就任2年目となるジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ(HC)が9月から断続的に候補合宿を開いてきた日本代表は、JAPAN XVとして大勝負に向けた前哨戦に挑む。 対する世界選抜は、普段パナソニックを率いるロビー・ディーンズHCが各国の猛者を…

 就任2年目となるジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ(HC)が9月から断続的に候補合宿を開いてきた日本代表は、JAPAN XVとして大勝負に向けた前哨戦に挑む。

 対する世界選抜は、普段パナソニックを率いるロビー・ディーンズHCが各国の猛者を約1週間前に集結させたばかりだ。ボス自ら「オフザフィールドでチームを作った」と苦笑する風情だったが、結果、勝負の主導権を握る。代表未経験者を6名出場させたJAPAN XVにあって、負けたNO8のリーチ マイケル主将はどうにか前向きに総括する。

「日本代表にとって、とても必要な試合でした」

 JAPAN XVはスペースへのキック、ジョン・プラムツリー新ディフェンスコーチの唱える鋭い出足の防御によって陣地を獲得。もっともその先での淡泊さで、何度か好機を逃す。その流れで失点も招いた。

 象徴的な場面はふたつ、あった。

 ひとつは4点差を追う前半20分頃。好調のWTB、レメキ ロマノ ラヴァが大きく駆けるも、敵陣10メートル線周辺左で作った接点からは球をつなげられず。世界選抜の激しい攻守逆転を許し、最後は向こうのWTBのヴィンス・アソが加点。JAPAN XVは3-14と点差を広げられ、リーチはふたつの反省点を挙げる。

「ブレイクダウン(接点)の質を上げないといけない。質を上げないと、自分たちのラグビーはできない」

「アンストラクチャーの時のディフェンスが足りていない、システムよりタックルが悪い」

 もうひとつは、ほぼ勝負がつきかけていた後半25分過ぎにあった。

 敵陣ゴール前右中間で相手の反則を誘ったJAPAN XVはスクラムを選択。長谷川慎コーチとともに磨いた塊でぐいぐいと押すも、インゴールまで進み切る前にボールをさばく。受け手のBK陣は世界選抜の波のような防御にあおられ、徐々に後退させられてしまった。

 数分後の34分にはしぶとい攻めから20-47と迫るのだが、すでに退いていた左PRの稲垣啓太は件の流れをもったいなそうに述懐する。

「スクラムで相手の反則をもらえそうなところで、(ボールを)出しちゃいましたよね。その辺の意思統一は、もう少し…。あそこはもともとスクラムトライを狙いにいくように話していたはずなのですが」

 この80分の一連の流れを、勝ったディーンズHCは「彼らも我々へのプレッシャーを作り出しましたが、それがトライにつながらなかった。我々はプレッシャーをトライにつなげた」とまとめる。

「詳細を見ると両者に大きな差はなかったなか、我々にあったものはフィニッシュを取るというところ」

 砂糖でくるんだフレーズだが、その真意は辛い。日本代表が真に見据える標的は11月4日にぶつかるオーストラリア代表。直近では世界ランク1位のニュージーランド代表に勝つなど充実している。「プレッシャーをトライにつなげた」世界選抜を、連携など複数の領域で上回る。

 選手選考の再考、要所でのプレー選択のレビュー、リーチが挙げた課題の改善。次戦に向けてすべきことは明確で、いずれもタフである。(文:向 風見也)