ツアー使用率ナンバー1アイアンの検証過程その姿は、日の出から日没まで、練習レンジへと続く長い道のり、ロッカールームへと…
ツアー使用率ナンバー1アイアンの検証過程
その姿は、日の出から日没まで、練習レンジへと続く長い道のり、ロッカールームへと続くクラブハウスの廊下、あるいは選手のニーズを満たす上で役立ちそうな敷地内にあるその他すべての施設で見ることができる。
タイトリストでプレーヤープロモーションのシニアディレクターを務めるJJ・ヴァンウェゼンベック(以下、JJ)は、シーズン7戦目のシグネチャーイベントが行われたオハイオ州の会場での湿り気と香気の入り混じった日に、目覚ましい働きを見せていた。
何より重要だったのは、タイトリストにとってTシリーズアイアン2025年モデルのツアーにおける立ち上げの初期段階にあったことであり、「メモリアル」の現場に集結した同社チームにより、輝かしいツアーの選手たちに対する新しいアイアンシリーズの貴重な洞察とデータの提供が行われていたのである。
「ジャックの庭」には全てのスターが集まるのが恒例で、恐らくファンは気付いていないだろうが、JJもその一人だ。最も規模の大きなアイアン発表の真っ只中にあって、彼はリーダーボードに名を連ねる選手たちに混じり、調整とテストを重ねていた。最大の舞台でスター選手たちが行う全てのギア変更の裏には、彼の存在がある。
メンテナンスの行き届いていないサウナでレインコートを着ているような、蒸し暑いながら雨の滴る天候のなか、それでもゴルファーたちは早朝から感触と技巧を磨くべく練習に励む。タイトリストのチームも同様であり、彼らもまた、契約選手のために取られた膨大なデータ分析に基づいて事前に組まれたセットから、テストと選別のための新たなデザインを慎重に作り上げるのである。
JJと最大6人のプロクラブビルダー、専門家により構成されるチームは、トラックで1年に5万6300km以上を移動する。JJはツアーの選手たちから得たフィードバックを提供するべく、48時間以内に作業場へと戻るのだ。
2000年代初頭にトラック運転手としてキャリアをスタートさせたJJは、ハードワークと選手やギアに対する献身により、新しいTシリーズアイアンの研究開発の初期段階から、その意見が高く評価される人物となった。クラブにはJJのビジョンが隅々まで反映されており、同僚の一人は「彼は僕らの会社で一番忙しい人なんだ」と表現した。
米2勝のルドビグ・オーベリ(スウェーデン)は言う。「JJは素晴らしいんだ。ことゴルフクラブとなると、全て彼に信頼を寄せている。JJは知識が豊富なので、僕らツアーの選手にとって、かなり貴重な存在なんだ」
準備を終えると、チームは大会前の選手たちの要望に応えていく。JJは初めにトム・ホジーと新しいT250について話し合うと、続いてアン・ビョンフン(韓国)の練習をのぞき、その後はウィンダム・クラーク、パトリック・カントレー、ロバート・マッキンタイア(スコットランド)、イム・ソンジェ(韓国)、オーベリ、そしてキャメロン・ヤングを見て回った。
JJは言う。「数字に厳密になり過ぎる選手に対しては、コーチのように振る舞うようにしている。“そうだ、弾道にも目を向けてみよう。君がラウンドで打つような別のショットを打ってみよう”という具合に。そこまで数字に厳密でない選手に対しては、どちらかというと自分たちだけで数字を利用するようにしていて、彼らが“今のが僕にとって完璧な弾道だ”と言ったときは、その数値を記録し、彼らに対して何を再現すれば良いのか分かるようにしている」
その後、JJはトラックに戻ってさらなるクラブを回収すると、いくつかのオプションを携えてジョーダン・スピースのもとへ行った。コーチのキャメロン・マコーミック氏らが見守るなか、スピースはTシリーズの様々なオプションを試した。その間、JJはマーコミック氏とフィードバックについて議論していた。
「マコーミックは多くの数値を気に入っています。と言うのも、彼らは自宅でトラックマンの作業をかなりの度合いでこなしており、我々の追い求めるパラメーターを熟知しているのです。ですので、このケースでは、マコーミックを数字担当の人として活用しており、その上で私がジョーダンから確約を得ることにしています。ここでは、彼とコミュニケーションを取りつつ、マコーミックとデータを照らし合わせているのです」とJJ。
水曜の夜にトラックの荷造りを済ませ、次の大会へ向けて出発した後でさえ、JJの仕事は終わらない。彼は研究開発チームとのミーティングのため、西海岸へ戻り、ツアーにおける次なる最高のアイアンを作り出す準備を始めるのである。
「我々は、どの選手が将来的に何を欲しているかに関するフィードバックや、選手たちの現行製品に対するフィードバック、あるいは様々なフィッティングの課題や成功事例を提供することで、私たちの研究開発チームのイノベーションの促進に役立つよう努めている」とJJは話す。
信頼の置けるフィードバック、現場でのハードワークと準備が、アイアンの新シリーズの投入に寄与している。そうしたことがT100、T150、そしてT250アイアンの複合セットに乗り換えたアルドリッチ・ポットギーター(南アフリカ)による「ロケットクラシック」でのツアー初優勝や、T250とT100のロングアイアンをバッグに入れたグラント・フォレスト(スコットランド)によるDPワールドツアー2勝目など、サクセスストーリーに結び付いたのは特に印象的だった。過去11年にわたり、タイトリストのアイアンがツアーで最も多く使用されてきた理由は、ここにある。
(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)