(21日、第107回全国高校野球選手権大会準決勝 日大三4―2県岐阜商 延長十回タイブレーク) 小差の試合を終えると、日…
(21日、第107回全国高校野球選手権大会準決勝 日大三4―2県岐阜商 延長十回タイブレーク)
小差の試合を終えると、日大三の3年生右腕、近藤優樹は言った。「自分よりすごい速球を投げていた。頭が上がりません」。投げ合った県岐阜商の2年生・柴田蒼亮を、たたえる。
自分が勝っていたと思うところを問われると、言葉に力を込めた。「気持ちです」
特に、精神力が試される場面があった。
自らの適時打などで2点を勝ち越し、迎えた延長十回裏。先頭打者を三ゴロに仕留めた。しかし、併殺を狙った三塁手の一塁への送球がそれ、1死二、三塁と一打同点のピンチとなった。
表情は変わらない。三塁側アルプス席を埋めた相手の大応援団の声援も、気にならない。ただ、目の前の打者だけに向かった。
初球に選択したのは93キロのスローカーブ。「これだけ遅ければ、捉えられても外野の頭は越えない」。空振りを奪うと、相手に負けじと、味方の応援団もわいた。緩急自在に、二つの内野ゴロで反撃を断ち切った。
直球は最速140キロに満たない。だから、「速くないストレートをいかに速く見せるか、色々と考えながらやってきた」。思考力も、自分の生きる道だと心得ている。
2001年は近藤一樹、11年は吉永健太朗。日大三が全国制覇を遂げた年には、絶対的なエースがいた。
先輩の近藤のようなしなやかさはない。吉永のような魔球シンカーもない。度胸と創意工夫で活路を開いてきた背番号1が、チームを14年ぶり3度目の決勝へと押し上げた。(安藤仙一朗)