夏の甲子園で、2年連続16強入りを果たした西日本短大付にはチームに欠かせない「小川」が2人いた。主将で三塁手の小川耕平…

 夏の甲子園で、2年連続16強入りを果たした西日本短大付にはチームに欠かせない「小川」が2人いた。主将で三塁手の小川耕平選手(3年)、そして今回記録員としてベンチでチームをもり立てた小川遥大(はるた)さん(3年)だ。

 遥大さんは投手と外野手としてプレーしてきたが、今春の選抜出場時にはベンチ入りメンバーから漏れた。甲子園で野球がしたくて、入学したのに――。悔しかった。

 そんな時、心の支えになったのが耕平選手だった。正月を耕平選手の実家の寺で一緒に過ごすなど「部で一番仲が良い」と互いに口をそろえる存在だ。落ち込む遥大さんを耕平選手は励まし続けてくれた。

 元々、前向きな性格の遥大さん。すぐに気を取り直し、「チームのためにできることをしよう」と考え直した。そして選んだのは、記録員としてチームに貢献することだった。明るく誠実で、チームのことを一番に考えてプレーしていたことから信頼は厚く、部員たちからは「ベンチ入りしてくれるのはうれしい」と歓迎された。初めは知らなかったスコアも勉強し、徐々につけられるようになった。

 今大会の試合中も、ベンチからの声掛けを絶やさなかった。厳しい展開を迎えても「一球ずつ大事に」「冷静に次の一点を取ろう」と声を上げ続けた。耕平選手は「声かけがありがたかった。チームメートのためにできることをしてくれた」と遥大さんへの感謝を口にする。

 17日の3回戦でチームは敗退。それでも選手たちの「勝ちたい」という気持ちが、これまでで一番強く伝わってきたことが誇らしかった。このチームにいられてよかった。忘れられない夏になった。そう思っている。(山本達洋)