(19日、第107回全国高校野球選手権大会準々決勝 県岐阜商8―7横浜 延長十一回タイブレーク) 勝負を決める打球が左翼…
(19日、第107回全国高校野球選手権大会準々決勝 県岐阜商8―7横浜 延長十一回タイブレーク)
勝負を決める打球が左翼の芝で弾んだ直後、横浜の選手たちは、それぞれの守備位置で崩れ落ちた。2度目の春夏連覇の夢は、延長十一回で壮絶についえた。
2死一、三塁。横浜のエース奥村頼人は、マウンドに駆け寄った捕手の駒橋優樹から声をかけられた。「お前で打たれたら仕方ない。悔いの無いように真っすぐで行くから、思いっきり腕振ってこい」。全球直球で勝負を挑んだ結果だった。「最後は打たれたが、駒橋のリードを信じてきてよかった」
松坂大輔を擁した1998年以来27年ぶりの春夏連覇を目指したチームは、この試合、序盤から苦戦を強いられた。緩いボールを操る県岐阜商の左腕、渡辺大雅を打ちあぐねる。今大会2完封の2年生右腕織田翔希は四回途中2失点で降板。流れを変えたのは、背番号1の奥村頼だ。
五回1死二、三塁。左翼の守備位置から3番手としてマウンドに上がる。神奈川大会前に足を負傷し、エースナンバーを背負いながら、今大会の出番は2回戦の打者1人、わずか6球だけだった。「苦しい場面で投げる練習ばかりしてきた」と奥村頼。逆境を楽しむように、伸びのある直球をテンポ良く投げ、味方の反撃を呼び込んだ。
エースの力投に、バックも応える。九回1死一、三塁のサヨナラのピンチでは、左翼手が内野に移動し、一二塁間に一塁手、二塁手、左翼手が並ぶ「内野5人シフト」を敷き、相手のスクイズを阻止。公式戦では昨秋の明治神宮大会以来の奇策だったが、月に1度は練習していたという準備の結晶だった。再三の好守備をみせた野手陣に、村田浩明監督も「あれ以上は守れなかった」とたたえた。
重圧と闘い続けた左腕は冷静に振り返った。「どんな場面でも諦めずにチーム一丸で戦うのが横浜のいいところ。それが全部出た試合だった」と奥村頼。2時間42分の熱闘を残して、選抜王者が甲子園を去った。(清水優志)