精度。ルーティン。綿密さ――。フェデックスカップのディフェンディングチャンピオンであるスコッティ・シェフラーは、まさに…

スコッティ・シェフラーが愛用するテーラーメイド「P7TW アイアン」(Getty Images)

精度。ルーティン。綿密さ――。フェデックスカップのディフェンディングチャンピオンであるスコッティ・シェフラーは、まさにこれら言葉の典型例である。幼少期からプロのように練習し、サンディ・スミスをコーチとして今に至る。練習セッションでは、基礎を強化するため、毎回同じグリップトレーナーを使用する。長年使用していたグリーンフォークを紛失した際は、とにかく機能するという理由から、50ドルをかけてeBay(インターネットオークション)で同じ物を購入するほどである。

ゆえに、シェフラーが使用するゴルフクラブに、この一貫性が入り込んでくるのも当然の話だ。シェフラーが、テーラーメイドのタイガー・ウッズ設計モデルのアイアンを使用する理由は、ゴルフ界の偉人であり、幼少期から憧れていたPGAツアー82勝を誇るウッズの模倣にある。

シェフラーはテーラーメイドに、「2020年の『マスターズ』でタイガーと一緒にプレーした時、彼のボールの打ち方や弾道を目の当たりにし、同じアイアンを試してみたくなったんだ」と言った。

タイガー・ウッズ設計のテーラーメイド「P7TW アイアン」(提供:テーラーメイド)

シェフラーのクラブに関するルーティンは、テーラーメイドツアートラックのチームと共に続けられている。シニアツアーマネージャであるエイドリアン・リートベルドは、世界ナンバーワンのバッグを準備する入念なプロセスにおいて、不可欠なメンバーである。

「シェフラーは毎週欠かさず私にバッグを渡しますので、私が細部にわたるまで綿密にチェックしています。クラブを受け取るとスペックをチェックし、クラブ全体を見て、良い状態にあることを確認します。その上で、ロフトとライ角をチェックします」とリートベルド。

毎週チェックを欠かさない(提供:テーラーメイド)

彼は数えきれないほどこのプロセスを繰り返してきたため、完璧に数字を記憶している。アイアンの番手を挙げると、リートベルドはすらすらとロフトとライ角を答えることができる。アイアンの各番手はロフトが4度刻み、ライ角は0.5度刻みになっている。リートベルドが数字を熟知している一方、シェフラーはクラブがチェックされる前の段階にあっても、ほぼ毎回、0.5度のずれを感じ取ることができるのだが、これは彼の卓越した感覚と、コンスタントなルーティンの証である。

「時として、彼は我々がクラブをチェックする前に、“今日、僕が練習を終えた後、クラブをチェックしておいてくれない?”と言うことがあります。大抵の場合、彼の言うことは合っていて、仕様には何か問題があり、調整し直す必要があります」

リートベルドはシェフラーの練習用グリップの装着された6番アイアンでさえ、このプロセスの一環とみなしている。と言うのも、チームはシェフラーの要求する特定スイングウエートに合わせるべく、ヘッドに鉛テープを付け加えたのである。

リートベルドは冗談を交えつつ、「彼が好むグリップの位置は、だいたい把握しましたが、それでもまだ、彼がいないと、完璧に仕上げることはできないと思います。それくらいの完璧主義者なんです。あのクラブは彼の6番アイアンと同じスペックで、ロフト、ライ角、シャフトなどは全て同じです。グリップの総重量は異なりますが、私たちは完璧にデフォルト仕様に揃えています。大変な作業ではありましたが、彼は喜んでいます」と述べた。

使いこまれた練習用アイアン(提供:テーラーメイド)

P7TWアイアン」は従来型のマッスルバックモデルと比較するとブレードがわずかに長くなっているため、トウにタングステンを追加することで、重心位置をフェース中央へ動かしている。ウッズが設計に携わったシリーズのもう一つの重要な特徴は、ミルドソールグラインドにある。これにより全てのアイアンセットで精度が向上しつつ、CNC加工されたソールとリーディングエッジが、一貫したターフの抜けの良さを実現している。

興味深いことに、シェフラーがP7TWに乗り換えた際、テーラーメイドはコーチのスミスと取り組むなかで、長さを短くしてスイングウエートをD4に調整した。シェフラーはそれまで、より重みのあるD7を使用していたのである。

「彼の最新スペックに関する判断でとても良かったのは、それまで1インチ長いクラブを使っていたのを短くしたところです。体格的にかなり大柄ですが、短めにすることで、我々はスイングウエートをより良くコントロールできるようになりました。これはスコッティにとって素晴らしいことなんです。彼のクラブは良い感じで扱いやすく、アイアンセットを使用する上で、感覚に関する妥協や犠牲が必要なくなったのです」とリードベルドは説明した。

それまでの仕様と比べて、シャフトの長さが変わったため、シェフラーの慣れ親しんだターフの抜け感にマッチさせる上で、ライ角の変更が必要となった。最終的にリートベルドはシェフラーのP7TWアイアンを0.5度アップライトにし、これで調整は完了した。

現在のアイアンに乗り換えて以降、シェフラーはここ4シーズンのうち3シーズンで、PGAツアーにおけるストロークゲインド・アプローチでトップに君臨している。ツアー17勝(メジャー4勝を含む)とフェデックスカップを制覇した2024年シーズンの全てでバッグに収まっており、今季はこのアイアンで史上初となるフェデックスカップ連覇に挑もうとしている。

(協力/ GolfWRX, PGATOUR.com)