「スイス・インドア」(10月23日~10月29日/スイス・バーゼル/室内ハードコート)決勝で、過去7回タイトルを獲得した第1シードのロジャー・フェデラー(スイス)と、2012年と2013年に優勝している第4シードのフアン マルティン・デル …

「スイス・インドア」(10月23日~10月29日/スイス・バーゼル/室内ハードコート)決勝で、過去7回タイトルを獲得した第1シードのロジャー・フェデラー(スイス)と、2012年と2013年に優勝している第4シードのフアン マルティン・デル ポトロ(アルゼンチン)が対戦。フェデラーが6-7(5)、6-4、6-3で、デル ポトロとの苦しい戦いに勝利した。試合時間は2時間31分。

両者は今シーズンでは4回目の対戦で、過去の対戦成績はフェデラーの17勝6敗。直近では「上海ロレックス・マスターズ」の準決勝で対戦し、フェデラーがフルセットで勝利していた。この大会、地元のフェデラーは2年ぶりの決勝進出、ここまで圧巻の試合続きで勝ち上がってきていた。対するデル ポトロは、同大会では4年ぶり3回目の決勝。「スイス・インドア」での過去2回の優勝は、いずれもフェデラーを破ってのものだった。◇   ◇   ◇決勝戦は、高速テニスの両者が激しい主導権争い。フェデラーはデル ポトロのフォアハンドを警戒し、さらにファーストサービスもなかなか決まらず、かなりやりにくそうな展開に。

試合はデル ポトロのサービスゲームからスタート。フェデラーは最近、コイントスでリターンを選択する事が多いという。フェデラーは、ツアーの決勝で度々負けている苦手の相手デル ポトロから、いきなりのサービスブレーク。しかし、若干力が入ってしまうのか、直後のサービスゲームでミスが重なり、ブレークバックされる。デル ポトロが強烈かつコースの読めないフォアハンドを繰り出し、フェデラーは珍しく逆をつかれたり全く動けないシーンが目立った。フェデラーは、短いショットで相手を前に誘い出し、伝家の宝刀・バックハンドのダウン・ザ・ラインで道を切り開こうとしていた。

何でもないように見えるポイントでも大きな声を出すフェデラーに、それだけ苦しい試合展開である事を見て取れた。第7ゲーム、フェデラーのリターンゲームは30-0からブレークチャンスに。それでもフェデラーの攻撃を凌ぐデル ポトロに、度重なるデュースの後、フェデラーはブレークし切れず。

一進一退の攻防は第9ゲームに動く。デル ポトロのサービスゲームにフェデラーが2本のパッシングショットを決め、40-15のブレークチャンス。またもデュースに戻されるも、再びクロスのパッシングショット、フォアのダウン・ザ・ラインを繰り出し、粘るデル ポトロから最高のタイミングでブレーク。

ところが、それでもデル ポトロは簡単にはセットを取らせず、直後の第10ゲームをあっさりブレークバック。フェデラーは悔しそうな表情を見せた。息詰まる第1セットは、タイブレークで決着へ。会場がどよめく素晴らしいラリーも経て、大事なところで僅かに上回ったデル ポトロが、第1セットを何とか先取した。

第2セットもギリギリの攻防が続く。第3ゲームに少しリズムを崩したフェデラーは、ダブルフォルト、ドロップショットミスと続き、ブレークポイントを握られるピンチ。しかし、そこからはサービスエースを決めてセーブ。すると続く第4ゲーム、今度はフェデラーにブレークのチャンスが。必勝パターンで前に詰めて決めたかと思った瞬間、珍しいボレーミスでデュースに。結局ここもデル ポトロがセーブし、なかなか思うようにいかないフェデラー。観客も何とか声援で彼を後押ししようとしていた。

フェデラーの珍しいシーンは続く。第5ゲーム、今度は2つのダブルフォルトを出し苦しいサービスゲームに。しかし対するデル ポトロも観客の動きが気になっているのか、突然フラストレーションを表に出し始めた。結局このゲームもキープしたフェデラーだったが、表情は明らかにイラついていた。

転機は勝負どころの第10ゲーム、ここしかないフェデラーは攻勢を強める。40-15とセットカウントを握り、千載一遇のチャンスをものにした。すると、会場からは悲鳴にも似た大きな歓声が上がっていた。

最終第3セットは、フェデラーがいきなりサービスゲームを落とす。しかしさすがのフェデラーは直後の第2ゲームしっかりと切り替え、即座にブレークバック。強烈なバックハンドのクロスから、回り込んでのフォアのダウン・ザ・ラインは、目にも留まらぬ速さだった。すると、フェデラーはここに来てぐっと集中力を増したように、試合を支配し始める。第4ゲームに40-0とトリプルのブレークチャンスをものにし、ゲームカウント3-1。こうなると満員の会場の雰囲気はガラリと変わり、フェデラーの攻撃もますますチャレンジングに、そしてファーストサービスの確率も上がっていった。

第7ゲームには、0-30からのピンチも圧巻のプレーで乗り切ったフェデラー。苦しみ抜いた一戦も、最後の1ゲームはあっさりとキープし、「スイス・インドア」2年ぶり8回目の優勝を手にした。他方、間違いなくトップに舞い戻ってきたデル ポトロ。完全アウェーの雰囲気の中で、自分をよくコントロールして戦い切っていた。しかし、敗戦後にはベンチで悔しそうに頭を抱えていた姿が印象的だった。

恒例となっている、ボールキッズたちへ感謝のメダルプレゼントを行ったあと、表彰式になると両者はホッとしたような柔らかい表情に戻った。フェデラーはデル ポトロへのお祝いの気持ちを伝えた後、母国語で会場のファンへの感謝を語った。デル ポトロは「こんな激しい試合になって、何て言ったらいいか分からないよ。おめでとうロジャー。スイスのテニスファンの皆さん、ありがとう」と語り、二人は会場から大きな拍手と歓声を受けていた。

フェデラーは2週連続・通算95回目のツアー優勝を飾り、今シーズン最終戦に向けて非常に良いモチベーション状態となりそうだ。(テニスデイリー編集部)

※写真は、「スイス・インドア」で2年ぶりに地元優勝を飾ったフェデラー

(Photo by Harold Cunningham/Getty Images)