しなやかなフォームから剛速球を投げ込む石垣(C)産経新聞社石垣は近い将来に160キロを超える可能性も 激闘が続いた夏の甲…

しなやかなフォームから剛速球を投げ込む石垣(C)産経新聞社

石垣は近い将来に160キロを超える可能性も

 激闘が続いた夏の甲子園も終わり、9月5日に開幕するU18ワールドカップ(沖縄県開催)と、9月29日から始まる国民スポーツ大会(滋賀県開催)は残されているものの、今季の高校生のドラフト候補についてはあらかた評価が固まったと言える。NPB球団も甲子園開催期間中や終了後にスカウト会議を行い、高校生の候補選手については絞り込んだものと見られる。

 では、10月23日のドラフト会議で名前が呼ばれるのは誰になるのか。ここでは、特に評価が高いと思われる選手について5人に絞って紹介したいと思う。

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 まずポジションに関係なく、今年の高校生の中で「目玉」と言えるのが、石垣元気(健大高崎・投手)だ。

 全国から力のある選手が集まる名門で1年春から公式戦に登板。2年春の選抜ではチームの初優勝にも大きく貢献し、早くから実績を積んできた。同学年の佐藤龍月がトミー・ジョン手術を受け、長期離脱したこともあって、2年夏の甲子園からエースとなると、チームの4季連続甲子園出場の原動力にもなった。

 最大の魅力は無理のないフォームで常時150キロを超えるスピードボールを投げられるという点だ。今夏の甲子園でも大会歴代トップに並ぶ最速155キロをマークし、ストレートの平均球速も楽に150キロを超えていた。180センチ、78キロと体格がそこまで大きくないことを考えると、さらなるスピードアップも期待でき、近い将来には160キロを超える可能性も高そうだ。

 そして、石垣の魅力は決してストレートだけではない。140キロを超えるカットボール、130キロ台中盤のフォークも決め球として十分な威力があり、夏も地方大会、甲子園合わせて7イニングを投げて与えた四死球は「0」と制球力も高い。

 春の選抜前に脇腹を痛め、出力の高さによる故障のリスクを考えて、今夏はリリーフでの起用に終始。コンディション面を懸念する声もあるが、それでもボールの力が規格外である点に疑いの余地はない。しっかり筋力とスタミナ面も強化していけば、プロでも先発として十分期待できる素材であり、1位指名の可能性は極めて高いと言えよう。

 石垣以外の投手では森陽樹(大阪桐蔭)も1年時から評判は高いが、夏の大阪大会決勝で敗れて進路については明言を避けているため、あえてプロ志望を明言している2人を紹介する。

 1人目は夏の甲子園でも好投を見せた早瀬朔(神村学園)だ。

 昨夏の甲子園に出場した際のストレートは130キロ台後半が多く、成長には時間がかかりそうな印象もあったが、最終学年で出力が大幅アップ。一気にスカウト間での評価を上げた。

 左足を高く上げても姿勢が崩れず、体重移動のスピードも申し分なし。長いリーチを柔らかく使える腕の振りも持ち味で、今年夏の甲子園ではコンスタントに145キロを超えるスピードをマークした。130キロ台中盤のスライダーもストレートと同じ軌道から鋭く変化する。

 スライダー以外の変化球が乏しく、緩急が使えず、スピードの割に捉えられてしまう部分は課題だが、185センチの長身で高い出力を誇り、フォームに目立った欠点がないことを考えると、プロ側が高く評価する要素は揃っていると言えそうだ。

「高校生ナンバーワン捕手」という評価を不動にする名手も

 投手でもう一人挙げたいのが、早瀬と同じ九州で注目度の高い藤川敦也(延岡学園)。2年時に早くも球場表示で150キロを超えるスピードをマークして話題となっていた大型右腕である。

 昨秋に肘を痛め、しばらくノースローの時期もあったが、その期間にしっかり身体を鍛えた影響から春にはフォームのバランスが改善。スピードガンの数字は下級生の頃とそれほど変わらないものの、力みなく楽に腕を振って速いボールを投げられるようになり、制球力も明らかに向上している。

 夏の宮崎大会でもイニング数を上回る三振を奪い、敗れた準々決勝の富島戦でも8回途中まで投げて2失点と試合を作った。変化球については早瀬と同様に課題が残るものの、183センチと上背があり、ストレートの勢いは高校生ではトップクラス。数年後には石垣と肩を並べる存在となることも期待できるだろう。

 一方の野手は投手と比べると「上位指名間違いなし」と言える選手は不在という印象もあるが、その中で有力候補となりそうなのが、大栄利哉(学法石川・捕手)と垣内凌(浦和学院・外野手)の2人だ。

 大栄は1年秋から正捕手として活躍し、チームの選抜出場に大きく貢献。2年春の甲子園では大会前に自転車で転倒して負った怪我の影響で代打のみの出場に終わったが、その後も攻守にレベルアップし、U18侍ジャパンにも選出された。

 投手としても140キロを超えるスピードをマークする強肩は圧倒的なものがあり、セカンド送球は低い軌道で一直線にベースまで届く。打撃も4月に行われたU18侍ジャパン強化合宿では木製バットで快音を連発するなど、確実性と長打力を兼ね備えている。高校生ナンバーワン捕手という評価は不動のものとなっており、高い順位での指名も考えられるだろう。

 垣内は走攻守全てがハイレベルな万能タイプの外野手だ。特に最終学年になってからの打撃の成長は著しいものがあり、春の関東大会、夏の埼玉大会ではともにホームランも放った。レーザービームと表現したくなるような強肩と脚力も備えており、高校生の外野手ではトップと言える存在だ。

 他には投手では鈴木蓮吾(東海大甲府)、吉川陽大(仙台育英)、江藤蓮(未来富山)、中野大虎(大阪桐蔭)、中西浩平(豊川)、野手では池田栞太(関根学園・捕手)、岡村了樹(富島・捕手)、桜井ユウヤ(昌平・三塁手)、今岡拓夢(神村学園・遊撃手)、半田南十(日大藤沢・遊撃手)、新井唯斗(八王子・遊撃手)などの名前が挙がり、窪田洋祐(札幌日大・投手兼外野手)は投手と野手の両方で可能性を秘めている。彼らの動向にもぜひ注目してもらいたい。

[文:西尾典文]

【著者プロフィール】

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。

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