試合後の日立台のピッチに姿を現し、深々と頭を下げた“元恋人”に温かい拍手が降り注いだ。 8月22日、三協フロンテア柏ス…

 試合後の日立台のピッチに姿を現し、深々と頭を下げた“元恋人”に温かい拍手が降り注いだ。

 8月22日、三協フロンテア柏スタジアム行われたJ1リーグ第27節の柏レイソル浦和レッズの注目の上位対決は、前半に浦和が長沼洋一松尾佑介のゴールで2点をリードするも、後半に入って柏が瀬川祐輔のゴールで反撃開始を告げると、後半38分の細谷真大の同点弾から小西雄大の逆転弾、久保藤次郎のダメ押し弾と怒涛のゴールラッシュで劇的な逆転勝ち。詰めかけた柏サポーターの歓喜でスタンドが揺れたまま、試合終了のホイッスルを迎えた。

 そして興奮冷めやらぬ試合後のピッチに登場したのが、浦和の背番号8、マテウス・サヴィオだった。2019年夏から6シーズンに渡って柏でプレーし、2022年からは背番号10を背負って柏サポーターと相思相愛のときを過ごしたブラジル人MF。昨季、チームが低迷した中で9得点7アシストと獅子奮迅の働きを見せてJ1残留の立役者になった後、今年1月に浦和への移籍が発表され、この日が日立台への初めての帰還となった。

 トップ下としてスタメン出場したマテウス・サヴィオはこの日、CKから前半5分の先制点を演出すると、前半43分には華麗なワンタッチパスで2点目の起点にもなった。だが、自身が後半34分にベンチに下がってからの3失点での逆転負けに、試合後は悔しさあふれる表情を浮かべた。それでも黄色に染まったスタジアムの中、センターサークル内まで歩みを進めると、柏の「背番号10」のユニフォームが多く掲げられたスタンド全方向へ向けて深々とお辞儀。それに対して柏サポーターからも大きな拍手が沸き起こった。

■「いいんじゃないですか?応援してくれているのはゴール裏のサポーターだけではないので」

 この様子を、試合を中継したDAZNで解説を務めた元日本代表FW柿谷曜一朗氏は「彼に恋したサポーターは多いんじゃないですか?」と古巣ファンの心境をおもんばかると、ゴール裏ではなくピッチ中央でのあいさつに「いいんじゃないですか?全方向に挨拶できる。応援してくれているのはゴール裏のサポーターだけではないので」と好意的に語った。

 そしてこのマテウス・サヴィオの試合後の挨拶シーンに対しては、ファンからも次のような熱のこもったコメントが多く寄せられている。

「マテウス・サヴィオ大好きだったぞ 紛うことなき柏のキングだった あなたがいたから残留して今のレイソルがある ありがとうサヴィオ」
「サヴィオがいなければJ2に落ちてた。サヴィオのおかげで今のレイソルがある。本当に偉大で大好きな選手。また三協フロンテア柏で会おう。」
「サヴィオの事を嫌いになるレイソルサポーターはいないだろう サヴィオにどれだけ助けられた事か 本当はサヴィオと一緒に優勝争いをしたかった これからもレイソルの最高の10番に変わりないと思う レッズでもっと輝いて欲しい」
「柿谷の言葉のチョイスが素敵」
「あかん、泣けてくる。」

 国内外を含めて移籍が頻繁に行われるようになった現代フットボールの中で、一つのクラブで現役をまっとうする選手は皆無と言っていい。だが、在籍時にどのようなプレーをしたか。どのようにファンに接していたか。どのようにしてチームを去ったのか。その姿をサポーターは見ている。注いだ愛は不滅だ。この日の日立台での拍手と声援が、マテウス・サヴィオがどのような選手だったか、恋人だったのかを物語っている。

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