「勝ちたいですね。『3』がほしい」 エイバルのホーム、イプルアで行なわれたリーガエスパニョーラ第10節レバンテ戦。2…

「勝ちたいですね。『3』がほしい」

 エイバルのホーム、イプルアで行なわれたリーガエスパニョーラ第10節レバンテ戦。2点をリードされながら2-2と追いついた試合後のミックスゾーンで、エイバルの日本代表MF乾貴士は何よりも勝利を渇望していた。



レバンテ戦の乾貴士は得意のドリブルで積極的に攻めた

 1ヵ月以上も勝利から見放されている両チームの戦いに対し、スペイン紙『マルカ』はプレビュー記事で「火薬のない鉄砲対決」というタイトルをつけた。より深刻なのは、ホームのエイバルのほうだ。9月15日の第4節レガネス戦で勝利して以降、リーグ戦5試合勝ち星なしの4敗1分。5試合で計1得点16失点と、攻守ともに歯車が狂ってしまっている。

「前半の2失点。あれはなくさないと勝てない。今日のような試合をしてしまうと、やっぱり厳しくなる。ああいう失点は、ほんとにチームとしてなくさないと」

 レバンテ戦の前半は、まさに乾がそう振り返るとおりの展開だった。笛が鳴った直後から高いDFラインで前線にプレスをかけ、試合の主導権を握っていたエイバルだったが、35分と37分、守備陣の集中力が途切れてしまった2分間の、それぞれわずか数秒のうちに2本のシュートを被弾してしまう。

 逆転勝利を収めるには、今季の総得点(第9節まで合計3得点)を決めないといけない状況に追い込まれたホームチーム。霧雨が降るイプルアに集まったサポーターの多くは、そんな状況でも応援を続けていたが、苦しい戦いになったと感じていたはずだ。

 だが、そんな彼らを勇気づけたのが乾だった。

 序盤から得意のドリブルでエリア内に侵入を続け、エイバルの攻撃を牽引した背番号8番は、50分にエリア手前でMFダニ・ガルシアのパスを受けて中へとボールを運ぶと、たまらずレバンテのDFペドロ・ロペスがファウルを犯す。そして、このFKのチャンスをDFアナイツ・アルビージャが鮮やかに決めて、スコアを1点差まで縮めた。

 さらに73分、左サイドのDFダビド・ジュンカーからパスを受けた乾は、エリア内にスペースがあることと、レバンテDFの寄せが甘いことを瞬時に察知すると、ボールを運んで強烈な低い弾道のシュートを放つ。乾のシュートはGKラウル・フェルナンデスに弾かれたものの、ボールはFWシャルレスの前にこぼれて同点弾が生まれた。

 それでも、2点ビハインドからの同点はポジティブなもので、引き分けは上々の結果だろう。だが、試合内容や決定機の数からいえば、乾が欲していた勝ち点3をエイバルが獲得していても、まったくおかしくない試合だった。だからこそ、あの2分間の2失点が余計だった。

 だが、負けずに勝ち点1を獲得できたことは、残留を争うライバルとの対決としては悪くないし、チームの士気のうえでもプラスなものだ。そしてこの試合でも、乾は第9節レアル・マドリード戦に続いて新システム、新ポジションに手応えを感じている。

「システムが変わったことでみんな消極的になっていた部分もあったし、やり方がわからないというところもあった。でもちょっとずつ、みんなもやり方がわかってきたし、誰がどこでプレッシャーをかけるのかっていうのもわかってきた。

(インサイドハーフに入った)今日の位置は、自分としてはやりたかったポジション。サイドで張っているよりも、中で受けたいというのもある。そのほうが自分としてもドリブルを仕掛けやすい。最終ラインとのドリブルの駆け引きより、ひとつ前の中盤のラインとのドリブルでの駆け引きのほうが得意なので、ああいうところで起点となって誰かを使えるようになれれば、自分のレベルが上がると思う」

 次節はレアル・ソシエダとのギプスコアダービー。レアル・ソシエダのホーム、アノエタでは過去2敗3分と、エイバルにとって”鬼門”となっているスタジアムだ。だが、昨シーズンは89分にMFペドロ・レオンがゴールを奪い、今回のレバンテ戦と同様に2-2の引き分けに持ち込んでいる。

「まあ、誰がゴールを獲ってもいいんで勝ちたいです。チームとして勝ち点3を取れれば、何の問題もない。自分がゴールして負けるよりも、自分が決めなくても勝つほうがいい。とにかく勝ちたいです」

 乾自身のゴールでアノエタ初勝利を飾れたならば、昨季最終節のカンプ・ノウでの2得点に続き、日本人選手の名前がエイバルの歴史の1ページにふたたび刻まれることになる。