10月に開催されるアジア唯一のPGAツアー「ベイカレントクラシック Presented by レクサス」。2019年か…

トーナメントコース管理のプロフェッショナルとして、PGAツアーのジム・アベート氏が横浜CCを視察した

10月に開催されるアジア唯一のPGAツアー「ベイカレントクラシック Presented by レクサス」。2019年から「ZOZOチャンピオンシップ」として開催された大会が装いを新たに神奈川県の横浜CCへ舞台を移し、熱戦を繰り広げることになる。松山英樹コリン・モリカワといった歴代チャンピオン、アダム・スコット(オーストラリア)、ザンダー・シャウフェレらビッグネームの参戦も決まり、開幕に向けた準備が着々と進められている。

このほど、PGAツアーのジム・アベート氏が来日。その肩書きは「Senior Director International & TPC Agronomy」という日本ではちょっと耳慣れないもの。「土壌化学」とも訳されるアグロノミーは、ツアーにおいて全般的なコースコンディション管理を担う専門家集団を指す。フェアウェイやラフ、グリーンの芝やバンカーはもちろん、プレーしないエリアの除草や殺虫、コースの水はけなどを幅広く調査。各項目がツアーの基準に沿っているかをチェックし、最近ではサステナビリティへの意識も高めているという。

フロリダ大でエンバイロメンタルサイエンス(環境科学)を学んだアベート氏は、フロリダ州TPCソーグラスでインターンとして働き始め、もともと大好きだったゴルフの世界に飛び込んだ。「気付いたら、26年間もPGAツアーで働いています(笑)」。ツアーのおひざ元であり、旗艦大会「ザ・プレーヤーズ選手権」を開催するTPCソーグラスのコース管理を10年間務めた後、この15年ほどはトラベリングアグロノミストとしてさまざまな大会を担当。「AT&Tペブルビーチプロアマ」や「トラベラーズ選手権」などシグニチャーイベント(昇格大会)のコース管理にも尽力した。

PGAツアーには12人のアグロノミストがおり、下部コーンフェリーツアー、PGAツアーチャンピオンズ(シニア)、ツアーカードを獲得するためのイベント(パスウェイ)を含めて合計110~120の大会をカバーしている。DPワールドツアー(欧州ツアー)、米女子ツアーといった男女の主要ツアーを見渡しても「プロの大会を見ているアグロノミストは、恐らく世界で20人くらいしかいないと思います」。まさにスペシャリストとして最高峰のツアーを舞台裏で支えている存在だ。

アベート氏が横浜CCに足を運ぶのは5月に続いて今年2度目。ただ、実際には「横浜CCで開催すると決まる前、数年前を含めれば3回ほど来ています」。豊富なトーナメント開催実績を持つ日本の名門コースをリスペクトしつつ、コース管理の機材やマンパワーに至るまで事前に細かくチェックした上での開催決定だった。今回、あえて猛暑の時期に来たのは芝のコンディションについて直接コミュニケーションを取るため。「ベント芝のグリーンは暑さに弱い。刈り高を短くしすぎない、スピードを出すためのローラーをかけすぎないなど、いかにストレスをかけないようにできるか。横浜CCのコース管理チームが本当によくケアをしてくれていて、グリーンも素晴らしいコンディションです」とうなずく。

千葉県のアコーディア・ゴルフ習志野CCからコースも変わり、開幕まで80日となった大会はどんなセッティングとなるのか。アベート氏は「横浜CCは、グリーンがすごく面白い」と話し、ヒントをくれた。グリーンスピードは11~11.5フィートくらいとあえて早くしすぎない一方、どんどん難しいロケーションにピンを切って選手たちの技量を競わせるつもり。グリーン周辺がフェアウェイと同じくらいに刈り込まれ、こぼれた時のアプローチもポイントになりそうだ。「習志野とはだいぶ違う面白さになっていると思いますよ」と笑顔で予告した。(編集部・亀山泰宏)