手前のバンカーへ。「想定外でした」とやっぱり18番は相性が悪い…。プレーオフも覚悟したが、3打目をカラーに乗せて2打で沈めてパーセーブ。2m強のパーパットを入れて勢いよくガッツポーズをとったことは、「体が勝手に動きました」と緊張感のあまりほとんど記憶に残らなかった。
「こんなに思い通りにいくと思っていなかった」。因縁の大会での初優勝は、これ以上ないシナリオだ。2016年末のプロ転向からの道のりは、時間はかかったが遅いとは思っていない。
「プロに入ってすぐは2、3年で優勝できると甘い考えでいた。でも全然やっていけなくて」。17年はエントリーミスから日本のQTに挑戦できず、試合を求めてPGAツアーチャイナに参戦し、賞金ランク4位に入った。2020年には米下部コーンフェリーツアーにも挑戦した。「努力しないとと思った」と、メンタル面に取り組み始めたのがちょうど2020年ごろ。「そこから5年くらいで勝てたのは、良かった」と評価できる。
初優勝という形で努力が実を結んだが、状態が整ってきたことから今年は米ツアー予選会(Qスクール)に挑戦する予定を立てていた。「ファーストステージから行こうと思っていたけど、優勝しちゃったので(笑)。セカンドからの可能性も見えてきた」。11月24日時点の賞金ランク5位までに入れば、12月2日から5会場で行われるセカンドステージから挑戦できる。この優勝で賞金ランクは18位に上昇したが、さらなる上積みを目指す。
初優勝の記念撮影は応援に駆け付けた愛娘の和暖(よりは)ちゃんを抱き上げた。「僕が優勝したら、抱きかかえるっていう夢があったので」。ちょっと遅れてきた優勝の喜びは大事な娘とともに噛みしめた。(福岡県糸島市/谷口愛純)