近年、夏の甲子園優勝校にはある共通点がある。前年、甲子園出場を逃しているということだ。22年の仙台育英から25年の沖縄尚…
近年、夏の甲子園優勝校にはある共通点がある。前年、甲子園出場を逃しているということだ。22年の仙台育英から25年の沖縄尚学まで4年連続でこの現象が続いている。
秋季大会の主役になりそうな甲子園未出場の強豪校たちを取り上げたい。
大阪は大阪桐蔭、大阪学院大高の二強が中心か?
来年は近畿地区が熱い。この夏、大阪大会準優勝の大阪桐蔭は2年ぶりのセンバツを狙う。
キーマンとなるのは大阪大会で150キロ台の速球を投げ込んだ吉岡 貫介投手(2年)。実力そのものは甲子園を騒がせた菰田 陽生(山梨学院)、織田 翔希(横浜)にひけを取らない投手である。伸びのある速球に加えて、スライダー、カーブの使い方も良い。
夏の大会で登板した石原 慶人投手(2年)は右サイドから140キロ台の速球を投げ込む。
打線では、前チームからレギュラーを打った左の強打者・内海 竣太外野手(2年)、強肩強打の藤田 大翔捕手(2年)、関東第一との親善試合でベンチ入りした大津 昴偉留内野手(2年)、投打ともに才能の高さが光る今井 幹太朗投手(1年)、俊敏な二塁守備が持ち味の谷口 球児内野手(1年)など中学時代から騒がれてきた選手たちが秋の大会で躍動できるのか。
大阪桐蔭のライバルとなるのは大阪学院大高だ。近年、同校の抜群の環境や、合理的な指導を行う辻盛英一監督の指導方針に惹かれ、全国から逸材が集まっている。個々の能力の高さは大阪桐蔭にひけを取らないレベルになっている。この夏は5回戦で近大付にコールド負けを喫したが、悔しい敗戦がレベルアップのきっかけになりそう。
148キロ右腕・林 将輝、大原 功大投手の1年生右腕コンビが残り、打線では好打のショート・鶴丸 巧磨内野手(2年)、正捕手・樋爪 信捕手(2年)、一塁・一柳 颯馬内野手(2年)、右翼・柿谷 樹希也(2年)が残る。ベンチ入りにも多くの2年生が残っており、26年が勝負のチーム。来年センバツ、夏のどちらかで出場すれば、保険代理店の社長をやりながら、指揮を執る辻森監督の指導方針は大きくフィーチャーされそう。甲子園で躍進したチームを見ると、選手の実力だけではなく、斬新な指導方針、逆境を乗り越えた選手などプラスアルファの存在も重要になる。大阪学院大高はそういう要素を秘めているので、勢いに乗れば、話題の中心になるのではないか。
経験者が多く残る智弁学園、近江、報徳学園も有力候補
2年生レギュラーが多く残る近江は147キロ右腕・上田健介投手(2年)が完全復活なるか。守備力が高い吉田大翼内野手(2年)、スラッガー・箕浦 太士内野手(2年)など中核が残る。センバツでは2年ぶり、春夏含めても3季ぶりの甲子園を狙う大きなチャンス。秋の初戦はいきなり強豪・彦根総合となったが、勝利すれば一気に勢いに乗るだろう。
この夏、惜しくも奈良大会準優勝に終わった智弁学園は145キロ左腕・杉本 真滉投手(2年)、4番を打っていた角谷 哲人捕手(2年)のバッテリーが残る。5番・太田 蓮外野手(1年)も潜在能力が高いスラッガーで、秋は角谷とともに勝負強い打撃が期待される。この夏はこの3人に加え、1、2年生が8人ベンチ入りしている。小坂将商監督のもと、負けん気の強い選手が集まり、粘り強さがある。
兵庫大会準優勝の報徳学園も2番センター・丸尾 泰毅、6番キャッチャー・降旗 洸、9番サード・藤本 碧空(2年)、投手では夏にも登板した澤田悠佑投手(2年)、1年春から期待されてきた速球派右腕・江藤 達成投手(2年)と期待の選手たちが揃い、関西地区の野球関係者から評価が高いチームだ。
夏の京都大会ベスト8の乙訓は1、2年生レギュラーが7人出場しており、エースの丸本 陽己投手(2年)、軽快な守備を披露する伊藤陸(2年)など攻守の中心が残った。府内から18年以来、8年ぶりのセンバツ出場の期待も大きいチーム。
市和歌山は150キロ右腕・丹羽 涼介投手(2年)が残り、今年も智弁和歌山のライバルとして君臨する。
前チームの主力が残る桐光学園、崇徳、九州国際大付に注目

関東地区は、レギュラーが多い甲子園ベスト8の横浜と比べると、2年生からレギュラーとして出ていたチームが少なく、1年かけてチームを育てて、全国の強豪校に対抗する形になりそうだ。
横浜の対抗馬となりそうなのが桐光学園だ。投手では190センチ右腕・林 晃成投手(2年)、1年生ながら夏の大会で好リリーフを見せた左腕・鈴木 陽仁投手が軸。
打線では、1番・小田倉 優真内野手、4番・周東 希虎内野手、9番・峯岸 陸捕手と3人の1年生が夏のレギュラーで、高い守備力を誇るショート・米山 蒼汰(2年)、主軸を打った黄 泰鷹外野手(2年)など主力が多く揃う。伝統的に堅い守備で安定した試合運びを見せるチームなので、この秋は横浜と決勝戦まで別ブロックになれば、関東大会を狙えるチームになるのではないか。
埼玉では2年生レギュラーが多かった花咲徳栄の期待が大きい。名将・岩井隆監督の次男・岩井 虹太郎は高い守備力を誇る好ショートで、強肩の 佐伯真聡捕手、夏に5番を打った笹崎昌久外野手(2年)、140キロ前半の速球を投げ込む黒川凌大(2年)と投打の柱が残る。
名門・浦和学院は前チームのような破壊力を誇る打線ではないが、森大監督によると、伝統的な守備力の高さ、走塁を巧みに使った実戦力の高いチームを目指しているという。投手陣では、技巧派左腕・城間 琥珀、投打ともにセンスの高い西村 虎龍投手、実戦力の高い右腕・伊藤 漣、伸びしろ抜群の本格派右腕・日高 創太の4投手が残っている。打線ではバットコントロールの良い鈴木謙心が中心だ。
西日本では広島準優勝の崇徳は下級生主体だった。この夏は決勝戦で3年生主体の広陵に1対2と互角の勝負を演じたことから期待も大きい。
エース左腕・徳丸 凜空、正捕手・新村 瑠聖の2年生バッテリーが軸となる。徳丸はキレのあるストレート、スライダーで勝負する技巧派で、試合を作る能力は高い。
決勝戦では松村 皇成内野手が2番サード、国川 航希内野手は7番ファーストと1年生二人がスタメン出場。この大会では12人の下級生がベンチ入りしており、勝負の年になる。
九州ではタレント揃いの九州国際大付が面白い。牟礼 翔外野手(2年)、城野 慶太捕手(2年)の両スラッガー、大型左腕・岩見 輝晟(1年)、好ショート・吉田 秀成(1年)ら主力が残り、8月に行われた北九州地区の新人戦ではベスト4。県大会からさらにチームを仕上げることができるか注目だ。
8月30日から地方大会出場をかけた県大会が開幕する地域も多くある。来年、高校野球を盛り上げる魅力的なチームが多く出てくることを期待したい。