J1の第27節は、4ゴールを挙げて勝利したチームが3つもあった。そのうちの2つ、柏レイソルと京都サンガF.C.の勝ち方…
■成功した「ハーフタイム」の交代
ハーフタイムに、柏レイソルのリカルド・ロドリゲス監督はCFの垣田裕暉に替えて、瀬川祐輔をトップで起用した。
トップなら、細谷真大というのが順当だが、ここにCFタイプではない瀬川を起用したところが、この交代の眼目だった。
実際、リカルド・ロドリゲス監督も細谷を使うつもりで、前半の35分頃からアップさせていたのだという。だが、ハーフタイムに判断を変えて瀬川を投入したのだという。
その理由については何も語らなかった監督だが、相手陣内でさらに深い位置でボールを回して攻めようというメッセージだったのだろう。
前半のようにペナルティーエリア外で回していても決定機は生まれない。さらに、深い位置で、相手のエリア内でボールを動かそうというのだ。
ターゲットになる細谷が入れば、選手たちは早めに細谷にボールを預ける選択をするだろう。だが、パス回しのうまい瀬川がトップなら、瀬川も使ってより深い位置でボールを回せる……。そうして完全にゲームを支配して、細谷は切り札として起用する……。
まさに、試合はリカルド・ロドリゲス監督の思惑通りに進んだ。
■プラン通りの「2ゴール」で同点
後半に入ってさらにボールを回して完全に試合をコントロールした柏は、左サイドでパスをつないでボックス内に侵入。ゴール前にこぼれたボールをうまく反転して瀬川がネットを揺らす。そして、63分にトップに細谷を入れて攻勢を強めた柏はついに83分に追いついた。右サイドでボールを受けた細谷がゴール前の瀬川に預け、瀬川はそこでタメを作って細谷が現われるのを待って、最後は細谷が決めた。
まさに、プラン通りの2ゴールで柏が同点とする。
追いつくために攻撃を続けて、ようやく追いついた場合、そこでゲームが落ち着いてしまうことも往々にしてある。だが、柏は違った。さらに、そこから逆転を狙って攻撃を続け、90分には伏兵、小西雄大が左サイドからファーサイドのゴール右上隅に突き刺すシュートを決めて逆転に成功。
その後は試合を落ち着かせに入った柏だったが、さらに94分に小屋松の狙いすましたシュートがポストに当たって跳ね返ったところを久保が決めて、なんとなんと2点のビハインドから4ゴールを奪って逆転勝利を収めたのだ。
記者会見ではリカルド・ロドリゲス監督が「クラブの歴史に残る勝利」と勝ち誇る。柏のサポーターたちは口々に「最高だ」と言いながら家路についた(いや、祝杯をあげに行ったか?)。
もっとも、前半、警戒していたはずのセットプレーとカウンターから2失点したことによって、この「歴史的試合」につながったのだ。柏としては、こんな劇的な試合にせず、「4対0の完勝」にしなければいけなかったのかもしれないが……。
■今シーズンの前半からの「ツケ」
一方、2点リードの状況から、後半はなすすべもなく相手の攻撃を許してしまった浦和のショックは大きかっただろう。
「ハイプレスをかけても外され、ミドルブロックに切り替えたが止められず」と、マチェイ・スコルジャ監督。前半からパスを回され、ボールを追いかけるプレーを強いられた浦和の選手は、後半は相手の思惑通りに足が止まってしまい、足を痙攣させて倒れる選手も続出した。
「フィジカル的に悪かった。1週間のトレーニングを見直したい」とスコルジャ監督。
もちろん、真夏の暑さの中で相手のパス回しに翻弄されたのだから疲労が溜まるのは当然だが、浦和は名古屋グランパスに勝利した第26節の試合から中5日の日程だったのだ。とすれば、監督の言うようにトレーニングに問題があったのだろう。だが、それを責任者である監督自身が口にしては……。
浦和は、今シーズンの前半から先発メンバーも交代要員も(ケガ人や出場停止を除いて)ほとんど変えずに戦ってきた。そのツケが出てきたのだろう。
僕は、クラブ・ワールドカップが終われば、浦和もメンバーをいじってくるかと思っていたが、一向に変化の兆しはない。
■逆転優勝は「現実的ではない」?
いずれにしても、プランがまったく実行できなかったうえに、フィジカル面での問題も露呈してしまった浦和にとっては、実にショッキングな逆転負けだった。
だから、大住さんの問いかけへの僕の答えは、「0対4なら諦めもつくけど、2点リードからの逆転はショックが大きかったでしょう」だった。
いずれにしても、浦和はこれでJ1リーグの優勝争いから完全に脱落したと言っていいだろう。
浦和と首位の京都との勝点差は11。残り試合が10試合以上あるので、11ポイント差はけっして追いつくのが不可能な数字ではない。だが、追いつくためには上にいるチームが崩れて、勝点を積み増せない状況が必要だ。追いかける対象チームが1つか2つなら、それもありうるだろうが、今シーズンのJ1上位は大混戦。浦和が追いつかなければならない対象チームが6チームもあるのだ。そのすべてが、そろって不調に陥るというのは現実的ではない。